穴が開いている 階段を転がり降りている。足はもつれて言うことをきかない。今にも階段を踏み外して転がり落ちそうだ。転がり落ちたら死ぬだろう。階段に全身を打ち付けながら、下の階まで落っこちて、最後は床に頭をぶつけて、首の骨でも負って死ぬだろう。予感が背中を追っかけてくる。だけど一向に、落っこちる気配がない。
階段がいつまでも続いている。踏み外しそうな足元、次の段が現れる。もつれた足元、次の段を踏みしめて、また降りる。どこまでも降りている。
いったいいつになったら一階にたどりつく? 踊り場すらないこの階段は。
踊り場にさえたどりつけば、少しは明るくなるだろう。踊り場に大きな窓がある。窓の外は運動場で、その向こうには住宅街の街灯が見えて、いるはずだ。なのにいつまでも暗い。階段がいつまでも続いている。
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