倒幕しなかった1340年 その3 いっそ清々しい思いがして、常興はゆっくりと息をついた。吹き飛んだ木片が軌道を描きながら落ちていく。派手な音と共に吹き飛んだ砦を遠目に見ながら、これで鎌倉に戻れると常興は微笑んだ。
「兄上……いくらなんでもやり過ぎでは」
「悪党共に手加減などいらぬ」
大急ぎで信濃に帰ってきた常興と新三郎であったが、たった三日で常興は悪党共の根城である砦を見つけ出して、爆破した。爆薬は夜のうちに仕込んでおき、朝になって見張りが欠伸をしながら出てきたところを、吹き飛ばしたのだ。
瘴奸とまともに斬り合っても勝機はない。であれば、瘴奸が思いもよらない方法を取るしかなかった。元の世界で瘴奸とは少なからず関わりがあった常興は、瘴奸が武芸や兵法に通ずる反面、新しい兵器などに疎いと知っていた。
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