ありえないほど近い 掠奪後の馬鹿騒ぎも落ち着いた朝方。昇る朝陽に目を焼かれながら、瘴奸は目を覚ました。昨夜は酒を飲んでいるうちに、いつの間にか眠り込んでいたらしい。
「あ、起きたんすか」
その声に目を向ければ、すぐそばに死蝋がいた。身を丸めて眠っていた瘴奸の背に背を預けるようにして、死蝋は座っている。
瘴奸は目を瞬いて死蝋を見た。死蝋の浅緑の直垂の袖が裂けている。血で汚れてはいないから、掠奪の最中にどこかに引っ掛けて破いたのだろう。
瘴奸は指を伸ばして破けた袖を摘んだ。まだ新しい直垂だというのに、随分と派手に破いたものだ。
すると死蝋はおもむろに直垂を脱ぎ始めた。
「頭、これ破れちまった」
「転がってる死体から新しいのを選んでこい」
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