春宵一刻 ――この本丸において鶴丸国永と大倶利伽羅は不仲である。
——と、されていた。つい数ヶ月前までは。
村雲は報告書を持って主のいる執務室へと向かっていた。夜戦明けなので眠くて堪らなく、くああ、と大きなあくびをする。報告書を提出してさっさと寝てしまいたい。
半分眠りながら歩いていたが、慣れた道である。道中、手入れ部屋を通りかかったが誰かが戦闘で負傷したのか部屋が埋まっていた。村雲たちの部隊に怪我人はいなかったから別の部隊だろうか。
「主ー。入るよ」
一言声を掛けてから部屋に入る。主はマグカップを持ち上げ、おう、と返した。
「これ、報告書。……なんか、すごいことなっているけどどうしたの」
部屋の中はまるで敵襲でも受けたかのように荷物が散乱していた。普段から整理整頓が行き届いているとは言い難いが、これは酷い。
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