銭 将監は子供の手を引いて歩いていた。京の町外れのことである。寒々としていたが晴れた朝で、風は乾いた土埃を舞い上げていた。
その子供は、藁のように痩せた体をしていた。袖のほつれた小袖を纏い、足元は裸足である。顔は垢にまみれ、正気のない顔をしていた。喋りかけても口をきかず、自然と子供の足は遅れ、将監に引きずられるように歩いている。将監は家畜でも扱うように、その手を引いた。
「おい、さっさと歩かないか」
子供は何も言わなかった。ただ、黙って将監の手に従って歩いている。
とある店の前で、将監は立ち止まった。裏路地にある、看板も何もない店だった。将監も話は聞いていたが、来るのは初めてだった。
薄暗い店内で、すぐに店主と思しき男が出てくる。奥の板張りの台の上に、幾人もの子供たちが並んでいた。皆が縄で腰と腕を繋がれている。子供たちは誰もが怯えと諦めとがないまぜになった目をしていた。将監に隠れるようにしている子供が息を呑んでいるのがわかる。ようやく自分が何のためにここへ連れてこられたのかを悟ったようだ。
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