文具沼住人大倶利伽羅くんと本の虫な鶴丸さん④ 夏の始まりに燭台切が麦茶を量産するように、夏の終わりが近づくと大倶利伽羅が作り始めるものがある。
鶴丸はごろんと寝転がりながら大倶利伽羅の作業を見守っていた。手には先日の非番に手に入れたばかりの本があったが、出陣の疲れが溜まってかどうにも瞼が重くなってしまう。鶴丸が大倶利伽羅の部屋へ入り浸るのはいつものことで、勝手に座布団を丸めて転がっても大倶利伽羅は内心どう思っているかはわからないが文句を言うことはなかった。
普段から寡黙な男であるが、作業しているときは余計に口を開かなくなる。鶴丸としても作業を邪魔するのは望まないため、重い瞼に邪魔されながらもただ大倶利伽羅が作業を終えるのを待っている。
革を切り、その革になにやら塗り、磨く。穴を開け金具を通し、ネジを締める。
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