yuakanegumo
DONE恋人ヴィク勇❄⛸寝起きのヴィクトルを寂しさからペタペタと構いたい勇利くんと、そのせいでセッ…したくなってしまい、理性と衝動との間で戦うヴィクトルのお話😊
構いたい勇利くん 重たい眠りからゆっくりと覚醒すれば、世界の輪郭がはっきりと見えてくる。目を開けばまず初めに視界に映るのは、何よりも愛しい愛する人の姿だ。
「おはよう、びくとる」
珍しく、おれよりも先に起きていたらしいアーモンド色の瞳が、瞬いて朝の光を弾く。まだ掠れた小さな声で、ささやくユウリ。
「おはよう、ユウリ。今日は、はや――」
今日は早いんだね、と。
告げようとしたおれの唇は、あまりにも唐突な恋人のキスによって封じられてしまった。小さな水音。触れるだけのバードキス。不意を食らって思わず目を見開いたおれの顔を見て、まるでいたずらが成功した子どものように、無邪気にユウリは笑った。
「驚いた? ヴィクトル」
つられて、おれも笑ってしまった。
1702「おはよう、びくとる」
珍しく、おれよりも先に起きていたらしいアーモンド色の瞳が、瞬いて朝の光を弾く。まだ掠れた小さな声で、ささやくユウリ。
「おはよう、ユウリ。今日は、はや――」
今日は早いんだね、と。
告げようとしたおれの唇は、あまりにも唐突な恋人のキスによって封じられてしまった。小さな水音。触れるだけのバードキス。不意を食らって思わず目を見開いたおれの顔を見て、まるでいたずらが成功した子どものように、無邪気にユウリは笑った。
「驚いた? ヴィクトル」
つられて、おれも笑ってしまった。
yuakanegumo
DONE恋人ヴィク勇❄⛸付き合いたて。「恋人」になったヴィクトルと勇利くん。はじめての「お付き合い」に戸惑いながらも、ヴィクトルとのスキンシップを頑張ろうとする勇利くんとそんな不器用な恋人を見守るヴィクトルのお話😊
君のもの 抜けるような青空の下に広がっていたのは、夏の太陽に似た黄色い花が一面に広がる――ひまわり畑だった。
「ワオ、凄くきれいな景色だね、ユウリ!」
「でしょ? 子どもの頃から、僕と優ちゃんたちの秘密の場所だったんだよ」
地元の人もあんまり知らないんだ、と得意げに笑うユウリに、目を細めながらおれは少しだけ意地悪く聞いた。
「……そんな秘密の場所、おれに教えちゃってもいいの?」
「いいんだよ! ヴィクトルは僕の……こ、『恋人』なんだから!」
投げやりのように言って、ひまわり畑に囲まれた小道を一人でずんずん進んで行ってしまう年下の恋人。にやけた顔を隠しきれずに、おれはユウリの後ろに続いた。
「ユウリから『恋人』なんて言ってもらえる日がくるなんて、嬉しいなあ」
1768「ワオ、凄くきれいな景色だね、ユウリ!」
「でしょ? 子どもの頃から、僕と優ちゃんたちの秘密の場所だったんだよ」
地元の人もあんまり知らないんだ、と得意げに笑うユウリに、目を細めながらおれは少しだけ意地悪く聞いた。
「……そんな秘密の場所、おれに教えちゃってもいいの?」
「いいんだよ! ヴィクトルは僕の……こ、『恋人』なんだから!」
投げやりのように言って、ひまわり畑に囲まれた小道を一人でずんずん進んで行ってしまう年下の恋人。にやけた顔を隠しきれずに、おれはユウリの後ろに続いた。
「ユウリから『恋人』なんて言ってもらえる日がくるなんて、嬉しいなあ」
yuakanegumo
DONE恋人ヴィク勇❄⛸付き合いたて。ヴィク勇ピロートーク。お世話するヴィクトルとなぜか泣き出してしまう勇利くんのお話😊
ヴィクトルの愛を実感して嬉しい勇利くん✨
秒で全てが解決するふたり👍
愛のあるところ 二人揃ってのオフの日――差し込んできた明るい朝陽に照らされた恋人の幸せそうな寝顔を前にして、もう我慢が出来なかった。
すこやかに眠る恋人を見つめること数分、おれの視線に気づいたユウリがゆっくりと目を開き「……おはよう、びくとる」とふわり微笑んでくれた瞬間、おれの理性はきれいさっぱり吹き飛んだ。そして気づいた時にはもう、恋人をベッドの上に組み敷いて深いキスを仕掛けていたのだ。
「ユウリ。水持ってきたよ。飲める?」
「……ありがと、びくとる」
まだどこかぼんやりとしているユウリに、冷蔵庫から持ち出してきたペットボトルの蓋を開けて手渡す。大きなバスタオルだけを肩に掛けた姿はとても扇情的で、ちらりと覗く赤いあざだらけの白い脚には気づかぬふりをした。
1804すこやかに眠る恋人を見つめること数分、おれの視線に気づいたユウリがゆっくりと目を開き「……おはよう、びくとる」とふわり微笑んでくれた瞬間、おれの理性はきれいさっぱり吹き飛んだ。そして気づいた時にはもう、恋人をベッドの上に組み敷いて深いキスを仕掛けていたのだ。
「ユウリ。水持ってきたよ。飲める?」
「……ありがと、びくとる」
まだどこかぼんやりとしているユウリに、冷蔵庫から持ち出してきたペットボトルの蓋を開けて手渡す。大きなバスタオルだけを肩に掛けた姿はとても扇情的で、ちらりと覗く赤いあざだらけの白い脚には気づかぬふりをした。
雪ノ下
MEMO2021.05.18『Endless Scenarios』再録 お題「スタート!」Main:MASHIRO
『Endless Scenarios』はじめてベースに触れた時のことはよく覚えていない。いつの間にか腕の中にあって、いつの間にか弾いていたというのが正直なところだ。
ベーシストとしての始まりをいうなら……それはやはり、ルビレの冬木真白になった時のことをいうのだろう。
居場所がほしかった。俺のベースを最大限活かしてくれる居場所(バンド)が。
ベース、ベースを弾く俺、あと足りないものは一つだけ。
けれどそのたった一つの不足は、ベーシストである自分にとっては致命的な欠陥だった。
「……そろそろ潮時かな」
吐きだした紫煙が天井に溜まり白い尾を引いて溶けてゆく。それはまるで、今のバンドと自分の関係性を如実に表しているように思えた。なんとなくで繋がった結びつきなど空に消える煙のようなものだ。一度別れてしまえば無かったものと同じ。向こうはどうだか知らないが、少なくとも自分の中には何も残らない。
2176ベーシストとしての始まりをいうなら……それはやはり、ルビレの冬木真白になった時のことをいうのだろう。
居場所がほしかった。俺のベースを最大限活かしてくれる居場所(バンド)が。
ベース、ベースを弾く俺、あと足りないものは一つだけ。
けれどそのたった一つの不足は、ベーシストである自分にとっては致命的な欠陥だった。
「……そろそろ潮時かな」
吐きだした紫煙が天井に溜まり白い尾を引いて溶けてゆく。それはまるで、今のバンドと自分の関係性を如実に表しているように思えた。なんとなくで繋がった結びつきなど空に消える煙のようなものだ。一度別れてしまえば無かったものと同じ。向こうはどうだか知らないが、少なくとも自分の中には何も残らない。
雪ノ下
MEMO2021.05.19『夕飯献立論争』再録 お題「好きなもの」Main:TSUGUMI・AKANE
『夕飯献立論争』好きな食いもん。すき焼きとハンバーグ。正確に言うなら、"クロノがつくった"すき焼きとハンバーグ。
「どーすっかなぁ……」
目の前の男が首を捻るたび金色の瞳にかかった前髪がゆらゆらと揺れる。
午後一でディグプロに寄った帰り、偶然ルビレの日暮茜に遭遇した。今日は日中クロノさんが留守にしているらしく、時刻も昼時を少し過ぎた時間だったため一緒に昼食をとろうということになったのだが……
アカネは店に入って注文を終えるなりずっとこの調子でスマホの画面と睨めっこしながら唸っている。それをいい声してんなコイツとか思っている自分にもなんだか腹が立つ。
アカネの余裕綽々な表情は見慣れているが、眉間に皺を寄せて悩んでいる姿は非常に珍しい。というか、見たことがない。先程から気になって仕方ないのだけれど自分から聞くのはどうにも躊躇われた。何を考えているのか気にするなんて、"俺はお前に興味があります"と言っているようなものだ。それはなんとなく悔しい。コイツ相手となれば尚更。
2039「どーすっかなぁ……」
目の前の男が首を捻るたび金色の瞳にかかった前髪がゆらゆらと揺れる。
午後一でディグプロに寄った帰り、偶然ルビレの日暮茜に遭遇した。今日は日中クロノさんが留守にしているらしく、時刻も昼時を少し過ぎた時間だったため一緒に昼食をとろうということになったのだが……
アカネは店に入って注文を終えるなりずっとこの調子でスマホの画面と睨めっこしながら唸っている。それをいい声してんなコイツとか思っている自分にもなんだか腹が立つ。
アカネの余裕綽々な表情は見慣れているが、眉間に皺を寄せて悩んでいる姿は非常に珍しい。というか、見たことがない。先程から気になって仕方ないのだけれど自分から聞くのはどうにも躊躇われた。何を考えているのか気にするなんて、"俺はお前に興味があります"と言っているようなものだ。それはなんとなく悔しい。コイツ相手となれば尚更。
雪ノ下
MEMO2021.05.23『秘密の逢瀬はレモン色』再録Main:TSUGUMI・MASHIRO
『秘密の逢瀬はレモン色』「つぐみくんの色だね、ソレ」
運ばれてきたケーキを指差すと、最近事務所に所属したばかりの四つ下の後輩が"ほんとだ"とあどけない笑顔を浮かべた。
白のレアチーズケーキに黄色いゼリーの覆いがかかり、一番上には砂糖漬けのレモンがひと切れ乗っかっている。オランジェットが光を反射してキラキラと輝く様は、まるで彼の髪が陽光に透けた時のようだ。
こうして同じテーブルを囲むのは何度目になるだろう。初めて食事に誘った時はまさかこんなに交流を図ることになるとは思ってもいなかった。二人で会っていたと知ればまたアカネが妬くだろうから、今回も内緒の逢瀬だ。バレるのは時間の問題だろうけれど、それはそれで楽しいから良しとする。
1560運ばれてきたケーキを指差すと、最近事務所に所属したばかりの四つ下の後輩が"ほんとだ"とあどけない笑顔を浮かべた。
白のレアチーズケーキに黄色いゼリーの覆いがかかり、一番上には砂糖漬けのレモンがひと切れ乗っかっている。オランジェットが光を反射してキラキラと輝く様は、まるで彼の髪が陽光に透けた時のようだ。
こうして同じテーブルを囲むのは何度目になるだろう。初めて食事に誘った時はまさかこんなに交流を図ることになるとは思ってもいなかった。二人で会っていたと知ればまたアカネが妬くだろうから、今回も内緒の逢瀬だ。バレるのは時間の問題だろうけれど、それはそれで楽しいから良しとする。
雪ノ下
MEMO2021.05.27『rainy day special』再録※時間軸Never end直後
Main:HAIJI
『rainy day special』「……いつの間に降り出したんだろ」
ある日の仕事帰り。自主練のために寄ったスタジオを出ると、目の前が霞むほどの大雨が地面を叩きつけていた。練習に没頭していたせいか室内にいる時は気づかなかったが、周囲の音が聞こえないほどの強さだ。数メートル先の視界も危ういこの状況、屋根の下から出ていくのはかなりの勇気がいる。が、今日はこれから夕飯の支度をしなくてはならない。同居人の帰宅時間を考えると、ここで二の足を踏んでいる暇はなかった。
「…...行くしかないか」
天気予報は曇り予報だったが念のため傘は持ってきていた。最寄りの駅までは五分もかからない距離だし行き慣れた道だ、この雨でもなんとか辿り着けるだろう。
1929ある日の仕事帰り。自主練のために寄ったスタジオを出ると、目の前が霞むほどの大雨が地面を叩きつけていた。練習に没頭していたせいか室内にいる時は気づかなかったが、周囲の音が聞こえないほどの強さだ。数メートル先の視界も危ういこの状況、屋根の下から出ていくのはかなりの勇気がいる。が、今日はこれから夕飯の支度をしなくてはならない。同居人の帰宅時間を考えると、ここで二の足を踏んでいる暇はなかった。
「…...行くしかないか」
天気予報は曇り予報だったが念のため傘は持ってきていた。最寄りの駅までは五分もかからない距離だし行き慣れた道だ、この雨でもなんとか辿り着けるだろう。
雪ノ下
MEMO2021.06.08『おいしくたべて』再録「LOVER」ジャケ写考察。自己解釈強
Main:RUBIA Leopard
『おいしくたべて』「物騒だよなぁ……」
「なにが?」
新曲ジャケットの色校を見返しながら呟くと、すかさず隣から反応が返ってくる。アカネがスマホから顔を上げると同時に"Are you ready ?"とカウントダウンを告げるツイートがタイムラインに流れた。
本日最後の仕事を終えたのが二時間前。メンバー揃ってアカネ・クロノ宅に到着したのが一時間前。そして"今からジャケット公開するわ"と言い出したのが数分前のことだ。
いつもの事とはいえあまりに唐突な発言に目が点になったが、やると言い出したら聞かないのが王様だ。サプライズと焦らしはルビレ(主にアカネ)の十八番ということもあり、問題ないだろうと最終的には全員が頷いた。もちろん敏腕マネージャーの許可もとってある。若干呆れられはしたが。
2273「なにが?」
新曲ジャケットの色校を見返しながら呟くと、すかさず隣から反応が返ってくる。アカネがスマホから顔を上げると同時に"Are you ready ?"とカウントダウンを告げるツイートがタイムラインに流れた。
本日最後の仕事を終えたのが二時間前。メンバー揃ってアカネ・クロノ宅に到着したのが一時間前。そして"今からジャケット公開するわ"と言い出したのが数分前のことだ。
いつもの事とはいえあまりに唐突な発言に目が点になったが、やると言い出したら聞かないのが王様だ。サプライズと焦らしはルビレ(主にアカネ)の十八番ということもあり、問題ないだろうと最終的には全員が頷いた。もちろん敏腕マネージャーの許可もとってある。若干呆れられはしたが。
雪ノ下
MEMO2021.07.05『互いの35センチメートル』再録 お題「意外な一面」※男性用傘の直径約70センチ
Main:KURONO・MASHIRO
『互いの35センチメートル』クロノは面倒見がいい。それこそファンから"ママ"なんて愛称で呼ばれるくらいには。
俺は必要以上に干渉されるのは嫌いだが、事ある毎に何かと口を出してくるアイツのことを"余計なお世話だ"と思ったことは不思議と一度もなかった。恐らく毎回の主張に筋が通っているからだろう。そんなクロノのお節介は特に"健康"に対して発揮される。これは幼い頃からずっと一緒にいるアカネのお墨付きだから間違いない。
三年来の付き合いがある今でこそ当たり前のように認識している事実だが、ルビレが結成されて間もない当時はまだ知らなかったのだ。なぜクロノが、これほどまでに他人の体を心配するのか。
2816俺は必要以上に干渉されるのは嫌いだが、事ある毎に何かと口を出してくるアイツのことを"余計なお世話だ"と思ったことは不思議と一度もなかった。恐らく毎回の主張に筋が通っているからだろう。そんなクロノのお節介は特に"健康"に対して発揮される。これは幼い頃からずっと一緒にいるアカネのお墨付きだから間違いない。
三年来の付き合いがある今でこそ当たり前のように認識している事実だが、ルビレが結成されて間もない当時はまだ知らなかったのだ。なぜクロノが、これほどまでに他人の体を心配するのか。
雪ノ下
MEMO2021.07.22『a piece of glass』再録 お題「無自覚」※時間軸BREAK TIME in無人島
Main:KURONO・MASHIRO
『a piece of glass』「マシロのやつ……一体どこに行ったんだ」
MV撮影のため海外を訪れたルビレは現在無人島でサバイバルの真っ最中だ。どうしてそうなってしまったのかは割愛するが、今は救助を待つしかない状態なので各々開き直ってこの無人島生活を楽しんでいる。アカネさんとハイジは連れ立ってダイビング中、巌原さんは何やらPCと睨めっこしており、マシロは迷子で見当たらない。一体どこにいったのかと海岸沿いを歩いていると、洞窟から随分離れた砂浜で見慣れたふわふわ頭がしゃがみ込んでいるのが目に入った。白い肌が日差しを跳ね返して光っている。このまま晒し続けていればいずれ赤くなってしまうと、無防備な背中目掛けてパーカーを投げつけた。
1630MV撮影のため海外を訪れたルビレは現在無人島でサバイバルの真っ最中だ。どうしてそうなってしまったのかは割愛するが、今は救助を待つしかない状態なので各々開き直ってこの無人島生活を楽しんでいる。アカネさんとハイジは連れ立ってダイビング中、巌原さんは何やらPCと睨めっこしており、マシロは迷子で見当たらない。一体どこにいったのかと海岸沿いを歩いていると、洞窟から随分離れた砂浜で見慣れたふわふわ頭がしゃがみ込んでいるのが目に入った。白い肌が日差しを跳ね返して光っている。このまま晒し続けていればいずれ赤くなってしまうと、無防備な背中目掛けてパーカーを投げつけた。
雪ノ下
MEMO2021.07.27『たまの星、夏の花』再録 お題「お祭り」Main:AKANE・HAIJI
『たまの星、夏の花』「おー。眺めいいな」
「ありがとうございます。がんちゃんもそうやってよく外を眺めてるんですよ」
お昼時、不意にアカネさんが「ハイジって花火大会行ったことある?」と話を振ってきた。
いつもならまた一体何のことかと思考を巡らせるところだが、今回は"花火大会のニュースを熱心に見ていたから話の種にするかもしれない"と事前にクロノさんから聞いていたのですぐに合点がいった。
花火大会に行ったことはある。けれど覚えているのは"行ったことがある"という漠然とした事実だけで、その他のことは大部分がぼやけてしまっている。子供の頃のことだからきっと母に手を引かれて行ったのだろうけれど、その温もりすら曖昧だ。
1970「ありがとうございます。がんちゃんもそうやってよく外を眺めてるんですよ」
お昼時、不意にアカネさんが「ハイジって花火大会行ったことある?」と話を振ってきた。
いつもならまた一体何のことかと思考を巡らせるところだが、今回は"花火大会のニュースを熱心に見ていたから話の種にするかもしれない"と事前にクロノさんから聞いていたのですぐに合点がいった。
花火大会に行ったことはある。けれど覚えているのは"行ったことがある"という漠然とした事実だけで、その他のことは大部分がぼやけてしまっている。子供の頃のことだからきっと母に手を引かれて行ったのだろうけれど、その温もりすら曖昧だ。
雪ノ下
MEMO2021.08.20『change my perspective.』再録 お題「汗」マシロのとあるセリフに関する考察
Main:AKANE・KURONO
『change my perspective.』マシロの言葉が始終頭の片隅に陣取っているせいで、日々後ろ髪を引かれるような思いで過ごさなければならなかった。
あの時は随分と極端な物言いだと思って取り合わなかったが、冬木真白という男は適当なようでいて適当でなく……それはヤツの言葉も同様で、よくよく考えてみれば昔から核心をついているものが多かった。ただ厄介なのは、マシロはひどく回りくどい言い方をするから都度噛み砕いて考えなければならないということである。
野球でいえば変化球の連続。少しは充弦くんを見習ってストレートを投げてほしいものだが……正しく厄介の一言に尽きる。
"バンドマンの本音なんて、楽しくて気持ちいいことしてたいだけ"
それが肉体だけでなく精神の充足も含むのだと知った時、あぁ。確かにそうかもしれないと半分くらいは納得できた。
1776あの時は随分と極端な物言いだと思って取り合わなかったが、冬木真白という男は適当なようでいて適当でなく……それはヤツの言葉も同様で、よくよく考えてみれば昔から核心をついているものが多かった。ただ厄介なのは、マシロはひどく回りくどい言い方をするから都度噛み砕いて考えなければならないということである。
野球でいえば変化球の連続。少しは充弦くんを見習ってストレートを投げてほしいものだが……正しく厄介の一言に尽きる。
"バンドマンの本音なんて、楽しくて気持ちいいことしてたいだけ"
それが肉体だけでなく精神の充足も含むのだと知った時、あぁ。確かにそうかもしれないと半分くらいは納得できた。
雪ノ下
MEMO2021.08.23『sweeter than sugar and honey.』再録マシロのとあるセリフに関する考察
Main:AKANE・MASHIRO
『sweeter than sugar and honey.』「お前にだけは言われたくねーな」
独り言かと思って振り向くと、金色の瞳とバチリと視線が合った。最近SNSで偶然ヒョウの写真を目にする機会があって、なんだマジでアカネそっくりじゃんと感心したことを思い出す。
相変わらず"RUBIA Leopard"というバンドを体現したような男だ。
今更言うことでもないが、ルビレのボーカルにこれほど相応しいヤツは他にいない。歌唱力的にも、ビジュアル的にも。
「……今の俺に言ったの?」
「他に誰がいんだよ。俺とお前しかいねーのに」
「独り言かと思って」
アカネの言う通り今この部屋には俺とアカネの二人しかいない。
というのもここはスタジオに併設された喫煙ルームで、クロノもハイジも基本的にタバコは吸わないから必然的に並ぶ顔ぶれは俺一人、もしくは俺とアカネ二人のどちらかということになる。吸う頻度でいえばアカネよりがんちゃんの方が高いけれど、アーティストとマネージャーという立場上休憩時間が被ることはあまりない。
1760独り言かと思って振り向くと、金色の瞳とバチリと視線が合った。最近SNSで偶然ヒョウの写真を目にする機会があって、なんだマジでアカネそっくりじゃんと感心したことを思い出す。
相変わらず"RUBIA Leopard"というバンドを体現したような男だ。
今更言うことでもないが、ルビレのボーカルにこれほど相応しいヤツは他にいない。歌唱力的にも、ビジュアル的にも。
「……今の俺に言ったの?」
「他に誰がいんだよ。俺とお前しかいねーのに」
「独り言かと思って」
アカネの言う通り今この部屋には俺とアカネの二人しかいない。
というのもここはスタジオに併設された喫煙ルームで、クロノもハイジも基本的にタバコは吸わないから必然的に並ぶ顔ぶれは俺一人、もしくは俺とアカネ二人のどちらかということになる。吸う頻度でいえばアカネよりがんちゃんの方が高いけれど、アーティストとマネージャーという立場上休憩時間が被ることはあまりない。
雪ノ下
MEMO2021.09.07『ぷりんぱにっく』再録販促音声# 11の後日談妄想
Main:AKANE・KURONO
『ぷりんぱにっく』「……、」
冷蔵庫を開けた瞬間思考が停止した。
開いた口が塞がらないとはきっとこういう状態のことを言うのだろう。原因は今目の前に広がっているこの景色だ。
何を言っているかわからないかもしれないが、冷蔵庫の中がプリン一色なのだ。
プチッとお皿にのせられるプリン。とろけるプリン。真っ白なミルクプリン。焼きプリンからプリンアラモード。
種類は違えど右から左、上から下の棚まで全てプリンで埋め尽くされている。
左隅の、申し訳程度に空けられたスペースに買ってきた食材をなんとか詰め込んだ。俺が買い出しに行っている間に一体何が……
「悪かった」
「……アカネさん」
振り返ると、今まさに思い浮かべていた人物が大きな体を縮こませて立っていた。いつもはスパンと言い切る口も今日はどこか歯切れが悪い。
1056冷蔵庫を開けた瞬間思考が停止した。
開いた口が塞がらないとはきっとこういう状態のことを言うのだろう。原因は今目の前に広がっているこの景色だ。
何を言っているかわからないかもしれないが、冷蔵庫の中がプリン一色なのだ。
プチッとお皿にのせられるプリン。とろけるプリン。真っ白なミルクプリン。焼きプリンからプリンアラモード。
種類は違えど右から左、上から下の棚まで全てプリンで埋め尽くされている。
左隅の、申し訳程度に空けられたスペースに買ってきた食材をなんとか詰め込んだ。俺が買い出しに行っている間に一体何が……
「悪かった」
「……アカネさん」
振り返ると、今まさに思い浮かべていた人物が大きな体を縮こませて立っていた。いつもはスパンと言い切る口も今日はどこか歯切れが悪い。
雪ノ下
MEMO2021.11.12『Halloween-like Halloween』再録 お題「仮装・コスプレ」Main:RUBIA Leopard
『Halloween-like Halloween』「アカネー、ちょっといい?」
肩を叩かれ振り向くと、頭に勢いよく何かが被せられた。
反動でぐらりと視界が揺れていきなりなんだと顔を顰めるも、当人のマシロはあーでもないこーでもないと唸るばかりでこちらの事など一切お構いなし。仕方なく手で触れて確認してみるものの、感触だけではさっぱりわからず……鏡で見るのが一番手っ取り早いのだが、残念ながら周囲には見当たらなかった。
この大型マーケットに訪れるのは今回で二度目になる。前回はクロノと二人きり。今日はルビレ揃って。マネージャーも誘う予定だったが恒常的に忙しい人だし、全員で行くと言ったら心労で卒倒するかもしれない。今度声をかける時は入念に準備を整えておかなければ。いっそ貸し切りにしてしまおうか。
3073肩を叩かれ振り向くと、頭に勢いよく何かが被せられた。
反動でぐらりと視界が揺れていきなりなんだと顔を顰めるも、当人のマシロはあーでもないこーでもないと唸るばかりでこちらの事など一切お構いなし。仕方なく手で触れて確認してみるものの、感触だけではさっぱりわからず……鏡で見るのが一番手っ取り早いのだが、残念ながら周囲には見当たらなかった。
この大型マーケットに訪れるのは今回で二度目になる。前回はクロノと二人きり。今日はルビレ揃って。マネージャーも誘う予定だったが恒常的に忙しい人だし、全員で行くと言ったら心労で卒倒するかもしれない。今度声をかける時は入念に準備を整えておかなければ。いっそ貸し切りにしてしまおうか。
雪ノ下
MEMO2021.12.07『とあるオフの日-アカネと巌原の場合-』再録 お題「オフの日」Main:AKANE・IWAHARA
『とあるオフの日-アカネと巌原の場合-』「オフに呼び出して悪かったな」
「むしろ参加させてもらえてありがたいっすよ。俺が頼んだ案件なんだし」
"ルビレに関することは全て把握しておきたいから"と、たとえ休日でも打ち合わせがある時は連絡を寄越してほしいと頼まれていた。普段の多忙さを知っている手前たまのオフくらいゆっくり過ごしてほしいのが本音だが、アカネの希望を無視するわけにもいかない。会議室がリザーブできた段階で連絡を入れると、予想通り返事は即答だった。
ルビレのボーカル、サウンドプロデューサー、そして時には己の容姿を活かして広告塔をも務める。当然その仕事量は膨大だ。本人の意思でやっている事とはいえ本当に恐れ入る。明け方近くSNSに浮上していることもあるようだし、きちんと睡眠をとれているのか不安になってしまうが……私生活はクロノが見張っているだろうから無理はさせてもらえないだろう。体調さえ崩さなければある程度までは許容の範囲内だ。
2299「むしろ参加させてもらえてありがたいっすよ。俺が頼んだ案件なんだし」
"ルビレに関することは全て把握しておきたいから"と、たとえ休日でも打ち合わせがある時は連絡を寄越してほしいと頼まれていた。普段の多忙さを知っている手前たまのオフくらいゆっくり過ごしてほしいのが本音だが、アカネの希望を無視するわけにもいかない。会議室がリザーブできた段階で連絡を入れると、予想通り返事は即答だった。
ルビレのボーカル、サウンドプロデューサー、そして時には己の容姿を活かして広告塔をも務める。当然その仕事量は膨大だ。本人の意思でやっている事とはいえ本当に恐れ入る。明け方近くSNSに浮上していることもあるようだし、きちんと睡眠をとれているのか不安になってしまうが……私生活はクロノが見張っているだろうから無理はさせてもらえないだろう。体調さえ崩さなければある程度までは許容の範囲内だ。
雪ノ下
MEMO2021.12.14『Kalanchoe』再録クロノについてアカネとマシロが考える。花言葉ネタ
Main:AKANE・MASHIRO
『Kalanchoe』時任黒乃は、日暮茜にとって"不変の象徴"のような存在だと思う。
「コンニチハー」
久方ぶりのオフ、特に理由なく気まぐれにアカネ・クロノ宅の戸を叩いた。雑談ついでに昼食をご馳走になれたらラッキー程度の気持ちだ。
日に日にこのマンションに入り浸る率が高まっている自覚はあるが、時間ができるとつい足が向いてしまう。まぁ他でもない家主の片割れから"いつでもメシ食いに来いよ"と許可は得ていることだし、嫌な顔をされない限りは甘えさせてもらおうと思っている。
「ようマシロ」
「……おっと」
「なんだよ。出迎えが俺じゃ不満?」
「まさか」
インターホンを押すと応答したのはアカネだった。部屋に上がっても見当たらないもう一人はどこに行ったのかと尋ねると、午前中から買い出しに出掛けたという。現在デスクワークの真っ最中で暫く相手ができそうにないと眉を寄せるアカネに気にするなと手を振って、買っておいた酒とつまみを冷蔵庫にしまい込んだ。無意味に時間を浪費するのは嫌いだが、この家は居心地がいいから特別苦にならない。アカネが仕事を終えるかクロノが帰宅するまで適当に時間を潰せばいいだけだ。
2357「コンニチハー」
久方ぶりのオフ、特に理由なく気まぐれにアカネ・クロノ宅の戸を叩いた。雑談ついでに昼食をご馳走になれたらラッキー程度の気持ちだ。
日に日にこのマンションに入り浸る率が高まっている自覚はあるが、時間ができるとつい足が向いてしまう。まぁ他でもない家主の片割れから"いつでもメシ食いに来いよ"と許可は得ていることだし、嫌な顔をされない限りは甘えさせてもらおうと思っている。
「ようマシロ」
「……おっと」
「なんだよ。出迎えが俺じゃ不満?」
「まさか」
インターホンを押すと応答したのはアカネだった。部屋に上がっても見当たらないもう一人はどこに行ったのかと尋ねると、午前中から買い出しに出掛けたという。現在デスクワークの真っ最中で暫く相手ができそうにないと眉を寄せるアカネに気にするなと手を振って、買っておいた酒とつまみを冷蔵庫にしまい込んだ。無意味に時間を浪費するのは嫌いだが、この家は居心地がいいから特別苦にならない。アカネが仕事を終えるかクロノが帰宅するまで適当に時間を潰せばいいだけだ。
雪ノ下
MEMO2021.12.21『Q.酢豚にパイナップル。アリ?ナシ?』再録帝さんから大量のパイナップルが送られてくる話
Main:RUBIA Leopard
『Q.酢豚にパイナップル。アリ?ナシ?』「……なにコレ」
明日にオフを控えた夜、仕事終わりにアカネとクロノから揃って「この後うちに来てほしい」と声をかけられた。時間があるときに自ら赴くことはあっても家主である二人から直接来てほしいと頼まれるのはかなり稀なケースだ。現在取り掛かっている新曲のことか、はたまたバンドの方向性に関わることか……ともかく何か大事なことに違いない。ただならぬ気配を感じつつ、マシロとハイジは二つ返事で了承した……のが、今からおよそ三十分前の出来事である。
「なんなのコレ」
「パイナップル」
「それは見りゃわかるっつーの!」
家に上がってすぐに一階の最奥にある部屋に通された。確か普段はゲストルームとして使用されている場所だ。てっきり話し合いのためにリビングルームに直行するものと思っていたマシロとハイジは首を傾げたが、室内の異様な光景を目にしてすぐに納得した。
3219明日にオフを控えた夜、仕事終わりにアカネとクロノから揃って「この後うちに来てほしい」と声をかけられた。時間があるときに自ら赴くことはあっても家主である二人から直接来てほしいと頼まれるのはかなり稀なケースだ。現在取り掛かっている新曲のことか、はたまたバンドの方向性に関わることか……ともかく何か大事なことに違いない。ただならぬ気配を感じつつ、マシロとハイジは二つ返事で了承した……のが、今からおよそ三十分前の出来事である。
「なんなのコレ」
「パイナップル」
「それは見りゃわかるっつーの!」
家に上がってすぐに一階の最奥にある部屋に通された。確か普段はゲストルームとして使用されている場所だ。てっきり話し合いのためにリビングルームに直行するものと思っていたマシロとハイジは首を傾げたが、室内の異様な光景を目にしてすぐに納得した。
雪ノ下
MEMO2021.12.25『”You” from my point of view.(about 4years ago)』再録 お題「日暮茜」自己解釈度強。RUBIA解散直後にアカネが過ごしたかもしれない一夜
Main:AKANE・KURONO
『”You” from my point of view.(about 4years ago)』涙がでないのが不思議なほど苦しい夜だった。
ズキズキ。ズキズキ。心臓のあたりが鈍く痛む。
ズキズキ。ズキズキ。見えない何かが内側から苛む。
ズキズキ。ズキズキ。ズキズキ。ズキズキ。
血など一滴もでていないのに息をするのも辛い。
眠りたい。できない。
忘れたい。できない。
泣きたい。できない。
助けてほしい。縋りたい。頼りたい。できない。
許されない。してはいけない。言ってはいけない。悟られてはいけない。あらゆるNO。あらゆるシャットアウト。×××××。
"だってそんなのは日暮茜じゃない"
感情が爆発する一歩手前で理性がそう訴えかけてくる。
勝手に従う自分。意思とは正反対に機能する体。ひとりの人間としての日暮茜と、周囲から期待される日暮茜の"姿"。
2742ズキズキ。ズキズキ。心臓のあたりが鈍く痛む。
ズキズキ。ズキズキ。見えない何かが内側から苛む。
ズキズキ。ズキズキ。ズキズキ。ズキズキ。
血など一滴もでていないのに息をするのも辛い。
眠りたい。できない。
忘れたい。できない。
泣きたい。できない。
助けてほしい。縋りたい。頼りたい。できない。
許されない。してはいけない。言ってはいけない。悟られてはいけない。あらゆるNO。あらゆるシャットアウト。×××××。
"だってそんなのは日暮茜じゃない"
感情が爆発する一歩手前で理性がそう訴えかけてくる。
勝手に従う自分。意思とは正反対に機能する体。ひとりの人間としての日暮茜と、周囲から期待される日暮茜の"姿"。
雪ノ下
MEMO2022.01.21『12.09の邂逅』再録2021.12.09に叶希とクロノがしていたツイートのその後妄想
Main:TOKI・KURONO
『12.09の邂逅』「よければ一緒に行かないか」
事務所でファンレターを受け取った帰り道、上着のポケットに突っ込んでいたスマホが着信を知らせた。画面を確認すると、表示されていた名前は"黒乃さん"。緑の電話マークをタップする指が緊張からか少し震えた。
連絡先を交換して暫く経つというのに未だに電話でのやり取りには慣れない。つぐと違って人との距離を縮めるのが上手い方ではないし、何度か顔を合わせているとはいえ相手は事務所の先輩だ。ルビレのハードスケジュールっぷりを知っている手前、メッセージひとつ送るのでさえ躊躇してしまう。
タイミングはいつがいいか。どれくらいの頻度なら迷惑でないか。色々考えた末結局は連絡をしないのが一番迷惑をかけずに済むという答えに行き着いて、スマホから指は遠のくばかり。けれどまったく音沙汰なしというのも"一応交換はしたけれど連絡をとる気は一切ありません"などというあらぬ誤解を与えかねないし……とまたモヤモヤ。
2469事務所でファンレターを受け取った帰り道、上着のポケットに突っ込んでいたスマホが着信を知らせた。画面を確認すると、表示されていた名前は"黒乃さん"。緑の電話マークをタップする指が緊張からか少し震えた。
連絡先を交換して暫く経つというのに未だに電話でのやり取りには慣れない。つぐと違って人との距離を縮めるのが上手い方ではないし、何度か顔を合わせているとはいえ相手は事務所の先輩だ。ルビレのハードスケジュールっぷりを知っている手前、メッセージひとつ送るのでさえ躊躇してしまう。
タイミングはいつがいいか。どれくらいの頻度なら迷惑でないか。色々考えた末結局は連絡をしないのが一番迷惑をかけずに済むという答えに行き着いて、スマホから指は遠のくばかり。けれどまったく音沙汰なしというのも"一応交換はしたけれど連絡をとる気は一切ありません"などというあらぬ誤解を与えかねないし……とまたモヤモヤ。
雪ノ下
MEMO2022.02.04『紫紺のギタリスト曰く』再録 お題「野中つぐみ」叶希とアカネがつぐみについて語り合う
Main:TOKI・AKANE
『紫紺のギタリスト曰く』「……アカネさんてそんなにつぐのこと好きなんすか?」
口にだしてからしまったと思った。けれど金色の瞳はとっくにこちらを向いていて、今更"なんでもありません"と首を横に振れる雰囲気ではない。何よりアカネさんの場合そんな言葉で誤魔化されてはくれないだろう。
はじめて顔を合わせた時から思っていた。なぜこの人は、そこまでつぐのことを特別視するのだろうと。
競合相手ならまだしも相手はプロデビューしたばかりの嘴の青い新人アーティストだ。もちろん俺にとってはアイツ以上のボーカルはいないが、その評価には少なからず身内特有の贔屓目が含まれている。当然バンドとしての実績も遠く及ばないから、どうしてアカネさんが事ある毎につぐに絡むのか不思議でならなかった。
2695口にだしてからしまったと思った。けれど金色の瞳はとっくにこちらを向いていて、今更"なんでもありません"と首を横に振れる雰囲気ではない。何よりアカネさんの場合そんな言葉で誤魔化されてはくれないだろう。
はじめて顔を合わせた時から思っていた。なぜこの人は、そこまでつぐのことを特別視するのだろうと。
競合相手ならまだしも相手はプロデビューしたばかりの嘴の青い新人アーティストだ。もちろん俺にとってはアイツ以上のボーカルはいないが、その評価には少なからず身内特有の贔屓目が含まれている。当然バンドとしての実績も遠く及ばないから、どうしてアカネさんが事ある毎につぐに絡むのか不思議でならなかった。
雪ノ下
MEMO2022.05.27『夏空とストロベリー』再録気まぐれなマシロが甘いものを飲む話
Main:MASHIRO
『夏空とストロベリー』「あっっっつ……」
雲ひとつない青空に輝く太陽が容赦なく地上を照りつけていた。初夏らしからぬ熱気を恨めしく思いながら、顎を伝う汗を無造作に拭う。
次の現場までそんなに離れていないからとらしくもなく徒歩移動を選択した自分が間違っていた。まさか今日がこんな季節外れの真夏日になろうとは。
道すがら拾おうかと提案してくれたアカネの誘いを断ったことを今更ながらに後悔する。今からでもいいから迎えに来てほしい。
まったくまだ五月も半ばだというのにこの暑さ、盛夏を迎えたら一体どうなってしまうのだろう。陽光と熱風で溶けてしまうんじゃないのかと一抹の不安が頭を過ぎる。そう思いながら毎年なんだかんだ乗り越えられているからいらぬ心配には違いないのだろうが……そうは言ってもこの気温の高さ、流石に参ってしまう。
2154雲ひとつない青空に輝く太陽が容赦なく地上を照りつけていた。初夏らしからぬ熱気を恨めしく思いながら、顎を伝う汗を無造作に拭う。
次の現場までそんなに離れていないからとらしくもなく徒歩移動を選択した自分が間違っていた。まさか今日がこんな季節外れの真夏日になろうとは。
道すがら拾おうかと提案してくれたアカネの誘いを断ったことを今更ながらに後悔する。今からでもいいから迎えに来てほしい。
まったくまだ五月も半ばだというのにこの暑さ、盛夏を迎えたら一体どうなってしまうのだろう。陽光と熱風で溶けてしまうんじゃないのかと一抹の不安が頭を過ぎる。そう思いながら毎年なんだかんだ乗り越えられているからいらぬ心配には違いないのだろうが……そうは言ってもこの気温の高さ、流石に参ってしまう。
雪ノ下
MEMO2022.07.26『お遊び的SS』再録10割会話。アカネがハイジをおぶる話
Main:RUBIA Leopard
『お遊び的SS』「……なにしてんの」
「ハイジおぶってる」
「それは見りゃわかるっつの」
「だったら聞くな」
「いや聞くでしょ!」
「こら、騒がしいぞ。廊下まで声が聞こえた」
「待ってがんちゃん俺のせいじゃない。見て」
「……なにやってんだお前ら」
「ちょっとハイジをおぶってみようかと」
「危ないだろ。おろせ」
「絶対落とさねーって」
「まったく……何がどうしてこうなったんだ」
「前にハイジが熱だした時おぶりそこねたから」
「はぁ?」
「あー……ナルホド。そういうことか」
「そういうこと」
「待て。俺にもわかるように説明しろ」
-説明中-
「だからって本当にするやつがあるか」
「やったらいけたから」
「軽いの?」
1112「ハイジおぶってる」
「それは見りゃわかるっつの」
「だったら聞くな」
「いや聞くでしょ!」
「こら、騒がしいぞ。廊下まで声が聞こえた」
「待ってがんちゃん俺のせいじゃない。見て」
「……なにやってんだお前ら」
「ちょっとハイジをおぶってみようかと」
「危ないだろ。おろせ」
「絶対落とさねーって」
「まったく……何がどうしてこうなったんだ」
「前にハイジが熱だした時おぶりそこねたから」
「はぁ?」
「あー……ナルホド。そういうことか」
「そういうこと」
「待て。俺にもわかるように説明しろ」
-説明中-
「だからって本当にするやつがあるか」
「やったらいけたから」
「軽いの?」
雪ノ下
MEMO2022.10.18『橙黄を纏う』再録クロノと香水
Main:RUBIA Leopard
『橙黄を纏う』「なぁ。クロノって香水変えた?」
スタジオに入るなりそう尋ねられて、暫く思考を巡らせたアカネはさぁと首を傾げた。
「まだ会ってねーんだよ」
「……あぁ。昨日帰ってないのね」
「そ。出先から直行」
「やーい朝帰り」
「誤解うむような言い方やめろ」
もはや日常のテンプレと化したマシロの揶揄を軽く受け流してソファに腰かける。一息ついたところで、先程のワードに再び意識を戻した。
はて。"クロノと香水"とは、なんとも珍しい組み合わせだ。
「で、なんで香水?」
「いつもと違うっつか……すげー甘い匂いする」
「マジ?珍し」
そもクロノが香りを纏っていること自体日常的とは言い難い。
元々そういう類にあまり興味がないらしく、時折ふっている香水もアカネが購入した際にサンプルとして貰ったものだ。新しいのを買ってやると言っても首を横に振るばかりで、なくなったタイミングで贈ろうと画策してはいるものの、つけない日もしばしばあるから一向に減る気配がない。
2120スタジオに入るなりそう尋ねられて、暫く思考を巡らせたアカネはさぁと首を傾げた。
「まだ会ってねーんだよ」
「……あぁ。昨日帰ってないのね」
「そ。出先から直行」
「やーい朝帰り」
「誤解うむような言い方やめろ」
もはや日常のテンプレと化したマシロの揶揄を軽く受け流してソファに腰かける。一息ついたところで、先程のワードに再び意識を戻した。
はて。"クロノと香水"とは、なんとも珍しい組み合わせだ。
「で、なんで香水?」
「いつもと違うっつか……すげー甘い匂いする」
「マジ?珍し」
そもクロノが香りを纏っていること自体日常的とは言い難い。
元々そういう類にあまり興味がないらしく、時折ふっている香水もアカネが購入した際にサンプルとして貰ったものだ。新しいのを買ってやると言っても首を横に振るばかりで、なくなったタイミングで贈ろうと画策してはいるものの、つけない日もしばしばあるから一向に減る気配がない。
雪ノ下
MEMO2022.11.02『たいもひとりはうまからず』再録鯛のような美味しい魚や料理であっても、たったひとりで食べるのでは味気なく感じるということ
転じて、「食事は大勢で食べるほうが美味しく感じられる」という意
Main:MASHIRO
『たいもひとりはうまからず』「……どーっすかな今日」
制限時間いっぱいまでベースを弾き、借りていたスタジオをでると日はすっかり高くなっていた。
ちょうど時刻は昼時……が、如何せん腹が減らない。いや、本当は減っているのかもしれないが自ら食事をとろうと思うほどの欲が湧かないのだ。疲労は感じるからそれなりに動いているには違いないし、消費したエネルギーの分だけ空腹を覚えていても不思議はないのだが……結局今日も"ひとりでメシを食うのだ"と思うと、微々たる食欲よりも、それを満たすためにあれこれ悩むのは面倒だという気持ちの方が勝った。
大抵のことは適当に済ませられると思っていたが、俺って案外繊細なのかもしれない。以前は……ひとりでいることが当たり前だった頃は、むしろ他人と時間を共有するなど鬱陶しいことこの上ないと思っていたのに。
2291制限時間いっぱいまでベースを弾き、借りていたスタジオをでると日はすっかり高くなっていた。
ちょうど時刻は昼時……が、如何せん腹が減らない。いや、本当は減っているのかもしれないが自ら食事をとろうと思うほどの欲が湧かないのだ。疲労は感じるからそれなりに動いているには違いないし、消費したエネルギーの分だけ空腹を覚えていても不思議はないのだが……結局今日も"ひとりでメシを食うのだ"と思うと、微々たる食欲よりも、それを満たすためにあれこれ悩むのは面倒だという気持ちの方が勝った。
大抵のことは適当に済ませられると思っていたが、俺って案外繊細なのかもしれない。以前は……ひとりでいることが当たり前だった頃は、むしろ他人と時間を共有するなど鬱陶しいことこの上ないと思っていたのに。
雪ノ下
MEMO2022.11.29『speechless』再録アカネの声がでなくなる話
Main:AKANE・KURONO
『speechless』"日常とは突如崩れ去るものである"
まさか、こんな最悪の形で経験することになるなんて。
「……」
目が覚めたとき、特に違和感はなかった。
昨夜なかなか寝つけなかったせいで少し頭が重いのと、周りの景色の変化にまだ慣れないこと以外は。枕元のスマホを見ると6時30分。ほぼ普段通りの起床時刻だ。
きっちりカーテンが引かれた室内に少し開いた扉の隙間から人口的な光が差し込んでいる。耳を澄ますとリビングの方からパタパタとスリッパが鳴る音と、食器が擦れ合うような音が聞こえてきた。
クロノ、もう起きてるのか。
"はえーな"
そう呟こうとして、気づいた。
「 」
声がでない。
3688まさか、こんな最悪の形で経験することになるなんて。
「……」
目が覚めたとき、特に違和感はなかった。
昨夜なかなか寝つけなかったせいで少し頭が重いのと、周りの景色の変化にまだ慣れないこと以外は。枕元のスマホを見ると6時30分。ほぼ普段通りの起床時刻だ。
きっちりカーテンが引かれた室内に少し開いた扉の隙間から人口的な光が差し込んでいる。耳を澄ますとリビングの方からパタパタとスリッパが鳴る音と、食器が擦れ合うような音が聞こえてきた。
クロノ、もう起きてるのか。
"はえーな"
そう呟こうとして、気づいた。
「 」
声がでない。
雪ノ下
MEMO2022.12.21『EVOKE』再録Main:KURONO・MASHIRO
『EVOKE』忘れかけていた記憶の欠片がふとした瞬間、何気ないことで喚起される。
アルバムのページが独りでに捲られていくように。無数の星が一斉に瞬くように。
自分の中では遥か彼方にあって、もう届くまいと思い込んでいるものでも、ちょっとしたトリガーさえあれば案外簡単に呼び起こせるものだ。その点、人間の脳はよく出来ている。
「あ」
ぽろ、と手からペンが零れ落ちた。
先程から上手く力が伝わらず、そろそろ落っことしそうだと思っていた矢先の出来事だった。空調はきいているはずなのに指先は一向に温かくならない。この季節の嫌なところだ。
反動に従ってコロコロと床を転がったそれは、まるで「拾ってください」と言わんばかりに誰かの足元で動きを止めた。よく磨かれた真っ黒な爪先から視線を上げると、いつの間に来たのかクロノが立っている。どれだけ静かに入ってきたとしても扉の開閉音くらいはしたはずだが、今の今までまったく気がつかずにいたらしい。いるなら声くらいかけてくれればいいのに。
3944アルバムのページが独りでに捲られていくように。無数の星が一斉に瞬くように。
自分の中では遥か彼方にあって、もう届くまいと思い込んでいるものでも、ちょっとしたトリガーさえあれば案外簡単に呼び起こせるものだ。その点、人間の脳はよく出来ている。
「あ」
ぽろ、と手からペンが零れ落ちた。
先程から上手く力が伝わらず、そろそろ落っことしそうだと思っていた矢先の出来事だった。空調はきいているはずなのに指先は一向に温かくならない。この季節の嫌なところだ。
反動に従ってコロコロと床を転がったそれは、まるで「拾ってください」と言わんばかりに誰かの足元で動きを止めた。よく磨かれた真っ黒な爪先から視線を上げると、いつの間に来たのかクロノが立っている。どれだけ静かに入ってきたとしても扉の開閉音くらいはしたはずだが、今の今までまったく気がつかずにいたらしい。いるなら声くらいかけてくれればいいのに。
雪ノ下
MEMO2023.01.17『blank space』再録※時間軸Never end
Main:RUBIA Leopard
『blank space』ピンポーン
来訪者を知らせるチャイムの音にモニターを確認すると、"さっさといれてよ"と言わんばかりにこちらを覗き込む見慣れた綿毛が目に入った。勿論これはあだ名……とまでもいかない今浮かんだばかりの仮名だが、我ながら結構いい例えだと思う。
「また来たのか」
「お腹すいたーあけてー」
「うちは食堂じゃないと何度言えば……」
「んな固いこと言わずに!ね?クロノおにーちゃん」
「切るぞ」
揶揄を含んだ声音に若干の苛立ちを覚えて突っぱねるとマシロの態度は一転、低姿勢なものに変わった。日によって会話の内容が異なるとはいえこれに似たやり取りをもう何度も繰り返している。マシロの軽口など挨拶のようなものだ。いい加減流せるようになれと思うものの、コイツ相手にすんなり首を振るのはどうにも癪に障るというか……
2162来訪者を知らせるチャイムの音にモニターを確認すると、"さっさといれてよ"と言わんばかりにこちらを覗き込む見慣れた綿毛が目に入った。勿論これはあだ名……とまでもいかない今浮かんだばかりの仮名だが、我ながら結構いい例えだと思う。
「また来たのか」
「お腹すいたーあけてー」
「うちは食堂じゃないと何度言えば……」
「んな固いこと言わずに!ね?クロノおにーちゃん」
「切るぞ」
揶揄を含んだ声音に若干の苛立ちを覚えて突っぱねるとマシロの態度は一転、低姿勢なものに変わった。日によって会話の内容が異なるとはいえこれに似たやり取りをもう何度も繰り返している。マシロの軽口など挨拶のようなものだ。いい加減流せるようになれと思うものの、コイツ相手にすんなり首を振るのはどうにも癪に障るというか……
雪ノ下
MEMO2023.04.14『SAI』再録ルビレイディオ
つぐみとアカネがファンからのとある悩みについて考える話
Main:TSUGUMI・AKANE
『SAI』"赤が似合わないんです"
それまでほぼ休むことなく画面をスクロールしていた指が止まった。
それはルビレイディオで特に制限を設けず募集している「お便りコーナー」に投稿されたメールの一文だった。ライブの感想やメンバーへの質問、相談……なんでも気軽に送ってね、という趣旨の。
「んー……」
「どうかした?」
無意識に声を発していたらしい。正面から反応があって視線を上げると、今日のゲストであるつぐみが不思議そうな顔でこちらを見ている。手元にはタブレットを持っていて、自分と同様ファンからのメールを確認していたようだ。珍しく終始無言だったのはそのせいかと合点がいった。
「つーかアンタ、読むの早すぎない?」
2769それまでほぼ休むことなく画面をスクロールしていた指が止まった。
それはルビレイディオで特に制限を設けず募集している「お便りコーナー」に投稿されたメールの一文だった。ライブの感想やメンバーへの質問、相談……なんでも気軽に送ってね、という趣旨の。
「んー……」
「どうかした?」
無意識に声を発していたらしい。正面から反応があって視線を上げると、今日のゲストであるつぐみが不思議そうな顔でこちらを見ている。手元にはタブレットを持っていて、自分と同様ファンからのメールを確認していたようだ。珍しく終始無言だったのはそのせいかと合点がいった。
「つーかアンタ、読むの早すぎない?」
雪ノ下
MEMO2023.04.18『静観の美学』再録帝さんがとあることをきっかけに過去(アカネの幼少期)に思いを馳せる話
Main:日暮帝
『静観の美学』「どうやら俺は、人の目には冷たく映るらしい」
呟くと、隣に立つ楓の視線が頬に刺さるのを感じた。
いきなりなんだと驚いたことだろう。当然だ、あまりにも脈絡がなさすぎる。返答を期待してのことではなかった。ただ口の端から零れ落ちた些末な"ぼやき"に過ぎない。
けれど、それを単なる独り言として片付けないのがうちの次男のよく出来たところで。
「なぜ、そんな事を?」
「取引先の役員に言われたよ」
正確には"元"取引先だ。つい先ほど契約打ち切りの旨を伝えたばかりだった。
『あなたは冷たい御人だ。お父上なら、もっと温情をかけた判断をしてくださっただろう』
膝に置いたふたつの拳をぶるぶる震わせながら、絞り出すようにして吐きだされた言葉が耳について離れない。
3531呟くと、隣に立つ楓の視線が頬に刺さるのを感じた。
いきなりなんだと驚いたことだろう。当然だ、あまりにも脈絡がなさすぎる。返答を期待してのことではなかった。ただ口の端から零れ落ちた些末な"ぼやき"に過ぎない。
けれど、それを単なる独り言として片付けないのがうちの次男のよく出来たところで。
「なぜ、そんな事を?」
「取引先の役員に言われたよ」
正確には"元"取引先だ。つい先ほど契約打ち切りの旨を伝えたばかりだった。
『あなたは冷たい御人だ。お父上なら、もっと温情をかけた判断をしてくださっただろう』
膝に置いたふたつの拳をぶるぶる震わせながら、絞り出すようにして吐きだされた言葉が耳について離れない。
gorock30
MOURNING※画像SS※ジェイジェイ(同キャラ カプではない 手握ってる程度)
※人間体のジェとやや人魚化気味のジェの徒然茶番
わたしの中のジェジェは少しばかりの狂乱をはらんでいるので
伝説の悲劇さえ引っ掻き回して格ゲーにします 5
moldale912
TRAININGENNゆるワンドロ企画さまによる第5回お題【天気】。やったー!!皆勤賞~!!\(`・ω・´)/
ENN組ゆるワンドロ⑤(5/28)【天気】ざあざあ。
ぽつぽつ。
雨だ。豪雨とは言わないが、しっかりと降り注ぐ雨粒は窓を強く叩いている。
空気中の湿度がほのかな雨の香りとなってナワーブの鼻をくすぐった。
ナワーブは雨が嫌いではない。恵みの雨という言葉があるぐらいだ。故郷では雨は生活水の元になるし、作物を育て、時には家族の語らいの時間を増やしてくれる。
もちろん戦場での雨は視界を遮り、体温を奪い、ぬかるんだ土は足跡を残すためあまり歓迎されないのだが。それはそれ、これはこれ。こと荘園では雨の日の試合はないため、なおのこと歓迎されるべきものだった。
「だるい。あたまいたい。ナワーブさぁん、肩揉んでぇ」
一部のサバイバーを除いて、ではあるが。
あまり物が置かれていない殺風景なナワーブの部屋に、ノートンが分厚い鉱物辞典を持って訪れたのは朝食後すぐのことだ。
2424ぽつぽつ。
雨だ。豪雨とは言わないが、しっかりと降り注ぐ雨粒は窓を強く叩いている。
空気中の湿度がほのかな雨の香りとなってナワーブの鼻をくすぐった。
ナワーブは雨が嫌いではない。恵みの雨という言葉があるぐらいだ。故郷では雨は生活水の元になるし、作物を育て、時には家族の語らいの時間を増やしてくれる。
もちろん戦場での雨は視界を遮り、体温を奪い、ぬかるんだ土は足跡を残すためあまり歓迎されないのだが。それはそれ、これはこれ。こと荘園では雨の日の試合はないため、なおのこと歓迎されるべきものだった。
「だるい。あたまいたい。ナワーブさぁん、肩揉んでぇ」
一部のサバイバーを除いて、ではあるが。
あまり物が置かれていない殺風景なナワーブの部屋に、ノートンが分厚い鉱物辞典を持って訪れたのは朝食後すぐのことだ。
moldale912
TRAININGENNゆるワンドロ企画さまによる第4回お題【あ、その表情好きだな】。どんどん短くなってきました。
ENN組ゆるワンドロ④(5/21)【あ、その表情好きだな】ノートンは食事が速い。
幼少の頃から鉱山で働いていた彼は、食事に時間をかける習慣がなかった。さして味に富んだメニューだったわけでもないことも理由の一つかもしれないが、味わうという行為をあまりしてこなかった。
今もまた夕食の時間に、食堂へ集う仲間たちの中で黙々と食事を進めている。当然マナー
イライやナワーブも決して遅い方ではないが、同じように食事を取りだして最初に皿の上を片付けるのはいつもノートンだった。
骨付きチキンの肉を歯で引きちぎり、こんもりとスプーンに乗ったマッシュドポテトを口で迎えに行くように食べ、マグカップに入ったコンソメスープで流し込む。
一口が大きく、咀嚼もそこそこにごくりと飲み込む姿は男らしい。
1964幼少の頃から鉱山で働いていた彼は、食事に時間をかける習慣がなかった。さして味に富んだメニューだったわけでもないことも理由の一つかもしれないが、味わうという行為をあまりしてこなかった。
今もまた夕食の時間に、食堂へ集う仲間たちの中で黙々と食事を進めている。当然マナー
イライやナワーブも決して遅い方ではないが、同じように食事を取りだして最初に皿の上を片付けるのはいつもノートンだった。
骨付きチキンの肉を歯で引きちぎり、こんもりとスプーンに乗ったマッシュドポテトを口で迎えに行くように食べ、マグカップに入ったコンソメスープで流し込む。
一口が大きく、咀嚼もそこそこにごくりと飲み込む姿は男らしい。
moldale912
TRAININGENNゆるワンドロ企画さまによる第3回で【バスルーム】。ほのぼのお風呂。最終的にナワサベはベッドで二人にマッサージ(健全)されます。ENN組ゆるワンドロ③(5/14)【バスルーム】荘園のバスルームは各自の部屋に設置されている。
猫足のバスタブと、その上部に設置されたシャワー。シャワーカーテンを挟んで洗面台とトイレがあり、その設計はどの部屋も変わらない。
バスタブはそれほど大きくもなく、大人が一人がゆったりと足を伸ばせるほどではないのだが、日々の疲れを取るには十分だった。
しかし、基本的に一人で使用することが想定されているこのバスルームに、一人、二人と人が増えれば当然疲れを取るどころではない。
誰もがそれを知っているはずなのに、何故ナワーブの部屋のバスルームには今ナワーブを含め三人の男がひしめいているのか。
「順番に入ればいいだろうに…」
「もうさっさと入って寝たいんですー…」
「ノートン、今日は疲れてるね」
2360猫足のバスタブと、その上部に設置されたシャワー。シャワーカーテンを挟んで洗面台とトイレがあり、その設計はどの部屋も変わらない。
バスタブはそれほど大きくもなく、大人が一人がゆったりと足を伸ばせるほどではないのだが、日々の疲れを取るには十分だった。
しかし、基本的に一人で使用することが想定されているこのバスルームに、一人、二人と人が増えれば当然疲れを取るどころではない。
誰もがそれを知っているはずなのに、何故ナワーブの部屋のバスルームには今ナワーブを含め三人の男がひしめいているのか。
「順番に入ればいいだろうに…」
「もうさっさと入って寝たいんですー…」
「ノートン、今日は疲れてるね」
moldale912
TRAININGENNゆるワンドロ企画さまによる第2回(『食事』『好きな衣装の組み合わせ』『この関係を何と名付けよう』『怪我をした』)から【怪我をした】。他キャラも少しだけ。ENN組ゆるワンドロ②(5/7)【怪我をした】ノートンが怪我をした。
そう聞いたイライはそれ以上の情報を求めることなく医務室へと走り出した。
その後ろから慌てたように待合室の方だよ、と声をかけられ、混乱する頭をよそに足は言われた方向へと進路を変更する。
待合室とはゲーム参加者が開始を待つ部屋の愛称であり、そして終了と共に帰還する部屋だ。
ゲーム中の怪我は荘園へと帰還すれば元通りになる。
つまり待合室での怪我は基本的に異常事態だ。
一体何が起きたのだろうか、怪我の度合いは、と焦る心を抑えとにかくイライは廊下を走った。さほど時間をかけず辿り着けば、待合室へと入る扉は開かれているにも関わらずその前で人だかりができている。
どうやら皆中の様子を見つつ、さっきまでゲームに出ていたはずトレイシーとアニーを質問攻めに合わせているようだった。
3486そう聞いたイライはそれ以上の情報を求めることなく医務室へと走り出した。
その後ろから慌てたように待合室の方だよ、と声をかけられ、混乱する頭をよそに足は言われた方向へと進路を変更する。
待合室とはゲーム参加者が開始を待つ部屋の愛称であり、そして終了と共に帰還する部屋だ。
ゲーム中の怪我は荘園へと帰還すれば元通りになる。
つまり待合室での怪我は基本的に異常事態だ。
一体何が起きたのだろうか、怪我の度合いは、と焦る心を抑えとにかくイライは廊下を走った。さほど時間をかけず辿り着けば、待合室へと入る扉は開かれているにも関わらずその前で人だかりができている。
どうやら皆中の様子を見つつ、さっきまでゲームに出ていたはずトレイシーとアニーを質問攻めに合わせているようだった。
GOMI7188
DONE🔞🔞🔞この先、かなり性的なお触りありです✋
続きは皆様の反応次第で公開していこうかなと思っております…っ!!
(ハピエン厨なので、もちろん結ばれる前提でこの回も書きました◎)
18歳以上の閲覧者様ですか? yes / no 4313
moldale912
TRAININGENNゆるワンドロ企画さまによる第1回お題(『植物』『こんなグッズ作りたいor欲しい!』『演繹の星・ニンフ賞』『秘密』)から【演繹の星・ニンフ賞】で探占傭(R18)です。着衣えっち。
※18歳以上でしたらyesをお願いします。 3726
GOMI7188
DONEsnbn⑧ Sonny side*
いくら歩いても思考がまとまらず、早々に自宅へついてしまった。
気が休まった時、きっと目が覚めて夜が明ければ、おそらく自分の行動に自分自身が驚き、後悔すると心のどこかでは感じ取っているはずなのに、今は全てがどうでもよくて、早く答えが知りたかった。
───いや、答えって?
何の答え? ...よく分からない。
すこぶる体調が悪いせいで、身体の奥から滲み出る額の汗をひたすら片手で拭って、よく分からず連れてきた人物のことを考える。
...きっとこの人物が、答えを知っているような、そんな気がした。
* * * * *
「えと...、僕はどうしてたら...」
まだ誰も招き入れた事のない自室のリビングの隅に、行き場がなくウロウロする猫のように目を泳がせて、困惑しきった顔でアルバーンが問いかけてきた。
2626いくら歩いても思考がまとまらず、早々に自宅へついてしまった。
気が休まった時、きっと目が覚めて夜が明ければ、おそらく自分の行動に自分自身が驚き、後悔すると心のどこかでは感じ取っているはずなのに、今は全てがどうでもよくて、早く答えが知りたかった。
───いや、答えって?
何の答え? ...よく分からない。
すこぶる体調が悪いせいで、身体の奥から滲み出る額の汗をひたすら片手で拭って、よく分からず連れてきた人物のことを考える。
...きっとこの人物が、答えを知っているような、そんな気がした。
* * * * *
「えと...、僕はどうしてたら...」
まだ誰も招き入れた事のない自室のリビングの隅に、行き場がなくウロウロする猫のように目を泳がせて、困惑しきった顔でアルバーンが問いかけてきた。
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DONEsnbn➆ Alban side*
サニーは最初から僕ではなく、後ろに立つジェイを話しかけていたらしい。
「───ちょっと、ジェイ!? なんのつもり?」
言い逃れの余地はないというのに、ずっと余裕の笑みを絶やさないジェイに向かって荒々しく声を張り上げ、僕はジェイを睨みつける。
何をした?
───命に関わることかも知れない。
何故そんなことを?
───僕の変化に気づいて、腹いせに?
いずれにしても、僕のせいじゃないか。
...でなきゃ、こんなことにはなってはいない。こんな終わり方は嫌なのに、得体も知れない事に対してどう責任を取ったらいいか分からず、何も答えないジェイに背を向けてサニーの前へ駆け寄る。
とても面積の広いバルコニーのため、普段アイクが使用しているらしい読書スペースにあるガーデンチェアに、おぼつかない足取りのサニーを誘導して座らせる。
2503サニーは最初から僕ではなく、後ろに立つジェイを話しかけていたらしい。
「───ちょっと、ジェイ!? なんのつもり?」
言い逃れの余地はないというのに、ずっと余裕の笑みを絶やさないジェイに向かって荒々しく声を張り上げ、僕はジェイを睨みつける。
何をした?
───命に関わることかも知れない。
何故そんなことを?
───僕の変化に気づいて、腹いせに?
いずれにしても、僕のせいじゃないか。
...でなきゃ、こんなことにはなってはいない。こんな終わり方は嫌なのに、得体も知れない事に対してどう責任を取ったらいいか分からず、何も答えないジェイに背を向けてサニーの前へ駆け寄る。
とても面積の広いバルコニーのため、普段アイクが使用しているらしい読書スペースにあるガーデンチェアに、おぼつかない足取りのサニーを誘導して座らせる。
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DONEsnbn⑤ Alban side*
「...全く。隙があるから付け入られるんだぞ?」
「待って。アルバーンは悪くないでしょ」
遅れて合流したファルガーと浮奇には話さなければと、元窃盗仲間であるジェイがいきなりこの場に現れた事を告げた。
三人は、せっかくの楽しい場を壊さぬようにと声のボリュームを極力下げ、ダイニングキッチンの壁際でコソコソと談義を始めた。
現在ジェイは、ルカやシュウ達とボードゲームをしているので今が絶好のチャンスだと思い、二人を呼び寄せたのだ。
「でもほんと、知らない男に肩組まれてる姿みて、驚いちゃった」
「ああ。お前がああやって誰かに触れられることを許している姿には驚いた」
「いや、まぁ...ジェイとは結構長い付き合いだったから...」
2363「...全く。隙があるから付け入られるんだぞ?」
「待って。アルバーンは悪くないでしょ」
遅れて合流したファルガーと浮奇には話さなければと、元窃盗仲間であるジェイがいきなりこの場に現れた事を告げた。
三人は、せっかくの楽しい場を壊さぬようにと声のボリュームを極力下げ、ダイニングキッチンの壁際でコソコソと談義を始めた。
現在ジェイは、ルカやシュウ達とボードゲームをしているので今が絶好のチャンスだと思い、二人を呼び寄せたのだ。
「でもほんと、知らない男に肩組まれてる姿みて、驚いちゃった」
「ああ。お前がああやって誰かに触れられることを許している姿には驚いた」
「いや、まぁ...ジェイとは結構長い付き合いだったから...」
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DONEsnbn④ Alban side*
ーッ、ーッ
昨日は緊張と不安で全く寝付けなかったというのに、鬱陶しいほどスマホは鳴り続け、意識を呼び起される。
「んにゃ... んんんん」
キラキラした陽射しがカーテンの隙間から入り込み、眠りをさらに妨げるようにアルバーンの顔を照らす。
ベッドの上で思い切り全身に力を入れて伸びをすると年季の入ったスプリングマットレスがギシギシと音を立てた。
ーッ、ーッ、ー...
ようやく鳴り止んだスマホを恐る恐る手に取り、ホーム画面を確認すると、もう連絡を取り合いたくない相手からの着信であることを確認して、深い溜息をつく。
「ん~... 困ったな。」
ベッドから起き上がり、洗面台でバシャバシャと顔を洗う。
2621ーッ、ーッ
昨日は緊張と不安で全く寝付けなかったというのに、鬱陶しいほどスマホは鳴り続け、意識を呼び起される。
「んにゃ... んんんん」
キラキラした陽射しがカーテンの隙間から入り込み、眠りをさらに妨げるようにアルバーンの顔を照らす。
ベッドの上で思い切り全身に力を入れて伸びをすると年季の入ったスプリングマットレスがギシギシと音を立てた。
ーッ、ーッ、ー...
ようやく鳴り止んだスマホを恐る恐る手に取り、ホーム画面を確認すると、もう連絡を取り合いたくない相手からの着信であることを確認して、深い溜息をつく。
「ん~... 困ったな。」
ベッドから起き上がり、洗面台でバシャバシャと顔を洗う。
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DONEsnbn③ sonny side*
「いらっしゃいにゃせー!」
大通りから少し離れた路地裏で、気前のいい老夫婦が営む『ベーカリー ボナペティ』は、この町で暮らす者ならば一度は食べたことがあるであろう、常連客の多いパン屋だ。
しかし、何故か最近は新規の客層が増え、やけに賑わっている。
そしてこの賑わいの正体は、見覚えのある『野良猫』が原因であった。
最近、昼前には売り切れてしまうほど人気になってしまった『ネギ胡椒パン』をトレーに乗せて一安心したサニーは、笑顔で夫人たちと会話をしながら会計をしているアルバーン・ノックスを目で追い、不満げに溜息を深くついた。
以前、友人の知人という腐れ縁で付き合いのあるファルガーと浮奇に紹介された(といっても挨拶しただけ)彼とは、あれ以降この町ですれ違ったことすらなかったはず
1387「いらっしゃいにゃせー!」
大通りから少し離れた路地裏で、気前のいい老夫婦が営む『ベーカリー ボナペティ』は、この町で暮らす者ならば一度は食べたことがあるであろう、常連客の多いパン屋だ。
しかし、何故か最近は新規の客層が増え、やけに賑わっている。
そしてこの賑わいの正体は、見覚えのある『野良猫』が原因であった。
最近、昼前には売り切れてしまうほど人気になってしまった『ネギ胡椒パン』をトレーに乗せて一安心したサニーは、笑顔で夫人たちと会話をしながら会計をしているアルバーン・ノックスを目で追い、不満げに溜息を深くついた。
以前、友人の知人という腐れ縁で付き合いのあるファルガーと浮奇に紹介された(といっても挨拶しただけ)彼とは、あれ以降この町ですれ違ったことすらなかったはず
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DONEsnbn② Alban side*
───数ヵ月後。
彼は周りからどんな視線で見られいるか、全くもって気づいていない。
憧憬、恍惚、劣情、恋慕...
どれだけ想っていても、彼には届かず、水と油のように弾かれてしまう。
「ブリスコーさん...」
彼の後ろ姿を遠目に眺め、アルバーンはポツリと呟く。
どこで生まれたかも知れない生い立ちのアルバーンは、行く当てもなくこの町で盗みを働き、ただ闇雲に生きていた。
ついこの間まで小汚い野良猫だったのだが、数カ月前、ひょんなことから恋の蕾を咲かせてしまったのだ。
自分はきっと、どんなに恍惚な眼差しを贈ろうとも見向きもされない大勢の道行く人よりも、『可能性』なんてあったものではない。
彼を想うことすら僕にとってはおこがましく、罪のように感じる。
1726───数ヵ月後。
彼は周りからどんな視線で見られいるか、全くもって気づいていない。
憧憬、恍惚、劣情、恋慕...
どれだけ想っていても、彼には届かず、水と油のように弾かれてしまう。
「ブリスコーさん...」
彼の後ろ姿を遠目に眺め、アルバーンはポツリと呟く。
どこで生まれたかも知れない生い立ちのアルバーンは、行く当てもなくこの町で盗みを働き、ただ闇雲に生きていた。
ついこの間まで小汚い野良猫だったのだが、数カ月前、ひょんなことから恋の蕾を咲かせてしまったのだ。
自分はきっと、どんなに恍惚な眼差しを贈ろうとも見向きもされない大勢の道行く人よりも、『可能性』なんてあったものではない。
彼を想うことすら僕にとってはおこがましく、罪のように感じる。
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DONEsnbn① sonny side*
「...はぁ。早く帰ってさっさと寝たい」
───ワイワイ、ガヤガヤ。
この家に顔を出すときはいつだって賑やかだ。
しかし今日は一段と耳を塞ぎたくなるほど盛大に盛り上がっていて、バルコニーへ抜け出して夜風に当たっていても、ピリついた気持ちが収まることはなかった。
「よぉ、おまわりさん」
おちゃらけたあだ名でたまにそう呼んでくる男は一人しかいない。
「ファルガー...と、浮奇。」
目の前の男の背後からひょっこりと現れ、妖艶でいてどこか掴みどころのないもう一人の男は、自分と目が合うとにっこりと微笑んでみせた。
「How's it going つれない人」
二人は何か自分に用があるような顔をしており、
いかにも俺たち〝デキてます〟という雰囲気を隠しもせずシャンパングラスを片手に、もう片方の手で
1755「...はぁ。早く帰ってさっさと寝たい」
───ワイワイ、ガヤガヤ。
この家に顔を出すときはいつだって賑やかだ。
しかし今日は一段と耳を塞ぎたくなるほど盛大に盛り上がっていて、バルコニーへ抜け出して夜風に当たっていても、ピリついた気持ちが収まることはなかった。
「よぉ、おまわりさん」
おちゃらけたあだ名でたまにそう呼んでくる男は一人しかいない。
「ファルガー...と、浮奇。」
目の前の男の背後からひょっこりと現れ、妖艶でいてどこか掴みどころのないもう一人の男は、自分と目が合うとにっこりと微笑んでみせた。
「How's it going つれない人」
二人は何か自分に用があるような顔をしており、
いかにも俺たち〝デキてます〟という雰囲気を隠しもせずシャンパングラスを片手に、もう片方の手で