味覚について スッと視界に白い手が割り込んできて、そのままランチボックスの中身をつまんだ。
「あ」
「もらうぜ」
いいよ、と答える前にそいつはゼロの口の中に放り込まれた。咀嚼する。食べながら、オレの隣に腰を下ろす。
「……うん、なるほどな。どうした? やけにまじまじと見つめてくるじゃないか。もしかしてもらっちゃ悪かったか」
「いや、君がものを食べているのをあまり……見ないなと思って」
「合理的じゃない」
「そうだね。君はそう言うと思った」
昼時の休憩所の食事スペースはハンターベース職員のヒューマン、レプリロイド、両者で賑わっている。近くに軽食の売店も併設されているが、ここを利用するのはどっちも全体の半分ぐらいだ。ヒューマンには安価で便利な流動栄養食が流通しているし、レプリロイドならエネルギーステーションを利用する方が早い。それでもここで食事を摂っている約半数のオレたちは、要するにそういう娯楽を休憩中に楽しんでいる、と。これは趣味の問題だ。で、そういう趣味のなさそうなゼロ隊長が珍しくここに来ている。なので少し目立っている。
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