溶かされたのは、なに 休みの日の昼。ぼんやりとベッドから起き上がろうとしたとき、ス魔ホが鳴った。
『もしもしアザミくん!? 今日休み?』
「休みだが、来るな」
『今から行くね。愛してる』
「だから来るなと――切れた……」
ため息をついても無駄だ。昔からこっちの話をまったくなん聞かない年下の幼馴染だ。
どうして私はアレを好きになってしまったのだろう。アレの『愛してる』は、口先だけで、付き合ってすらいないのに。
寝直したい気持ちを抑え、起き上がる。身支度を終えて洗面所から廊下に出たところで呼び鈴が鳴った。
「こんにちは! お昼ごはん買ってきたよ!」
「はー、これだから。まあいい。上がれ」
「ありがとー」
ヤツは満面の笑みでズカズカと上がる。図々しいが、実家にいた頃からこうだし、たぶん死ぬまで変わらない。
1935