アリアドネの糸 部屋の中央に置かれた小さなソファーに腰を下ろす。
都内から電車で十五分。職場に近い事だけが利点の六畳一間のこの部屋に暮らし始めて、もう随分と月日が経っていた。
帰宅して早々に風呂に入ってから纏ったジャージは、高校時代に着ていた年代物だ。
中々頑丈だから捨てられずに寝巻きとして使い続けているが、裾の擦り切れ具合を見る限り、もう限界なのかもしれない。
生地の傷み具合を見ていると、『いつまでも夢にしがみつくな』と言われているような気がした。
そういえばサッカーボールに触れなくなってからも、かなりの年月が経っている気がする。
あんなにも、サッカー一筋だった筈なのに、案外諦めてしまえばそんなモノなのだろう。
4310