シー・スルー・ユー 缶からドロップがカラコロって手のひらに転がってくる。見慣れた色は見つめるだけで味が想像できた。でも俺はこの栗の渋皮みたいな色をした飴の味を知らない。
手のひらには三つの、沈んだ色の飴。チョコ味って聞いてるけど俺は食べたことがない──正確には、忘れている。昔は食べたことがあったはずなのに、もうこれは俺の物じゃないって考えているから忘れてしまった。だって、これは親友のためのものだから。
缶に飴を戻す。もう一度、缶をよく振ったあとに傾ける。出てくるのは深い茶色をした飴だけだ。きっともう、これだけしか残っていないんだ。
俺はそれを缶に戻して蓋を閉めた。どうしても思い出を口に含む気にならなかった。これはどうしたって、親友の笑顔と紐付いていた記憶だった。
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