かくれんぼ「子供を……小さな夜叉を見掛けませんでしたか……?」
たまたま森を散策していた時のことである。
風に揺れる木々の音や鳥のさえずりが聞こえ、魔神の影もない静寂さを気に入ってたまに訪れている森でのことだった。
いつもは人影もないのだが、 この日は急ぎ走る仙人や、空を飛ぶ仙鳥の姿を度々見掛けた。どうやら遊びの途中で子供の夜叉が姿を消したらしい。気配を感じることも出来ず、魔神に囚われてしまったのではないかと集落総出で捜索しているとのことだった。
魔神である俺にすら話し掛けてくるくらいだ。余程切羽詰まっているのだろう。しかし小さな夜叉は道中見掛けなかったので、見掛けたら集落に返す旨を伝えておいた。
「夜叉か」
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