100日後にくっつくいちじろ100日目
「三郎、ちょっといいか」
良い子で宿題のテキストを物足りなそうに解いていた三郎は、当番の洗い物を終えた二郎に肩を叩かれた。高性能のノイズキャンセリングイヤホンをつけていることを知っていたからだ。三郎は片方の眉を上げ、イヤホンを片耳外した。
「なんて?」
「ちょっといいかって、言った」
「なに」
改まって何だよ。
三郎は訝しげにもう片方のイヤホンを耳から外した。二郎は三郎の正面に座る。どこか緊張した面持ち。カラカラになった口で二郎は意を決して声を絞り出した。
「兄貴の、ことなんだけど」
ああ、と三郎は察しがいった。
漸く考えでもまとまったか。三郎は再びペンを手に取り、手元のテキストにそれを走らせた。
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