少し霞んだ青空に、白に近い薄桃色の花が揺れる。
「綺麗ですね」
眩しそうに見上げるその横顔に、風信も目を細める。
フライト先の空港の隅に綺麗な桜の木が植わっている場所があるらしいので、折り返し便までの間に見に行きませんか? そう南風に聞かれて断るわけはなかった。
仲間に聞いた穴場だと言っていたが、確かに立派な枝ぶりに満開の花をつけた木々は見事なのに、人もおらず、静かに花が揺れている。
「写真だと色が上手くうつらないですね」
花をつけた枝の間に腕を伸ばし、スマホを掲げながら南風が残念そうに言う。花弁の後ろで、南風の袖口の黄色い三本線が見え隠れする。
「これだけ技術が進化しても、自然にはまだ叶わないよな」
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