手のひらの感触 不意にランプの火が消えた。途端にあたりは真っ暗になる。あいにく今日は月や星もない夜だ。夜目が利く採掘師にとっては、まったく何も見えないという程でもないが――。
「うーんどうしようか……一度、キャンプに燃料を取りに戻るか」
「頼んでもいいか?」
「もちろんだとも」
燃料切れになったランプの中を覗き込んでいたデグダスが、闇の中で力強くうなずいた。
こんなタイミングで燃料切れとは、準備不足だな。キャンプに置いてきた大荷物には追加の燃料を入れてきてはいるが、うかつだった。
「あれ? ということは、グランツはここに残るのか?」
「キミの方が夜目が効くし、足手まといになっちゃ悪いからさ」
「そんなことあるものか」
すっとこちらに差し出されたキミの手。黒っぽい茶色の手袋をしているが、不思議とその輪郭は暗い中でもよく見える。いや、おれがその手のことを見つめすぎているせいか。
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