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    fuyukichi

    @fuyu_ha361

    腐った絵を描き貯めとく

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    fuyukichi

    TRAINING
    100日後にくっつくいちじろ35日目


    「あれ絶対に山田一郎だよね?」
    「やめなよ、マスクしてるし、変装してるつもりなんだよ……ジロジロ見たら悪いって」

     某イケブクロの大手アニメ公式ショップ。
    書籍コーナーで神妙な顔をした山田一郎が新刊を物色していた。

     今のご時世、電子書籍という選択肢もアリだろう。事実、一郎もいくつかの作品は電子書籍で購入している。しかし紙媒体として手元に置いておきたい作品も多い。それに店舗限定特典や初版版を手に入れたい気持ちもある。というか前に電子書籍でいいかと買った作品をいたく気に入り、結局、本も購入した経験があるので基本は紙で持っておきたいのが本音であった。

     と、いうわけで一郎は集めているシリーズの最新刊発売日であるからして、そのお目当ての本と、他にも何かないか物色しているのである。変装(と言ってもマスクだけだが)をしているのは何もアニメショップでちょっと露出度の高いキャラクターが表紙になっているラノベを見ていることが恥ずかしいとかそういう理由ではなかった。ただ単純に、オタク達が楽しくショッピングをしている空間で騒ぎを起こさず、自身も静かに落ち着いて買い物に集中するためであった。
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    fuyukichi

    TRAINING
    100日後にくっつくいちじろ29日目


     二郎は急勾配の坂道を水泳の時に足につけるフィンをつけたまま全速力で駆け上がっていた。ペッタン、ペッタンと派手な音は立つが長さが邪魔で全く上手く走ることができない。さっきっから全く進んでいる感じがしない。もう上らなくてもいいか、そう思った時、自分がバイトに遅刻しそうである現場をはたと思い出す。目の前に西口公園の大きな時計が現れて、すでにバイトの出勤時間を回っているのを確認して焦りに焦る。しかし完全に邪魔でしかないフィンは脱がず、また再びペッタン、ペッタンと間抜けな音を立てて坂道を上がっていく。

     ふと「じろー!」と後ろから声がして振り返ると、自転車に乗った三郎が立ち漕ぎで坂を上ってきていた。後ろの荷台には一郎が乗っていて二郎に手を振っていた。これ幸いと二郎は二人に大きく手を振り返し「遅刻しそうだから乗せてくれ」と頼む。どう考えても既に二人乗りしているのだから乗れないはずなのだが。しかし三郎は「オッケー!」と元気よく承諾してくれて、二郎の首根っこを猫のように掴んでカゴにひょいと乗せた。やったー!これですぐに行けるぞ!イェーイ!あれ、てかバイト明日じゃね?わっはっは。
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