mona5770DONE燭へしリーマン・転生パロ花見に誘われて過去に想いをはせる長谷部くんの話。2025/4/7ひらいて赤ブータグで画像投稿したものと同じ話です。(燭へし)花のしたで君を想う 穴場なんですと後輩が見つけてきた職場近くの小さな公園、古びた街灯がバチと小さな音を立ててぼんやりとした光を灯す。 ビルの間から太陽が姿を消すと昼の温かさのわずかな名残だけでは、すこし肌寒く長谷部は鞄につっこんできたカーディガンを羽織る。 桜も盛りを過ぎて、小さな若葉が顔を出し始めている。 わずかな風に枝が揺れて花びらが舞い、色が剥げてパンダなのか白熊なのかわからない遊具にひらりと落ちていく。 「ほかの人が来ないように見張っていてくださいね。僕たちは買い出しにいってきますから」 年度末にあれやこれやがようやく片付いて、見ないふりをしていた山積みの書類へと手を伸ばすか今日は帰るかと逡巡する長谷部の手を「打ち上げをしましょう」と去年異動してきた後輩がひっっぱったのは定時になるかどうかという時間だった。 2170 mona5770DONE2025/1/25燭へしゆるワンドロ投稿テーマは「十年目」誕生日プレゼントをめぐるはなし。(燭へし)十年目の……「……うう、決まらない」 代休を使って朝からいくつも店を見て回ったけれど、長谷部くんに渡す今年の誕生日プレゼントが決まらない。 恋人へのプレゼント。何がいいか相談されたんですけどなんてひとごとみたいな顔をして相談した店員さんたちがおすすめしてくれるものは定番なんだけど、もうすでに渡したことがあるものばかりで。 長谷部くんと恋人になって10年。 同期入社の長谷部くんとは、新入社員が集められた部屋で初めて出会った。 その部屋に入って、窓辺にたたずむ長谷部くんの横顔を目にしたとき目の前にざあっと花吹雪が舞い上がった。 真っ白に染まった視界の向こう側で、ゆっくりとこちらに顔を向けた長谷部くんとぱちりと目があったとき、ドクンと胸が音を立てて、その瞬間に世界が色づいたような気がした。 2386 mona5770DONE2025/2/7ひらいて赤ブー用に書いたもの「Andante」(2025/1新刊・俳優×アナ)の世界線。モブ目線の燭へし。これだけでも読めます。(燭へし)知らないあいだに幽霊になっていたらしい私の目の前に推しがいるのだけれど「たまねぎ、豚ロース……キャベツとあとは……」 周囲の喧騒のなかでも、きちんと届くのは聞かせる仕事をしているからだ。さすがプロ。 そう思ったとたん世界に光が溢れ、フラッシュみたいな光が消えたら真ん前にプラスチックの籠を手に勢いよく歩いてくる女性がいて飛び上がった。 こちらの様子に動じることもなく、女性はまっすぐに残り少なくなっている特価の卵を掴むとレジへと向かっていく。 ぱちぱちと何度か瞬きするうちに、まわりが形を結び始める。 繰り返し流れるメロディは歌えるほど聞きなれたもので、背中を丸めて値引きのシールを貼っていく店員の姿に見覚えがある。どう見ても駅前のスーパーだ。 あれ? さっきまで何してたっけ。 5225 mona5770DOODLE2024.11.10おさすなの日によせて。付き合い始めた日もはっきりしない、そんなおさすなの記念日のはなし。(治角名)はじまりのひ 正直なところ記念日はなにひとつ覚えていない。 つきあった日だとか、はじめてデートした日だとか、ほかにも恥ずかしい文字が北さんちのカレンダーに書き込まれていて、うわあと思わず声が漏れた。 「お前さあ元カノの誕生日を忘れていて平手打ちされたじゃん」 「いつの話しとるねん? いまの俺は愛に生きる男やねん」 「キモ……」 「はあ? せやけど付き合うた日くらいは覚えとるやろ?」 さすがに誕生日は祝ってるけど、付き合った日か。 え? いつ?? 初めてエッチした日? 治から好きって言われたのそれよりずっと後だ。 エッチ、正式には未遂だけど治の熱に触れたのは夏だった。 あれは高校一年の夏、たしか初めての夏合宿が終わった日だった。 2786 mona5770PAST2024.12新刊「きみはぼくのたからもの」無配としておつけしたものです。ゆるワンドロ「痴話げんか」で書いたものにちょっと手をいれたものです。 4754 mona5770DOODLEEJPとの飲み会で「恋人が別れを切り出す要因」の話になったことから始まる侑北と、治角名のはなし。ふたつの話が入っています。(侑北/治角名)ラブラブですがなにか?Side侑北 「不安なんてないで!何言うてんねん!うちはずっとラブラブですう」 はいはいそうですねと半笑いのうえに棒読み答える角名をにらみ、ジョッキに入った烏龍茶を勢いよく煽る。 なんでこんな話になったんやっけ。 今日は地元で角名や古森がいるEJPとの対戦やって、着替えて帰ろうとしたところをぼっくんに「飯いこーぜ」といらん帰ると答える間もなくひっぱられてきた。なんであんな力強いねん。 明日の予定やった取材が延期になったし、北さんちに行こうかと念のためスケジュールアプリを見たら「18時 農協」って入ってたことを思い出して、まあちょっとくらいええかとしゃあなし近くの居酒屋に腰を下ろしたのが1時間ほど前。 「彼女に振られそうなんです」と半ばとろんとした目をしたEJPの若手選手が口にしたのが発端やった。 6790 mona5770DONE(燭へし)某Fファブリックの「若者のすべ●」をヘビロテするうちに書き始めちゃったもの。10ツイくらいのはずがこんな長丁場に。(燭へし)最後の花火 ドンと腹にまで響くような音がして、山の向こう側の空が明るくなる。坂をのぼるとさすがに汗が流れ、夏の名残がわずかに残る空気がじとりとまとわりつく。 ここに来るのも5年ぶりか。 学生のころに比べて体力は落ちたのか、わずかに息を切らしながら光忠はふと思い出す。 夏の終わりのわずかに涼しい 風と、夜空を照らすわずかに欠けた花火。 こっち側だと全部は見えないんだ。 だからあまり人がいない。内緒だぞ。 初めて一緒に見たときにそういって悪戯っぽく笑った長谷部の顔を思い出す。 君はいまどこでこの花火を見ているの。 足を進めてほかのだれかと花火を見上げる長谷部がいたら。 思わず足がすくむ。 もしかして、まさか、それでも。 13205 mona5770SPOILERヒロアカ映画感想というより自分用メモ。がっつりネタバレしているので未見の方は要スルー。轟爆脳をすててみましたが、轟爆だったなって思っているのでそのあたりが地雷なひとも要スルーで。以上を確認OK?映画は見ましたか?パスワードは↑の答え(英字3文字) 2824 mona5770DONEひとりワンライ2023.2月お題「優越感」最初はここまで設定盛るつもりじゃなかったのに、止まらなくなった。1.5hドロ。ちゃんと書き直したい気もある。リクエストいただいた方ありがとうございました。(燭へし)きみといきたい「ごめんね。好きな子がいるんだ」 喫煙室に向かう途中、休憩ブースから聞こえた聞きなれた声と、その声が紡いだ言葉に長谷部の足は止まった。 すっと気配を消して声に集中する。 「どんなひとなんですか」 長谷部のバディである光忠にそう問いかける声は、たぶん庶務担当の女性。 「……そうだね。とても綺麗で可愛い人だよ」 大切なのだと言葉にしなくてもわかる声に嘘だろと声が漏れそうになる。 いつのまにそんな相手が。 知らなかった。 「長谷部くんは特別だよ」 「君だけなんだ」 そう言ってたくせに。 わかってる。それはただのバディに対する評価だってことはわかっていたけれど、けれそその言葉を耳にするたびに誰にも懐かない光忠の唯一になれたようで顔が緩むのを止められない。 4056 mona5770DOODLEインスタで画像SSどんな感じなのか確認するために書いた短文(燭へし)立春 春という名がついたとたんのあたたかな陽射しに手招きされるように、身体を起こすと長谷部は窓を開いた。 「寒っ」 春は名のみの風の寒さやとはよく言ったもので、あたたかな光とは裏腹にまだ冬ですが? とばかりの空気の冷たさに思わず声が漏れる。 「……さむい」 部屋を出ると朝に強いですがとばかりの顔を見せていた男が、存外に朝が弱いことを知ったのはつい最近のことだ。 「はせべくん……きょうひばんでしょ」 だからもうちょっとと腰に回された手に誘われるまま、春のようにあたたかい布団へと舞い戻る。 「光忠」 「うん?」 返事は半分夢のなかから帰ってきたのに、もぞもぞと動く手は長谷部をしっかりと抱き込むのに思わず笑みが漏れる。 463 mona5770DONE宮治誕生日2022でUPしたもの古森視点誕生日プレゼントを贈ったことがない角名のはなし(治角名)プレゼントは?「え? 1回も? いままで1回も?」 「何回も言うなよ」 「だってつきあって何年だよ」 「……10年くらい?」 「えええそれで1回もないの?」 「学生のころって肉まんとか、そういう感じじゃん」 そんなの小学生だろと声をださなかったのは褒めてほしいかな。 気配は感じたらしい角名がもちろん大学のころはメシおごったりしてたよとぼそぼそと続ける。 「ありえないって顔してるね」 「まあそれじゃ普通は許してもらえないじゃん」 「俺だって女の子とつきあってたときはちゃんとしてたよ」 まあそのあたり角名はそつないだろうなと古森は思う。 妹がいるからというのもあるけれど、言い方は悪いがどうでもいい相手にはちゃんとできるのだ。この男は。 2366 mona5770DONE2022.1ひとり燭へしワンライ(燭へし1HW)テーマ「はじめての朝」(燭へし)いつもどおり「お呼びかな?」 「主、燭台切です」 「忙しいのにごめんなさいね」 「ううん。ついでにお茶をもってきたから休憩して」 刀が増えたけれどなんとなく八つ時になると厨に軽く摘まめるものを用意してしまう。 審神者が買ってきた駄菓子のときもあるし、野菜を使ったクッキーだったり、果物を煮たものだったり。 遠征から戻ってきた足でやってきた刀には汗を流しておいでと声をかけ、畑の収穫物を持ってきた刀の口に放り込み、御飯を待ちきれない刀に食べ過ぎないようにと釘をさしていた燭台切に「審神者が呼んでるって」と声をかけたのは今日演練の部隊長を務めていた加州清光だった。 「主が?」 「うん。なんか聞きたいことがあるって。急がないって言ってたけど」 3128 mona5770DONE(燭へし)燭へしワンドロワンライ2022.12.11-18テーマ「好きなところ」養い親長谷部くんを嫌いなひとがいて??本文のあとに蛇足的に設定記載あり。そういうのが苦手な方は---よりあとは読まれませんように。(燭へし)きみのすきなところ その子どもからは冬の夜の匂いがした。 誰をも寄せつけないような高い塀に囲まれたその古い館には、老人とその世話をするもの、そしてひとりの子どもが暮らしていた。 代々守ってきた財をもとに、新たな事業を立ち上げた老人は成功とともに人を寄せ付けなくなり、そして自らの子どもすら遠ざけたと聞く。けれどその子らが不慮の事故で亡くなったあと、その子どもである幼子にだけは手を伸ばし、守るかのように他の誰も寄せつけず数年をその子どもとともに過ごしたが、数日前に命の灯を消した。 長谷部にその訃報を知らせたのは彼の世話をし続けた女中だった。 男はおそらく親戚や縁戚だと名乗る者たちが、この訃報を隠し続けるであろうことを察していたらしい。幾人かの後処理を任せるものたち、そして長谷部にその連絡をするよう生前から指示をしていた。 4194 mona5770DONEおさすなの日2022おめでとう!記念日のはなし。(治角名)anniversary「今日何日だったっけ」 ロッカーを閉めながら首を傾げるチームメイトに「一〇日じゃなかったっけ。何かあんの?」と角名は壁に貼られたカレンダーに目をやりながら答える。 「今月結婚記念日があるんだよね」 それで? という顔をする角名に「忘れたら怖いんだよ」と彼は肩を竦め、明日は花でも買って帰んないとなあとひとりごちた。 一一月一〇日。記念日。 何かがひっかかる。 「なに? 誕生日でも忘れてたか?」 思考の沼に落ちた角名に気づいたチームメイトの言葉に首を横に振る。 恋人の誕生日は一ヶ月前で、その片割れも双子だから同じ日。 北さん……北さんって誕生日あったっけ。なんかお祝いしたな。 「あれじゃないの付き合った記念日とか、初めてのチューとか」 3560 mona5770DOODLE「キミノシルシ」購入特典SSこの度は手にしていただきありがとうございました。気持ちばかりの特典SSですが楽しんでいただければ嬉しいです。なお内容はあのふたりのシルシの前日譚、つまり傷をつけたふたりの物語です。なんでも許せるかたはどうぞ。 5670 mona5770DONE(燭へし)燭へしワンドロワンライ2022.9.11テーマ「極」「限界社畜HASEの死ななきゃ安い!極!」長谷部くんの配信に同僚の光忠が来た話(モブ男目線)Q:タイトルに極と入っただけじゃないか?A:はいそうです。それだけです。(燭へし)限界社畜HASEの死ななきゃ安い!極!「食事? 死ななきゃ安い! 極!」 聞きなれた声とタイトルコールにいつもとは違う言葉が続き、俺は「は? 極ってなんだよ」と思わず声を漏らしていた。 不定期に配信されているサラリーマンHASEのこの番組――ひそかに社畜リーマンHASEの死ななきゃ安いと呼ばれているが――は男性ファンが多いと噂されているが俺もそのひとりだ。 高校時代から自宅を離れ、ずっと寮暮らしをしていた俺が、一人暮らしを始めて最初に困ったのが食事だった。 スポーツを生業としてるから、食事には気を使わないといけないのはわかっている。 だから時折やってきて冷蔵庫と冷凍庫をパンパンにして帰る恋人の作り置きと、近所の定食屋にほとんど支えられているとはいえ、もちろん家に何もないときもあるし、帰宅時間によってはコンビニしか空いていないことも多い。 3879 mona5770DONE(燭へし)燭へしワンドロワンライ2022.8.11テーマ「花火」残業中に花火が見えたふたりのはなし(つきあっていない)(燭へし)ヒバナチル夏の夜空を裂く音がして、黒い夜空に幾重にも花が咲く。 きらきらと光の花が夜空を舞い、隣で空を見あげる男の横顔を照らす。 好きだ。 空へとあがる細い光にのせてつぶやいた言葉はどんという音にかき消された。 「休み明けで結構ですって、俺も休みなんだがなあ」 人が減るごとに「こっち消しておきますね」と消された照明はいまはもう長谷部のうえだけしか点いていない。 取引先に社内、同僚に上司まで。 休み前に案件は投げておきたい気持ちはよくわかる。 朝から長谷部だっていくつか気になっていた案件の確認はした。 休みが明けてからで構いませんとこちらは言ったのに、先方からはその返事とともに「締め切りは休み明けに」との一言が添えられていた。 2305 mona5770DONE(燭へし)燭へしワンドロワンライ20220711テーマ「買い物」最近私の中で流行っている「同棲したい」光忠くんの話。(燭へし)あの……長谷部くん……「ダイニングの照明を買い換えたいんだ」 金曜の夜、会社の近くにできたスタンディングバーで、カウンターに並んでビールを片手に光忠はふいにそう口にした。 「照明?」 「うん。昨日急に点かなくなっちゃって。鶴さんが使ってたやつだからもうずいぶん経つんだよね」 光忠が住むマンションは駅から歩いて十分ほどの築年数だけ聞けば、老朽といっていい建物だ。 もともとは光忠の話によく出てくる昔馴染みである鶴さんこと、鶴丸国永という年齢も職業もよくわからない男が住んでいたのだが、大学に入ってこっちに出てくることになった光忠に「俺の代わりに住んでくれ」と鍵を渡されたらしい。 譲り受けたのか?と聞くと「ううん賃貸だよ」というのだからよくわからん話だ。 2566 mona5770DONE侑北webオンリー開催おめでとうございます✨にぎやかしのひとつになればとTwitterにUpしていたものをすこし修正+加筆いたしました。また続きはぼそ加筆していきます。7/10パスワードはずして全体公開にしています。※なお生産者は治角名脳です。ご注意ください。追記していきます。(侑北)10年見守るつもりはなかった(一)それは卒業式から始まった 「好きです。付き合うてください!」 3月も後半になってようやく春の色になった薄水色の空には雲もなく、早咲きの桜がひらひらと風に舞う。 卒業証書を手にし未来へと一歩踏み出す男にへ、チームメイトというつながりを失くそうともおのれの存在を消されまいとするコトバが青い空のしたぽとりと落ちた。 真っ赤に染まった頬と、差し出した震える手。 薄桃色のひとひらが金色の髪にひらりと落ちる。 そう花びらが舞い落ちた髪が黒いさらさらとしたもので、大きく見開れた瞳も口も大振りで、まあイケメンと呼ばれるものなんだけど、そんな雄雄しい姿形の侑じゃなくてふわふわとした女の子だったら「卒業式だねえ」なんてこの俺でも涙のひとつも浮かべたかもしれない。 4901 mona5770DONE燭へしワンドロワンライ20220611テーマ「結婚」(燭へし)結婚したって本当ですか「ご結婚されたんですね」 左手の薬指で存在を主張する指輪をめざとく見つけた取引先の担当者が浮かべたカモフラージュじゃないのかという笑顔と、おめでとうございますという言葉にどこか照れた表情にわずかに苦々しい空気を纏わせて「ええまあ」と答えを返すと、ほんとうに?ばかりに探る目線が向けられる。 「この年ですし……相手も同い年なもので」 「ああ」 それは仕方ないですねという同情なのか、いままで逃げてたのか言いたいのかよくわからない空気に、僅かに肩をすくめて見せると「ますます頑張らないと」だとか「家族を持つと仕事にも力が入りますよ」なんて言葉で長谷部はいわゆる「一人前」になったんだなというレッテルを貼られる。 ケッコンなんてしなくても俺は頑張ってたし、仕事に力を入れていただろう!なんてことは口にしないけれど、腹の中で声高に叫んだのはもう何度目か。 2985 mona5770DONE(燭へし)「残香」というテーマで書いた連ツイ(オメガバ)(燭へし)残香いつも通りの朝だった。 時間通りに起き、カーテンを開けると昨日と同じようなどんよりとした冬の空が見える。 顔を洗って時計代わりにつけているテレビを横目に今日のスケジュールを頭に浮かべながらシャツを羽織り、軽く温めた牛乳とミニクロワッサンを咥えながらネクタイを結ぶ。 「ラッキーアイテムは満員電車」 テレビから聞こえる声にあれがラッキーアイテムになるのかと突っ込みながら歯を磨き、ジャケットとコートを羽織るといつも通りの時間に家を出る。 ゴミを出し刺すような寒さにぶるりと震えながら駅に向かうといつもの電車、前から7両目、3番目の扉から乗り込んだ。 毎朝見かける顔ぶれのなかにふと見かけない男の姿が目に入る。 日本人の平均身長よりも高いはずの俺よりもさらに高い背、黒っぽいスーツの上からもがっしりとした筋肉がついた身体が見て取れる。 3107 mona5770DONE(燭へし)ワンドロワンライ2022.5.11「けんか」同居燭へし(つきあっていない)のけんかのはなし。(燭へし)気が合うけれど、話はあわないんだよね「ちょっと長谷部くん!」 社長の安請け合いで新しい仕事を引き受けることになり、打ち合わせだと連れ出され半日がつぶれた日。 家に帰ると光忠が頭から煙を吹き出しそうな勢いでつっかかってきた。 曰く「缶ビンの回収日なのに出さなかったでしょう!」 まあそれは忘れていた俺が悪いなと口を開きかけたところに「玄関の靴が散乱してて、慌てたのか知らないけれど僕の靴がひっくり返っていた」ときて「そもそも君ねえ」と砲撃は続いた。 過去の「トイレの電気がつけっぱなしだった」だとか「冷蔵庫のお茶を飲みきったらせめてポットは洗っておいてほしい」だとかもう何回も聞いたことが繰り返されると、悪いなと思っていた俺もカチンとくる。そうだろう? 3661 mona5770DONE(燭へし)ワンライ2022.4.11「なれそめ」リーマンバチバチやりあい系の燭へし(燭へし)君のひとみに……「長谷部くん!いる?」 静かな管理本部に響く声に「長谷部、ご使命だぞ」「またですか。飽きませんねえ」と長谷部の周りからクスクスと笑いとヤジが飛ぶ。 「飽きるもなにもないだろう。あいつがちゃんとすればすむことだ」 「ねえ!また伝票差し戻されたんだけど!」 「何回同じことを言わせるんだ。これは経費の範疇じゃない」 「それは君が決めることじゃないよね!上司の許可もおりてるんだけど」 「結果が出ていない」 「はあ?それこそどうして君が決めるの?」 欠員がでた本社第一営業部に年明けとともに転勤してきたのは、地方支社にいながらも本社で知らないものがいないというトップセールスマンの長船光忠だった。 入社1年目からセールスランキングに名を連ねた光忠は、数年で全国で五本の指に入るほどの営業担当に成長した。 2614 mona5770DONE(燭へし)燭へしワンドロワンライ2022.3.11「春」春に出会った燭へしのはなし。(燭へし)まだ肌寒い春の日に「ただいま」 外の空気を纏った長谷部の身体からはわずかに春の香りがした。 「春の匂いがする」 「そうだな。まだ桜には早いようだが、すっかり春めいていたぞ」 このコートだともう暑いくらいだな、そう言いながら長谷部が脱いだ黒いウールのコートを受け取ると光忠はしばし外の空気を味わった。 「外に、出たいか?」 さりげなく口にしたつもりだったけれど、声が微かに震えたのを隠すように長谷部は咳払いをした。 「全然。あ、でもそうだね久々に桜は見たいかな」 「散歩にでも行ってくるか?」 「いいの?」 「別に出るなとは言ってないだろう。もう鍵も閉めていない」 ちらとリビングから廊下に続く扉に目をやる長谷部に、そうだったねと光忠は頷いた。 3197 mona5770DONE(燭へし)燭へしワンドロワンライ20220211テーマ「ゲーム」無双をふたりでやるリーマン燭へしのはなし。直前にみた配信にやられたので「こんのすけー」と連呼する長谷部くんがいます。(燭へし)手合わせを一本長谷部くんは負けず嫌いだ。 初めて出会ったのは高校の受験会場。 落とした学生証を拾いながら「内部進学しないのか」って聞いてきたときにはじめて声を聴いた。 「なんかちょっと違ったんだよね」 「おとなしく内部進学してくれたら一人ライバルが減るんだけどな」 にやりと笑う顔にどきんとしたと言ったらきっと長谷部くんは「趣味が悪いな」と言うだろう。 再会したのは合格発表の会場。 ネットで結果なんてわかるのにわざわざ会場に足を運ぶのは、合格と確信してその場で手続きを済ませようと考える人間だけだ。 「なんだ受かったのか」 「君こそ」 そういいながら並んで事務室に足を運び、そのまま手続きをした。 「春からよろしくね」 「ふん」 運命だと思っているのは僕だけだと思うけれど、運命のように同じクラスになり三年間あたりまえのように隣にいた。 2995 mona5770DOODLE(治角名)たとえばそんなオサスナもあったかも……ということで治→原作軸(稲荷崎→高校でバレー辞める→おにぎり宮)角名→稲荷崎のスカウトを断った→愛知の強豪校に行くけど全国には届かなかったという世界線の妄想。角名の進路はいろいろ。書けたものから追加。(治角名)たとえばそんな……●高校時代、全国に行った稲荷崎を見て大学から本気で大学からバレーやってEJP軸 ●大学途中でスカウトされてモデルか俳優軸 ●大阪転勤した社会人から珈琲店経営軸 ●大学在学中に書き始めて小説家軸とかいろいろ妄想できそうじゃないですか? 普通のリーマンやってる妄想はしたことあるけど、これが一番せつない展開になっちゃう気がするんですよね… (おに宮×珈琲店おさすな) オフィスビルが立ち並ぶ大通りから一本通りを入るだけで空気が一変した。 真新しい高層ビルの裏手、ぎゅうとひしめき合うような小さな建物が立ち並ぶ。 珈琲とだけ書かれた小さな立て看板がなければ見落とすような、目立たない扉を開く。 カランという音とともに扉をひらくとふわりと珈琲の香りに包まれる。 2213 mona5770REHABILI(治角名)誰かから告白されるとき、必ず角名を同席させる治という妄想(治角名)悪いけどこの男は俺のだからね「治くん、ちょっとええかな」 昼ご飯を食べ終え鞄から取り出した治が菓子パンを嬉しそうにかじろうとした、そのタイミングで声をかけられ見なくて機嫌が急降下したのがわかった。 あーあ。今日のパンは昔からあるあの銀色の包みに入ったチョコがかかったパン。 クリームとチョコの塩梅がちょうどええねんと治のお気に入りのやつ。 「なん?」 「ごめん、ちょっとええかな」 ほんと女の子ってすごいなあっていつも思う。 聞き返されても引き下がらないし、ごめんって言ってるけど全然ごめんって思ってないよね。まあ覚悟して告白しに来てるんだから引き下がれないのかもしれないけどさ。 それに治がもの食べているときに声かけるとか、絶対だめじゃん。 とはいえ治も何かわかってんだし聞き返してやるなって感じだけど。 2716 mona5770DONE(治角名)いい夫婦の日。昼休みにぽつぽつ書いてたもの。ロマンチスト角名が爆誕していた。(治角名)いい夫婦の日「いい夫婦の日ですが、角名さんはどんな夫婦が理想ですか?」 いい加減にしてくれないかな。 数年前なら絶対顔に出ていたし、下手したら声にも出ていたと思う。 ほかに選択肢がなかったからねと周囲には言いつつも、それなりに覚悟をもって続けてきたバレーボール。 プロになれば授業もテストもなくなるんだから、もっともっとバレーに集中できるのかと思っていた。 もちろん社会人だから会社での仕事はやむを得ないと思っている。 かなり配慮してもらっているし、総務所属とはいえ広報に近いことをやらせてもらっているからまったくバレーと関係ないわけでもないし。 時間を取られてかつ精神的にも削られるのはそれ以外のこと。 バレーボールとチームの認知をあげないといけないのは重々承知。 3834 mona5770DONE俳優×小説家(燭へしワンドロワンライ)2021.11.11テーマは「美味しいもの」過去に何回か書いている俳優×小説家のふたりです。(燭へし)Spicy and sweetwebでの打ち合わせを終えてリビングに顔を見せた長谷部は目に見えて気落ちしていた。 「よかれと思ってやっていたんだが……」 詳しいことは言えないけれど、ぽつりと漏らされた言葉に長谷部の気遣いが裏目にでてしまったのだということは光忠にも伝わった。 「お風呂入っておいでよ。あがったらご飯にしよう」 「そう、だな」 空腹感はあるものの、気持ちがいっぱいで食欲がなくなってしまったというところだろう。 食べたからと言って何かが解決するわけではないけれど。 それでも食べないと前は向けないからと、光忠は冷蔵庫の扉に手をかけた。 光忠はこのところ撮影続きで夜はほとんど外ですませていたし、長谷部も締め切りがいくつかあるからと仕事場に籠っていた。もしかしたら何もないかもと顔をつっこんだ冷蔵庫にはベーコンと、豆腐がひとつ。野菜室には水菜とピーマン。玉ねぎは切らすことがないし、パスタもある。 2673 mona5770REHABILI(治角名)ナース服でファンサをしている角名の写真を見た治のはなし(治角名)えっちなナースはお嫌いですか?「あいつ何しとんねん」 近所とバレー関係者には有名店であるおにぎり宮の店主である宮治はスマホを手に声を荒げた。客商売で覚えた笑顔がすっかり身につき、穏やかなひとだと思っている客が目にすれば震えあがるかもしれない地を這うような低音と、高校時代はおなじみだった真顔。 画面に映っているのはバレーボールチームEJPの公式インスタグラムに投稿された一枚の写真だった。にこやかな笑顔を浮かべて手を振っているのはMBの角名倫太郎。 ファンサービスとしてホーム会場での試合後に客の送り出しだとか、フライヤーの配布を選手がすることはままある。モンスタージェネレーションと言われる侑や木兎といった世代が入ってからバレーボールの人気は高まっているとはいえ、ちょっとした興味で会場に足を運んでくれたひとをファンにするために、また二度三度と会場に足を運んでもらうために努力が必要なのは重々承知している。 4338 mona5770DONE(燭へし)毎年恒例誕生日に性癖を露呈するSS今年は可愛い下着を買ってしまった長谷部くんの話。(燭へし)いつだってお前だけだ「え、これ可愛くない?」 「そういうのはダメ!絶対こっちだよ」 「ええこっちのほうが可愛いじゃん」 「彼氏が喜ぶのはこっちだって!ねえ長谷部主任もそう思いますよね!」 おいおい俺を巻き込むなよ。 昼休みのオフィスフロア、ミーティング用テーブルで弁当を広げながらああだこうだと話をしていた女性たちの声は、静かなフロアで嫌でも耳に入ってきていた。 営業アシスタントの佐藤さんに彼氏ができたこと、佐藤さんが好む服とその彼氏が好む服の方向性が違うことも、そしてどうやら次のデートではもう一段階先に進みたいと思っていることまで全部聞きたくもないのに把握していた。 まあそれはいい。聞こえてない顔をしていたから。 次のデートに何を着ていくのかって話を雑誌を片手にしていたはずだったのに、いやいや振り向いた俺の目に入ったのは机に広げられた下着のカタログだった。 4790 mona5770DONE(治角名)学園祭でメイド喫茶をすることになった話。モブ視点。(治角名)キミノアト「えーここで脱ぐん?」 「やらしい目で見んといてな」 可愛らしいとは言い難い野太い声で「え~」とか「やだ~」とか言われても、うっとおしいだけやし。さっさと脱げよ。 心でそう思いながらも「ごめんね。ちょっと計るだけやし」とわざとらしい笑顔を浮かべて手をあわせる。 11月の後半にある学園祭で2年1組はメイド喫茶を出店することになったのは夏休みが始まる前。 バスケ部の子が黒いワンピースはいくつか用意できるよという言葉に衣装の費用が浮くと決まったものではあるけれど、新学期になって確認したら接客する全員の分はないことがわかった。 交代で着ればいいのだけれど、なぜか接客担当になった子たちはガタイがいい子が多いのもあって、いくつか大きめのものを作る必要が出てきたから、10月も目前となって「試着と採寸をしよう」ということになったわけ。 4665 mona5770DONE(治角名+古森)恋愛ポンコツな角名くんと世話をする古森くんのはなし?かな?(治角名)だから言っただろう? 眼のふちを真っ赤にして人の膝を枕にしてすよすよと寝息を立てる男――それも自分より背が高いし筋肉もしっかりついたプロバレーボーラー、見まごう事なき男である――に古森は大きなため息をついた。 「俺にすればいいじゃんって言いましたよ。でもさそれって」 なんというか「そういうカードもあるんだって使ってもいいよ」っていう意味であって、決してほんとうにこの男とどうこうなりたいわけではなかった。はずだ。 うん。たぶん。 「お前また手を出したのかよ」と従兄弟が顔をしかめそうだけど、いつも言うけど「また」ってなんだよ。 今までチームメイトはもちろん、ファンにも手を出したことないんだけど。 「お前は人たらしなんだよ」と鷲尾には言われたことがある。あれも酒の席だった。 3739 mona5770PROGRESS(治角名)15分チャレンジ治角名ごはん本の一部。昼休み15分でごそごそ書いていたもの。ケチャップが甘くなるまで炒めるのがポイントですこれまでの話→高校卒業とともに連絡を絶った角名。大学卒業後の進路も決まった。もうここから迷わない。そんな12月チームの試合を見に来た角名の前に現れたのは宮侑。居酒屋で勝手に稲荷崎LINEグループに新しい連絡先を入れられた角名。最後の最後「ちゃんとメシ食っとんか」という治の言葉に涙が止まらなくなった。そして「都合が合えば忘年会に顔だし」北の言葉にはいと返すのだった。 「だからってなんでクリスマスイヴなの!」 「しゃあないやん。みんなの都合あうのその日だけやってん。俺かて北さんとこうシッポリ過ごしたかってん!でも北さんがこの日みんな空いとるやん!っていうから!」 「全員空いてるのやばくない?」 「なんやねん!そういうお前はなんかあるっていうんか!」 1248 mona5770MEMO(治角名)オメガバ大好きだけど、プロにならんとする角名をΩにすることにひっかかったまま幾星霜(大げさ)その末にならばΩであるリスクを減らすために「ねえ番になって」と治に告げる角名はどうであろうという妄想のメモ。(治角名)「俺の番になって。引退したあと捨てていいから」 ひらりひらりと白い花びらが舞い落ちる校舎のまえ。 動けずにいる俺を登校する生徒たちが迷惑気な顔をして通り過ぎていく。 ふわりというには強すぎる香りに足が動かない。 身体は早くなかに進めと、この香りを放つ人間のもとへと急げとうるさいくらいだけど、このまま進んでいいのか心は決まらない。 今までに感じたことがない初めての香りなのにわかった。 これは…… 逃げ出したい。 ろくでもない相手だったら、バレーをするために続けるためにここに来たのに。 ぶわりと香りが強くなり、それとともに周囲がわずかにざわめいた。 ぎゅっと握った手が冷たくなる。 「なんや腹減るにおいすんなあ」 「はあ?何言うとんねん。なんも匂わんやろ」 1197 mona5770MOURNING(治角名)男子バレーカナダ戦で見たフェイクセット。かつて治が見せたそれに重なるように身体が動く角名が見えて死んだ。いろいろ消化できなくて吐き出した、ただの妄想です。(治角名)それはきっとどうしようもないことで「角名!」 侑の声にたんと床を蹴り、右手を大きく振りかぶる。 目の端には向かいのコートで動く壁、そしていくつもの床を蹴る足。 その刹那、身体が自然に動き、ふわりとレフトにボールをあげていた。 ハッハという侑の声につられるように、自然と笑みがこぼれる。 ゆるく弧を描いたボールが、スパイカーのしなる手で鋭い矢となって相手のコートの床に刺さった。 背後から体当たりしてくるいくつもの熱、大きな手が俺の髪を撫で背を叩く。 最後に侑と拳をあわせて、ああそうかとすとんとなにかが腑に落ちて、笑いながら涙がひとつ床を濡らした。 俺はずっと寂しかったんだ。 お前がコートにいないことが ずっと気づかないふりをしていたけれど。 1359 mona5770MAIKING(治角名)0721の日「自分でやってるところを見たい」という治に角名は……という話。(治角名)ひとりでできるもん「ほな角名が自分でやっとるとこ見たい」 治のとこに帰っている間は朝ご飯は治、昼ご飯は俺が作るのがルールだ。 昼といっても店の営業が終わったあと、夜の仕込みが始まる前のせわしない時間にかきこむのだから、簡単なものでいいから俺にもできる。 今日は朝ごはんのあとに漬け込んだマグロとアボカドの丼。それをがつがつと食べながら急に治が「なあ賭けへん?」と言い出した。 「ひさびさだね。それ。で、何賭けるの?」 で、返ってきたのが自分でやるところを見たいって言葉。 自分でやるってやっぱりオナれってことだよね? 見たいってことは治の目前でヤれってこと。 10年前のこと、覚えてないのかな。こいつ。 高校の頃クラスが一緒になって急に距離が近づいたころからか、俺たちは何かを賭けてよく勝負をしていた。 7311 mona5770DONE(治角名)家に戻ると机に置きっぱなしにしてたAV、それも角名にちょっと似た女優がでてるやつを角名が手にしていて「これなに?」って聞かれたんだけどって話。ちょっと詳しく話を聞かせてもらいましょうかー 「ねえ治、これはなに?」 この週末こっちで試合とは聞いていたし、もちろんここも角名の家やねんから、時間があれば帰ってきてくれるにこしたことはないんやけど、明日が移動日だと聞いていたから油断してたんや。 ひらひらと角名の手で揺れるのはチープなパッケージのAV。 たまたま昨日探し物をしていてひょっこりでてきたそれを、机に置いたまま下で仕事をしていた。もう捨ててしまおうと思ったけど一回も見てないし、じゃあ夜にでもちょっと見てみるかななんて下心が仇となった。 「ねえ」 「……おん」 「だからこれは何なのかな?治クン?」 声色は面白そうなものを見つけた時のそれに近いが、目が全然笑ってへん。 これは完全に怒っとる。 「……あんな」 4872 mona5770MEMO(治角名)事後の朝:治角名ver目覚めた角名はいつもはべたりと張りついて眠る治が、背を向けていることにさみしさを覚えそっとベッドを抜け出した。いつだってカーテンの隙間からわずかに光が滲む。まだ早朝と呼ばれる時間に目を覚ますと、いつもは角名を抱きこんで眠る男の大きな背中が見える。 いつもは抜け出すのに苦心する、角名を柔らかく閉じ込める檻は身体の向こう側に投げ出されたまま。 裸足のままペタペタとキッチンに向かうとペットボトルの水を口に含む。 まだ熱を持つ身体に冷えた水が心地よい。 ふう 窓のカーテンを朝の涼しい風がふわりと揺らすのをぼんやりと見つめる角名の背に、ぺたりと熱がはりつき恋人の香りに包まれる。 「おれも」 ペットボトルを差し出すと「すなー」と不満げな声が漏れる。 なんだよ。背を向けて寝てたくせに。 ぐいと水を含むと治に向き直り、首に両手を回すとゆっくりと口づける。少しずつ水を流し込むとこくりと喉が動く。 1296 mona5770MEMO(治角名)リモート会議に参加する角名と甘えにくる治リーマン軸は彼らにはないはずなのに、自分の土俵に入れようとするのはやめなさい。いやでも角名は午前中だけでも会社員のはずだ。よし。(バレー関係、仕事関係は完全捏造です)無難に総務とかに配属されてコピーしてるのも想像したけど、角名はSNSとか得意なんでしょって無茶ぶりでHPメンテとかの仕事してるイメージ。リーマン角名に夢を見る。仕事中はPCメガネ着用よろしく。ご時世もご時世だし「シーズンオフの出社は最低限でいいよ」と言われた。選手としてはともかく会社員としては絶対にいなければ困る存在かと言われたらそうでもないし、毎日がちがちに出社しないと困るような仕事量でもないことは自分でもわかっている。 仕事内容もパソコンさえあればどこでもできるものだし。 となれば躊躇せずに「ありがとうございます」とその提案をありがたく素直に受け入れるしかない。つかほんとにありがたいし。 もちろん代表関係の招集もあるから完全なオフではないし、出社しなくていいだけで、リモートワークで決められた仕事はこなすわけで。 もちろん会議やミーティングがあれば参加しなければならない。 とはいえ出社が免除されればどこを拠点にしても、それが招集されたときに困るほどの僻地でなければまったく問題はなくなるのだ。 4146 mona5770DONE(燭へし)ひらいて赤ブー用「くしゃみをしようとしたときに声を掛ければどうなるか」を実践してみた長谷部。 3 mona5770MEMO(燭へし)事後の朝:燭へしver目覚めて水を飲む光忠と、寂しくなって起きてきた長谷部。同じシチュ(起きるのが攻か受かは逆)で治角名も書いたけど、まさか燭へしのほうががエッチに進むとは!よるのつづき朝方喉の渇きに目が覚めて、ペタペタと裸足のままキッチンに向かう。火照った身体に冷たい水がひやりと流れていくのを感じていると背中にぺたりと張りつく熱。 「みず……」 コップに残ったものを差し出そうとする光忠にむうと長谷部の唇が歪む。 可愛いなあ。 きっと隣にあった熱がなくなったことに気づいて淋しくなってここまで来たのだろう。 まだちょっと寝ぼけ眼の唇へと口に含んだ水を流し込む。 「ん、ん」 こくりと喉が動き 「ぬるい」 そう言う顔はわずかに緩んでいる。 「まだ早いよ。もうすこし寝よう」 「ん」 こくんと頷く唇の端についた水を舐め、そのまま柔らかい唇にそっと触れる。 ぐいと首に手が回され、離れるなとばかりに引き寄せられるから、つんつんと唇をノックして、どうぞと開いた隙間から舌を差しこむ。 782 mona5770MEMO(燭へし)ネタメモ:事故チューをした相手とオフィスで再会。唇が気になるはじまり。事故チューから始まる急ブレーキがかかりふわと足が床から浮く。 うわっと思ったところで同じように体勢を崩した男が背中からぶつかってきた。 ぎゅうぎゅうに詰まっていたからつり革もない場所でどうにか踏ん張っていられただけで、今の急ブレーキで微妙に隙間が空いた車内では押されたらひとたまりもない。 まずい。 踏ん張り切れない身体が重力にひかれるままに床へと向かう。 こういうときなんとなくスローモーションになるような気がするのはどうしてだろう。 走馬灯っていうやつか?ああでもあれは死ぬ時だな。 なんて馬鹿なことをぼんやり考えている俺の前に一筋の蜘蛛の糸のように、掌が伸ばされる。 とっさに掴んだけれど、もうその時俺の身体はほぼ床と並行に近い状態で、つまりは手を掴んだ男を巻き添えにしながら俺は倒れるしかなかった。 1195 mona5770MEMO(燭へし)某S田さんの天才的なネタ「相手の体のどこか一部を舐めないと出られない部屋」に閉じ込められた燭へし相手の体のどこか一部を舐めないと出られない部屋「相手の体のどこか一部を舐めないと出られない部屋です ただしお互いが同じ部分を舐めてはいけません」 厨に入れてほしいというツールの話を聞きつつ燭台切と廊下を歩いていたら、突然世界が白く染まり、目の前にぼやりと文字が浮かんだ。 なんだこれは。 他の本丸でこういう空間が出現した事例がいくつか報告にあがっていたが、いざ自分が目の当たりにすると戸惑いしかない。 なんだこれは。 そしてそういった事例を流すばかりで改善策が一度も掲示されたことがない。 そこが問題だと思うのだけれど、いざ目の当たりにすると確かに誰の手によるものなのか、なぜ出現したのかまったくわからない。 とはいえ。 「舐めればいいのだろう?」 「簡単に言うね」 1175 1