びっくりした……。南風はふぅと大きく息を吐いた。
あっと思った時には遅かった。辛うじて全力での衝突は免れたものの、首から頭へ衝撃めいた感覚が走り抜ける。
「すみませ……」そう言いながら顔を上げたところで南風は固まった。あれほどに焦がれていたひとの目。驚いて見開いたその目が、自分を見下ろしている。
頭は一瞬で真っ白になっていた。しばし固まったのち、思わずついてしまった腕を風信機長の体から離す。向こうも急いでいたらしく、言葉少なく反対方向へ別れた。
取ってきた報告書を渡しがてら職員にそれとなく聞く。風信機長は他の機長の代わりで急遽呼ばれたらしい。
「出会いがしらに会ったの?」
勘のいい同僚に言われ無言で頷く。
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