もうブレーキはかけられない 一度目は、もういつだったか正確に思い出せないほど前。唐突すぎる質問に彼も驚いたのだろう。答えるまで少しだけ間があった。
「そんなことあるわけない」
否定は確信に満ちていた。
君はおかしなことを考えるねと、向けられること自体珍しかったせせら笑いが耳に触れた瞬間それはもうどっと汗をかいた。押し寄せる後悔の波に攫われながら聞かなきゃよかったと悔やみに悔やみ、それなのに数ヶ月後再び同じ言葉を口に出した自分は、他人からは馬鹿に見えるかもしれない。ただこれだけは言い張らせてもらいたいが一度目を忘れたうえでの二度目の質問というわけではなかった。自分にしては珍しく脳はあの日のやり取りも嫌な気分もとても正しく記憶していたのだ。
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