知り叩きサンプル くしゅん、とひとつくしゃみをして、季節の移ろいを実感する。
夏が過ぎ、秋も半ばを迎え、鶴丸が顕現してからもう数ヶ月が経過していた。
書庫前の落ち葉を掃いていると肌寒さを覚え、そろそろ防寒具を揃えてもいいかもしれないなとそんなことを考えた。鶴丸が顕現したのは春先のことで、それからあっという間に暖かくなったから、鶴丸は手袋のひとつも持っていないのだ。まだ見ぬ未来のことを考えると、なんだかそわそわしてしまう。
書庫のすぐ近くには銀杏の樹が植えられている。少し離れた場所にはオオモミジもあり、風に乗ってこちらまで流れてくることもあった。黄と赤が混じり合う様子は美しい。
窓辺から眺める分には純粋に綺麗だと思えるが、銀杏については実の匂いが気になってしまうため毎朝掃き掃除をする羽目になる。実は食べるから回収するようにと燭台切にきつく言われているが、だったら作業を手伝ってくれればいいのにと唇を尖らせるしかない。汚れる以上に匂うのは好きではない。
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