語らぬ赤き星 鶴丸の部屋の外には赤い星が流れている。
その星の名を、縷紅草というらしい。
そもそもの始まりは——そう呼ぶには大仰だが——数年前、鶴丸が顕現した年の夏まで遡る。
本丸にある各自の部屋には元々空調設備が整っている。鶴丸が顕現したのはまだ雨が続く梅雨のことで、じめじめとした気候にうんざりしていた鶴丸は、なるほどこれはいいものだなあと除湿機能のありがたさを知ったのである。
だがしかし、冷房は駄目だった。鶴丸とはとことん相性が悪かったのである。
冷房を稼働し続ければ寒すぎるし、電源を消せば今度は暑い。人工的な風は長時間浴びていると具合が悪くなる。扇風機ならばそんなこともなかったので空調を切り扇風機の利用を続けたが、風だけで暑さを凌ぐことはできなかった。鶴丸が熱中症で倒れるのも仕方のないことである。
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