12/21なんでこのヒトたちすぐ喧嘩するん? コポっと小さく泡が立つ。隣りに立つ我が主が正面を向いたまま、斜め後ろに控える私には盗聴防止魔術を使いながら話しかける。
『この貴族は?』
『挨拶程度でかまいません。ご子息をメフィスト様に会わせたいらしく』
『あちらのお嬢さんは?』
『話を聞く価値があるかと。商家の女主人でいらっしゃいますが、少し前から大掛かりな商いの用意をされているそうで』
なにをしているかと言えば貴族会である。メフィスト様の側に控えて、挨拶をしてくる貴族たちの情報を伝えている。私たちはほとんど口を動かさず傍目には笑顔で挨拶を受ける新しく若い13冠の青年と、側仕えのSDにしか見えないはずだ。
……そう見えるように頑張っております。なにが怖いって、メフィスト様が私への問いかけと、挨拶への返事を同時にこなしていることだ。どうやって同時に発音してるのかちっともわからん。
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