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    masasi9991

    @masasi9991

    妖怪ウォッチとFLOとRMXとSideMなど
    平和なのと燃えとエロと♡喘ぎとたまにグロとなんかよくわからないもの

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    POIPOI 420

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    DONE初夏の土ガマ初夏


     暑い日が続いている。若い者らはやれ扇風機だくうらあだとすぐに得体のしれない道具に頼りたがるが、暑くはあっても暦の上では未だ初夏。そのようなものがなくともまだ我慢ができるはずではないか。さしあたって伝統的に庭に打ち水、窓には風鈴、団扇を持って、涼むべきであろう。
     昨年、遅い夏の終わり、いつまでも縁側の軒先へ吊るしてあった風鈴は、どこへ片付けただろうか。ふと考えてみると思い出せぬ。とはいえそこの戸棚の奥にでも、仕舞ってあるに違いない。
     もう昼近くになるというのに灯りも付けぬままでいる寝床がそろそろ蒸し暑くなってくる。縁側の障子越しに入る陽が、暑いのだ。寝床は薄暗いままなのだが。障子を開いて、風鈴を吊るすべきであろう。風がいくらか吹き込めば変わるはずだ。急に思い立って寝床を出る。
     這って、出る。出ようとする。しかし、畳の上まで抜け出たところで、もう動けない。
    「どこへ行くんだよ。このおれを差し置いて」
    「どこへも行かぬ。ここは吾輩の座敷だ」
    「嘘をつけ」
     と、珍しく……そう、案外これには珍しく、きかん坊のような駄々をこねる。
     寝床を出ていこうとした足首を何かに掴まれ、そ 1008

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    DONEキャンディー食べてるレクセル前時代の嗜好品


    「おはえり。おひょかったね!」
    「あん?」
     変な声を出してやがる。そもそもここはオレの部屋だ。オレの居ない間に何をやっていたんだ。色々言いたいことはあったが、いちいち口に出すのも面倒だ。
     くるっと振り向いたアクセル口に、細く白い棒が咥えられている。
    「どうした、それ」
    「ねへ、アーマーぬいれよ」
    「口ン中に物入れたまま喋るなよ。と、お、おい」
     いつものことだがロクに人の話も聞いてねぇ。グイグイこっちに来てベッドの方へ詰められ、座らされる。そのまま装着してたアーマーを次々と解除され、身ぐるみを剥がされた。
     床にアーマーパーツが次々と転がっていく。
    「誰が片付けると思ってんだ」
    「らってじゃまなんだもん。あひた、片ひゅけたらいいよ」
    「明日になったらまた装着するんだよ。しょうがねぇな。で、これは?」
    「ん」
     膝の上に乗ってきたアクセルの、口からはみ出している白い棒を指で下から持ち上げる。するとアクセルは口をとがらせた。唇の間からどうも甘い匂いがする。
    「まひでおみへがれてたからかった。ひゅらむの子たひで流行ってりゅって。あえないよ!」
    「いらねえよ」
     棒を引 1337

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    DONEキャンディーひとつでいちゃいちゃしてるデググラキャンディーとほっぺ


     さっき妹のロッタナからもらったキャンディーを口の中に放り込んでから、キミの顔はさらに幸せでいっぱいになった。口の中でキャンディーが右に左に転がっている。横で見てるだけで、もごもご動いている唇や頬を眺めているだけで、こっちまで楽しくなってくる。キミは今日も幸せそうだ。
    「キャンディーを食べているだけでかわいいからキミはずるいな」
    「ンン?」
     と返事をしてから丸い目をして少し慌てて、口元が動いて頬が丸く膨らむ。今はそこにキャンディーが入っているらしい。とてもわかりやすい。
    「ム……なんだって?」
    「なんでもないさ。いつものやつだ」
    「ん?」
     頬にキャンディーが入ったままじゃ喋りにくそうで、ちょっと舌っ足らずになっている。困ったな。こんな些細なことでも、おれは今日も幸せだ。
    「リスみたいになってるぜ」
     膨らんだ方の頬を指でつつくと、キミは大いにくすぐったそうにぎゅっと目を閉じる。それからまた口がもごもご動いて、キャンディーを口の中で転がし始めた。
     またこっち側の頬に来たらつついてしまおうかな。狙いをつけて人差し指を立てていると、キミはそれを不思議そうに眺め 504

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    DONEなにかと戦っていた土蜘蛛さんと大ガマさん 瞬きほどの間が、あったろうか。息を呑むほどにも長閑な場面でもなかったろう。しかし眼前に影が落ちた刹那に、己は瞬きを繰り返し、息の詰まるほどの焦燥を感じた。
     長く、長く感ぜられた刹那の合間、吾輩の前へ躍り出たその身体が引き裂かれ、真っ赤な血の弾け飛ぶまでのその刹那……そして次の瞬間には血なまぐさい匂いを胸いっぱいに吸い込み、腹の内より焔の如く沸き起こった衝動に任せ、己は術を放っていた。血を流し崩れ落ちる彼奴の身体を押しのけつつ。
    「感謝しろよ。今のは半分、おれの手柄だぜ」
     やがて四辺に静寂が訪れて、怒りを以って倒れ伏した顔を覗き込むと、先手を打ってそのようなことを言う。蒼白の顔で軽口を叩く。
     頼んだ覚えもない。見縊るな。そも、吾輩の前に出るなど思い上がりも甚だしい。
     最後の術を放ったときより胸に昂り続ける炎のままに、いくつか言葉が浮かんだものの、実際は口から出ずに引っ込んだ。
     彼奴め、言うだけ言ってスッと両目を閉じている。
     文句は引っ込んだというより喉に詰まって行き場をなくした。それより慌てて彼奴の隣へ膝をついた。
     切り裂かれ襤褸になった派手な小袖の胸元へ、手を差し伸べ 649

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    DONEエックスとアクセルがなんか喋ってるゼロクス花のこと


     朝、誰よりも早い時間にエックスがハンターベースに出勤してるのは特に珍しくもないことだけど、今日はその手にちょっと珍しいものを持っていた。
     多分それに必要なのは水と太陽の光と酸素と電池……あとは、伝統的には花瓶かな? でもそんな骨董品がこんなところにあるわけないから、エックスはしばらくオペレーター室のあちこちを探し回ったあと、結局特にいいものが見つからなかったらしく自分がいつも使ってるガラス製のコップに水と電源を突っ込んでいた。
    「そのコップ、割れちゃったりしないかな?」
    「大丈夫じゃないか。何度か床に落としたりしてるけど、意外に丈夫だ」
    「へー、エックスもそんなそそっかしいことあるんだ」
    「緊急で出撃要請が出たりすると、時々な」
     エックスは少し照れくさそうにそう言った。でもボクがハンターベースに来てからは、そこまでそそっかしいエックスの姿は見たことがない。結構昔の話なんだろうか、と昔っぽいデザインのガラスを見て想像する。
     それにしてもシステムの電源からコードを拝借して水の中に直接ケーブルを突っ込んでるから、なんだか見た目にはやっぱり危なっかしい。わざわざ有線で電力 1582

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    DONE世間話と膝枕の土ガマつらつらと 2021-05-26
    「で、それで見たこともねえ奴らが、ビルの上に居てよ……なんでオレのようなのをこんなとこまで呼び出した、って聞いたら両手合わせて拝み始めるんだよ。こいつは参ったなと、なにか勘違いしてやがると思ってこっちの事情を話してみようにも、ああいう奴らは聞く耳持たねえのなんのって……で面倒になって置いて帰っちまおうかとも思ったけど、まだ足は生えてるつもりらしくて、ほっぽっておいたら延々とここに居座って地縛霊にでもなるのかなとさ……」
    「ふむ、わからん。お主はいったい何の話をしておるのだ」
    「土蜘蛛さんが訊ねたんじゃねえか。あの庭に増えた石の話だよ」
    「持ち帰ったのか? 物好きな」
    「放っちゃおけないのが、どうもオレの性らしいや。ところがさ、連れ帰ったはいいものの、奴らみんな呪われてたんで……それで蛙にでも縋ろうってんで……まあ奴らオレが蛙とは知らんでいたらしくて……」
     話してる途中に眠くなってきて、あくびをひとつ、と寝返りを打とうとした。ところがこの枕があんまり広くもないモンだから、うっかり間に落っこちそうになる。
     枕の上に伸びた身体のてっぺんの、堅苦しっく据え 1821

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    DONEキスの日のデググラです『キス』の日


    「グランツ、今日はキスの日らしいぞ!」
     急に思いもよらないことを言われて、思わずそこに立ち止まった。隣を歩いていたキミの顔を見上げる。キミはそのままトコトコと先に歩いていってしまった。道の曲がり角まで行ってから、「あれ?」と首を傾げて立ち止まったキミを、おれは慌てて追いかけた。
    「どうしたんだ? 急に立ち止まったりして。残像かと思ったぞ」
    「ぷはっ。ふふ、だってキミが急にそんなことを言い出すからさ」
    「そうかそうか、やっぱりおまえも今日がキスの日だとは知らなかったんだな」
    「祝日とかではないしな。どうする、デグダス? 今日の晩飯は魚にするか」
    「魚?」
     また隣に並んで歩き出したデグダスは、顎に手を当てて首をひねる。あんまりひねる過ぎると前が見えなくなりそうで危ないな、と顎に当ててない方の手を握って、手をつないで歩くことにした。
    「ほら、海で釣れる鱚のことだ。違ったか?」
    「ああ! なるほどなるほど! キスと鱚……うぷぷっ。違うぞぉ、キスと言ったら、いつもおまえとしている……ムフフ。ムフフな方らしい! おれも今日知ったんだがな。それにしてもグランツがうっかりしている 849

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    DONEすごくいちゃいちゃしているデググラおいしいものをたくさん


     大きな口をモグモグと動かして、大きな一口分を食べている。閉じた唇も、モグモグ、と一緒に動いていて、その唇の端は見ているうちにニコニコと嬉しそうな形に変わっていった。
    「うまい! これはうまいぞ、グランツ!」
    「ん」
     食べ終わってすぐに、嬉しそうな一言。キミがおいしいものを食べている瞬間は、ただ見てるだけのおれも幸せを感じてしまう。
    「これこれ。食べてみてくれ! あーん」
     キミは自分が注文した皿の上から、ローストされた大きな塊の肉をナイフとフォークでちょっと不器用に切り取っておれの前に差し出した。
    「ふふ。あーん」
     楽しくなって笑ってしまう。キミが早く早くともどかしそうにフォークを揺らす。もっと笑いそうになるのを我慢して、口を開く。キミはそっと優しい手付きで、おれの口の中に料理を入れた。
    「もぐもぐ。ちょっと硬いからよく噛むんだぞ。もぐもぐ」
     もぐもぐ? キミがそれを言うのか?
    「ンフッ、んっ……ふ、ふふ……っ。はあ。あはは。おいしいな! でも食べてる途中だってのに、そんなに笑わせないでくれ!」
    「むむ? おれが笑わせてしまったのか?」
    「ああ。とっ 1165

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    DONEいつもの土ガマかくれんぼ


     どうせそんなところであろうと予測の通りであった。気配が感ぜられたなどといった理屈のあることではなく、予感と言えば聞こえはよかろうが、それすら些か言葉が上等過ぎる。どうせ、だ。呆れを含んだ慣れた感情である。どうせそんなところであろう。して全くその通りであり、その影を薄明るい蔵の中にみつけた瞬間に、一つため息すら漏れた。
    「あれ? いつ来たんだよ」
     地べたにあぐらをかいたそれが、振り返ってノンビリと言う。明るくよく弾む声は薄明るく静かな蔵のあちこちに跳ね回って響き、さながら泉のさざなみのようであった。止まった水面の透明なそこに、ぴょんと小さな蛙が飛び込んで、沸き立たせたような。
    「吾輩の気配にも気付かぬほど、宝を物色するのに夢中になっておったのか」
    「いつまで経ってもあんたが来ねえから、今日はどこかにお出かけかと思って油断しちまった。随分遅かったじゃねえか。そっちこそ、おれが来たのに気付かないなんてな」
    「わざと忍んで来たのではないのか」
    「それでもあんたはどうせ気付いてくれると思ってさ」
    「曲者が入り込んだことには気付いてはおったが、どうせお主であろうから急ぐこともな 1400

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    DONEお休みの日の朝のデググラおはようのジレンマ


     今日は日曜日だ! と、いうことにベッドから飛び起きてカーテンを開いた瞬間に気がついた。
     日曜日。二階にある寝室の窓から見下ろすお休みの日のビレッジは、やっぱりいつもと違うのんびりかつワクワクした空気があるのだ。それが実際なんなのかはおれ自身よくわからんが、とにかく今日が日曜日だと思い出した瞬間にワクワクした。
     二度寝がうれしい日曜日の朝だ!
     仕事の朝より少し高い太陽からの光を顔面にいっぱいに浴びたのち、くるっとベッドの方へ向き直る。目は醒めた。でもやっぱり、二度寝だな。なにしろベッドの中にはまだグランツがいる。
     お仕事だと思って急いで起こさなければと慌てていたけど、その必要はなくなったというわけだ。
     窓を開けて、既に明るくなった寝室で再びベッドに戻る。すごいぞこれは。たいへんな背徳だ。ブランケットをめくってさっきまでと同じ場所に潜り込むと、太陽のホカホカにも似てまだ暖かだ。おれがここで寝てたからか? それとも、グランツが隣でまだスヤスヤしているからか?
     グランツはこっち向いて寝ている。お布団に戻ったおれは、ごそごそ動いてどんどん近づく。あんまりごそ 1153

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    DONE事後の土ガマ仕返し、甘噛


     よくある話だが、こういうときにそそくさと寝床を出て身支度を始める野郎というのはまったく薄情だ。寝床に横たわったまま、ぼんやりとその背中を眺めながら考える。見慣れたもんじゃある。だから今更、薄情者めと本気で恨んでいるわけじゃない。がしかし、薄情な野郎だとは思う。おそらく生来の意地っ張りのために、そんな素振りを見せているんだろう。つまり己の未練を見せるのが恥ずかしいってことだ。別に当人がそんなことを白状したわけではないが、おれはちょっと奴には詳しいから、きっとそうだとわかっている。
    「土蜘蛛」
     すっかり身支度を終えちまう前に、着物を羽織ったその背中を何とはなしに呼んでやる。
    「まだ帰るなよ。寂しいぜ」
     引き止めりゃ歓ぶだろう。歓ばせてやるのは、やぶさかではない。引き止められたくて薄情なフリをしているのかと思えば、可愛い野郎だとも思う。面倒な野郎でもあるが。
     なんも言われずともそこに寝てりゃいいだろうに。
     本音をいえばそうだけど、言えば喧嘩になるし、喧嘩をするほどの余力も残っちゃいない。
     ふっと奴は振り返る。もったいぶって、時間をかける。傷跡の浮いた背中は生白い 2165

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    DONEお昼寝しながらいちゃいちゃしてるデググラお昼寝と夢のこと


     昼食も終わって、キミがウトウトし始めたのが十分ぐらい前だろうか。確かに今日はいい天気で絶好の昼寝日よりだと思う。おれは午前に使った道具の手入れをしたかったからキミと一緒に昼寝はしなかったけど、隣ですやすや眠っているキミの寝息や寝言を聴いてるのはかなりいい気分だった。おかげで作業が捗る。
     もうそろそろ、午後の採掘に出かけようかな。手入れも終わって腹ごなしも充分だ。だけど隣のキミはまだ気持ちよさそうに寝ている。寝入って十分ぐらい、それで起こしちゃかわいそうな気もする。
     起こすか、起こすまいか、悩みつつ。でもすぐ起きるかどうか、少し頬に触ってみて確かめる……なんて、そのぐらいはいいかな? ただのイタズラだけど。
     が、その前に道具をいじって汚れた手を洗った方がいい。採掘してるとどうせ手も顔も泥まみれになると判っていても、こんなに気持ちよさそうに寝てるキミの顔をあえて汚すのも気が引けるし。すぐ近くに小川が流れている。
     そして立ち上がって、川の方へと向かったときだった。
    「うん、大丈夫だ!」
    「あれ? 起きたのか?」
     背後でデグダスが大きな声を出した。振り返って見 1813

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    DONEレクセルいちゃいちゃしてるだけ大作戦


     その顔を下からじっと見上げると、少し意外そうに目を見開いた。でもなんにも言わない。それじゃちょっと違うんだよな。
     じゃあ次は、もっと顔を近づけてみる。勢い付けすぎて、鼻がぶつかる。……その前にレッドはベッドの上に座ったまんま、後ろにちょっと下がった。
    「なんで逃げるの」
     と聞いたら、今度はフッと鼻で笑った。
     む。
     そうじゃない。なかなか計算通りにいかないな。もっと近づいて……でもまた逃げそうだから、押さえつけとかないと。動けないように、膝に跨って乗った。
     それからさらにぐいっと顔を近づける。ギリギリまで背伸びをする。そしたらレッドは後ろに軽くのけぞった。でももう動けないし、後ろは壁だ。もっとのけぞったら倒れて壁に頭ぶつけちゃう。
     もうちょっと。レッドを追いかけて前のめりに背伸び。いや、近づくだけじゃダメなんだ。
    「何がしたいんだ」
    「あ、喋った」
     と思ったものの口を開けてたのは一瞬で、次の返事は肩をすくめるだけだった。
     全然うまく行かないぞ。次はどうしよ? 考えてる間に前のめりになりすぎて、レッドの胸の上に倒れてしまった。
    「口開きっぱなしだ」
    「んに」
    2742

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    MAIKINGなんかそういう割と平和な時代のゼロクス
    続くかも

    <性行為同意書アプリ>の続き(前日譚)みたいな感じ
    https://poipiku.com/955041/4131800.html
    初めての同意書


    □1
     腕時計型のウェアラブル端末に、数日前に支給されたアプリを立ち上げた。白いバックグラウンドに飾り気もなく日付と時間が表示され、アプリタイトルが右下に小さく浮き上がる。少し待つと、青いライトで空中に入力欄が照射されるようになっている。この時間差が考え直させるために重要らしい。ということまでは把握している。だけどそれも待たずに端末の表示を落とした。
     ため息、あるいは深呼吸。ドアの前で暫く突っ立っていた。踏ん切りがつかない。
     もういちど端末を胸の前に持ち上げて、表示を開く。突然青白い光で空中にウィンドウが表示され、慌ててアプリを閉じた。
     ついさっき、アプリを終了させずに端末を閉じたことも忘れていた。なんだかいっぱいいっぱいだ。誰かに見られちゃいないだろうか、遅れて不安になってあたりを見回したが、ひとまずマンションの廊下には誰も居なかった。平日の昼間だし、そんな心配はいらないか。イレギュラーハンターの休日が不定期で、こんなときには逆に助かる。
     それにしてもこいつをどうすりゃいいんだろう。政府に戸籍登録している一定年齢以上の全レプリに支給されたこのアプリだ。支給 1988

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    DONEおやすみ前のデググラすぐに眠くなる


     キミはあっという間にいびきを立てて眠り始めた。おれはまだ眠れそうにない。いつものことだけど、まだ身体も心も、ドキドキして息が上がって落ち着かない。
     きっとキミも同じように興奮して疲れているはずだ。額に汗が滲んでいる。身体のどこを触っても、普段よりも、なにもしていないときよりも熱く、汗ばんでいる。寝息だけが穏やかだ。口を大きく開いて時々いびきを立てて。その無防備なかわいい唇にしゃぶりつきたくなるけど、起こしてしまうわけにはいけないから我慢。ただゆっくり眠ってるキミをこうして眺めてられるだけでも感謝しなきゃな。
     ベッドの中でキミと思う存分くっついてると、だんだんキミの熱が引いてくるのがわかる。おれを抱いて興奮していたキミの熱が、どこかに消えてしまうのは寂しい……と思いつつも、こっちも次第に落ち着いてきて、やっと眠たくなってきたような気がする。
     いつも少し寝付きが悪い。ベッドに入ってからキミと激しい運動をしているせいだというわけではなくて――むしろそんな日はよく眠れる方だけど、なにもない日はもっと夜が長い。困るほどじゃないが。キミがそこに居るから。
    「んぐ……ぐぉ 1081

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    DONE土蜘蛛さんと小さい大ガマさんぼうぜんと


     座敷の真ん中に座布団も敷かずに座って、少しも動こうとしなかった。
    「おおい、つちぐも」
     なんだか事情がありそうな雰囲気だが、そんなのおれの知ったことじゃない。おれは土蜘蛛に用がある。だからいつものように、天井裏の梁からその脳天向かって声をかけた。
     が、やっぱり動こうともしない。
     いんやほんとを言うと、ちょっと動いた。おれに呼ばれたのはちゃんと聞こえたらしく、その瞬間にぴくり、と。しかし返事をしない。腕組んだまま。上から見える白い額に、しかめっ面のシワが浮かんでいるのが見える。
     ということは聞こえておきながら無視を決め込んでいるってえことだ。
    「つちぐも。おい、つちぐもってば」
     何度呼んでも腕組みのまま。このやろう。
    「わかったよ。もういい」
     おれは一人でへそを曲げて、梁をつたって屋根の上へ戻る。
     と見せかけて。
    「それっ」
     天井の端から勢いよくぴょんと跳んだ。じっとしていて隙だらけの、間抜けな後頭に狙いを付けて。
     目にも留まらぬ蛙のするどい飛び蹴りを、そのどたまに食らわせてやる!
    「やめんか!」
     ところがそれも読まれていて、土蜘蛛のやつ、ひょいと首 1782

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    DONE寝起きのゼロクス
    ちょっとシリアス
    夢を見ない


    「ゼロ! いくら休日だからってこんな時間まで寝てるんじゃない!」
     レプリロイドも寝言を言う。特に、ゼロのようなスリープモードからの移行に時間がかかるタイプだと顕著だ。
     任務中の一時休止からの起動は早いのに、休日ともなるといつもこれだ。この柔軟性の高さも、性能の高さの一つでもあるんだろうけど。
    「まだ……朝じゃ、ない」
    「そうだね、もうお昼だ」
     さっきからこの調子で、オレはずっとゼロの寝言と会話している。
     休日だからどこかへ出かけよう。休みの間に買い出しに行かなきゃいけないものもある。なによりそれが、日々の忙しさの息抜きになる。
     だというのにゼロは起きない。一度起きればテキパキと動くんだけど……というより割と短気で大雑把だから、行動はかなり早い方なのに。休日の朝だけはどうしても起きない。
    「何かいい夢でも見てるのかな」
    「……ああ」
     やっぱり半覚醒状態のまま頷いた。
     目を閉じて、ベッドの中に沈んでいる。柔らかなクッションのマットレスに横たわり、物理的に外気と光を遮断する薄手のブランケットに包まれている。これはメンテ用のポッド・ベッドじゃない。もちろんゼロの自 2565

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    DONE合戦してる頃の土ガマ鍔迫心中論


     鮮血の色は人と変わらぬ赫であった。
     生白い、そして柔らかい肌を裂くと、夥しくそれは飛び散った。我が身に降り注ぐそれは、夜半の雨のように冷たい。
     思いの外、柔らかな手応えだった。手に残る感触に呆気に取られる。血の赫さに目がくらむ。降り注ぐ冷たさに息を呑む。わずかの油断に、足場を失った。
     蜘蛛の糸が切れた――油断に、我が妖気が弱まったためか、それとも、糸に切れ目が――いつの間にか入っていたのか――入れられていたのか――蜘蛛の身は縋る足場を失い、宙から落ちた。
     真下は水面であった。吾輩が先に水底へ落ちた。その上に追って鮮血が降り注いだ。清冷な湧き水に赫が交じる。波打って、交わる。透明な赫の影が我が身の上に落ちる。息ができぬ。息が詰まる。吐いたものが泡となって水面へ登る。鮮血と入れ違いに。
     どうした、まだ、吾輩は息をしているようだ。こんな妖怪となった今でも。そして息を詰め、苦痛を覚えている。
     しかし次には、あれが落ちてくるであろう。腹を裂かれ、鮮血を吹き出させた、あれだ……。道連れだ。或いは相討ちだ。思っていたよりも手応えがなかった。あの肌と肉は柔らかだった。
      1233

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    DONEいちゃいちゃしている夏のデググラアイスクリーム頭痛


     キーン。と来るのは目に見えている。いや肌で感じる。もうすでに冷たい。冷たくて、爽快だ。こうして口の前に持っているだけでも。
    「食べないのか?」
     横に居たグランツがおれの顔をひょいっと覗き込んだ。ソーダ味のアイスキャンディーと同じ色の目と髪の毛。それに近くで見るとよくわかるのだが、まつげもアイスキャンディー色でキラキラしている。いかにも涼しそうで、見つめているだけで少し暑さもふっとぶ気分だ。
    「ウウン、食べたいのはやまやまなのだが」
    「とけ始めてる」
    「おっ」
     握ったまま考えてばかりだから、いつの間にかアイスキャンディーの雫がこぼれ落ちるところだった、のかもしれない。
     グランツが背伸びをして、アイスキャンディーの下の方をペロッと舐めた。向こう側がとけ始めていたのだ。握った棒と水色のアイスキャンディーの隙間にチラリとグランツの舌と、あわやとけて落ちる雫が一瞬見えた。
    「冷たい。でもこのままじゃキミの手がべとべとになるぜ」
    「よし。そうだな、意を決して!」
     がぶり! とアイスキャンディーの頭にかじりつこうとするものの、キーンがこわくて開けた口を閉じられない。 1261

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    DONE土蜘蛛さんと大ガマさんと巻き込まれる大やもりさん血だるまで火だるまで災難


     うわ鼻血出てる。
     うららかな午後の日差しに大ガマの鼻血は全く心臓に良くない。しかしぎょっとして目を逸らした先にも、血が点々と……いや、そんな生易しい量じゃない。おびただしい量の血を垂れ流し、庭に血痕を引きずりながらこっちに歩いてくる。
     咄嗟に目を逸らしたけど、正解は『このまま何事もなかったかのように帰宅』だったかもしれない。
    「お、大やもり」
     声をかけられてからではもう遅い。おれはカモネギだ。
    「なに、やってんの」
    「そりゃこっちのセリフだよ」
     鼻血を手の甲で擦りながら喋るから何を言ってるのか聞き取りづらい。よく見ると顔もボコボコに腫れてるし、大ガマの声が変なのは鼻血だけのせいじゃないのかも。
    「いやおれは別に頼まれたもの持ってきただけなんだけど。いや大ガマに頼まれたやつじゃないから。ただの通りすがり」
    「いや、が多いな。なんでもかんでも否定から入るんじゃねえぞ。どんどんめんどくせえ奴になる」
     喋る途中で横を向いたかと思うと庭の池に向かってプッと唾を吐いた。唾というかほとんど血の塊。汚……見たくなくてまた目線を逸らす。こいつ人んちで何やってんだ 2669

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    DONEいちゃいちゃを我慢するデググラ口移しチョコレート


    「はい、あーん」
    「うぶわ」
    「んっ、プフッ」
     チョコレートで口を塞がれたキミの一言……いや、言葉にもなってない困惑の唸り声みたいなのが、あまりにもかわいかったので吹き出してしまった。ここが小洒落たレストランでなければ、腹を抱えて笑っていたかもしれない。
    「ンワわわ、ンワワ、わなわな?」
    「フッフッフッフッ。ふふ、いや、それはキミのだから、ンフフ」
     大声で笑うのを堪えていると、どうしてもおかしな含み笑いになってしまう。これじゃ少し、いやらしい声みたいになってないかな? 周囲に訝しがられるほど騒がしくはしていないつもりだけど、でもキミのかわいいところを見つけたってのに、こっそり笑わなければいけない状況はいつも苦しい。
    「ムムム………」
     キミは不服そうに口を結んで、ついでに目も閉じてムムと唸りながら口の中いっぱいのチョコレートを咀嚼した。モグモグ、なんて擬音が浮かんで見えるほどしっかり噛んで食べている。
     キミの口で大きかったんだから、多分さっきのチョコレートは一口で食べるようなものじゃないな。一口で食べさせたのは、おれだが。キミが口いっぱいに食べ物を含んでい 1730

    masasi9991

    DONE土ガマ 都々逸そのまんま膝枕させて辺りを見まわし そっと水を含んで口移し


     閉じたまぶたを透かして見える、八間行灯の淡いまぶしさに影がかかる。ぼんやりとした輪郭は馴染みの形だ。
     影は、近づく。ふわりと花か、蕾か、新緑か、霧の深い野山にでも放たれたかのような香りが微かに漂う。
     薄目を開けて驚かせてやろうか。少しばかり悪ふざけが頭に浮かんだものの、枕にした脚があまりに心地がよいので、瞼を持ち上げるのにも一苦労。などと夢うつつの一人相撲をしている間に、唇に柔らかなものが押し当てられる。
     少しばかり熱い。生ぬるい。さらにぬるい、ぬるぬる濡れた舌に唇をこじ開けられ、冷たい雫を流し込まれる。飲み込めば熱に浮かされた身体の芯が、スゥーと心地よく冷えた。
     で、観念して瞼を開く。
    「起きたのかい?」
     行灯の淡い炎の眩しさよりも眩しい、青白い肌がすぐに目に入る。その瞳は赤い。吾輩に口移しに水を飲ませた唇もまた赤い。膝に乗せた吾輩の顔を見下ろし、静かに笑っている。
     遠くに宴席の騒がしさが聞こえている。同じ座敷のことであろうに、寝惚けか酔いか、因はどちらかわからぬけれども、聞こえてくるのはまるで別な世界のことのようだ 711

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    DONE土蜘蛛さんと小さい大ガマさん出会ったばっかりの頃居候


     さてその姿になってから、幾日か過ぎた。
     これが見た目の通り只の大蛙ではなく、妖怪か、はたまた別の何かであるのか、それについては薄々感ぜられていたことではあるけれども、あの日このような姿に変わってからは疑いようもなくなった。
     妖怪である。人の子の姿に化ける。どこにでも居るものではないが、驚くほど珍しいというわけでもない。化け蛙だ。
     正体がわかれば不思議でもない。得体の知れぬ蛙にいつまでも居座られるのはどうにもこうにも納得がいかぬものであったが、こちらと同じ妖怪となれば少しは気が許せる。
     とはいえまだ幼いこれには、小難しい話も通りそうにないが。
     しかし、突如として人に化けたものだから、未だこちらが慣れぬ。当人はまだ蛙のつもりらしく、朝起きると吾輩の額の上に腹を乗せて寝ていたりする。それが只の大蛙であるならヒンヤリとするだけで大した問題でもない。しかし実際は、五つか六つか、そのくらいの童の姿なのである。ズシリと重い。鼻も口も息が詰まる。目を開けようにも開けられない。寝惚けながら振り落とし、起き上がってみると見慣れぬ童が、まんじゅうのように丸まって座敷の上に転がっている。 1374

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    DONEゼロクスの平和な日曜日と小さな事件日曜日とマーケットと小規模な事件


     全速力で走っても普段の半分の速度も出せやしない。この軽量スニーカー風のフットパーツでもダッシュ用に多少のジェット噴射はできるけど、そんなことしたらそこら中の人にぶつかってしまう。
     日曜日の晴れた青空と綿毛の花びらが舞う平和な並木道。こんなに焦ってるのは、オレひとりだ。
    「どいて、……あ! すみません! どいてください!」
     どうにか大声で謝りながら、道を開けてもらって、時には失礼にならないように押しのけながら、走っている。
     これほど人が集まってるなんて予想外だった。公園の入り口あたりじゃ、まだそこまでの人出じゃなかった。だから急がなきゃと思った通りに走り出してしまった。ところが二つ目のゲートを越えて広場に続く並木の道に差し掛かると、だんだんと人混みが激しくなってきた。混雑のあまり前がろくに見えないほど。それはオレの背が低いせいもあるんだけど。
     何しろ今日の予定は買い物だけだったから、ほとんど武装をしていない。そう、いつものフットパーツも置いてきた。なおさら目線が低くなる。フットパーツの高さなんて数センチ? その程度でも、オレの身長じゃ大問題 3033

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    DONE学院時代レオクリ息を止めた

     珍しいものを見た。見なかったことにして場所を変えようと思った頭に反して、足はそっちの方へ向かっていた。
     昼休みの学院は、騒がしい。嫌いじゃないが、今日はそんな気分にならない。喧騒から逃れられる場所を探して彷徨く。校舎裏まで来れば、騒がしさは遠く微かに聞こえるだけになった。
     そこに一つだけ置かれたベンチが、並木の日陰に入っていた。その涼しげな薄暗さがいかにも丁度いい。見つけた、と思った。それと同時に、珍しいものを見た。
     先客だ。せっかく一人になれそうな場所を見つけたのに、そこに先に座ってるやつが居たんじゃしょうがない。それも思いがけないような相手だ。およそこんなところで居眠りしてるような奴だとは知らなかった。いささか驚いて足を止め、見なかったことにして場所を変えようと思った、つもりだったが……気がつくと、足はそっちの方へ向かっていた。
     遠くに聞こえる昼休みの喧騒と、時々吹く風の音、そのくらいのものしかここにはなかった。砂利を踏んで近づく自分の足音さえ場違いに騒がしい気がした。その足音だって、ほんの二、三歩分だってのに。
     風が吹けば並木が揺れて、木漏れ日がそいつの 1698

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    DONEホワイトウイングイベント後のジクイア鍛冶屋の冥利は


     式典で見た華やかな衣装が目に残っている。オーダーメイドのタキシードにマント、シルクハットに手袋、靴まで全部がジークさんの上品で凛とした雰囲気にぴったりだった。見た目で人は測れないとは言うけど……まるでジークさんの心の美しさに合わせて誂えたようにも見えた。上品さ、美しさもそうだし、何よりその柔らかな印象は、ジークさんの優しさを表しているように思えた。
     そうだ、ジークさんは強くてかっこいい。だけじゃなくて、とても優しい。そんな内面の美しさを衣装によって表現することができるなんて。ちょっと変な話かもしれないけど、そのことに関しておれはなるほど、と強く感銘を受けた。
     衣装は裁縫師の仕事だ。鍛冶屋のおれが衣装作りのことを考えるのは邪道かもしれない、と思いつつ。気付けば、例えばマーケットで鍛冶に使う鉱物を買い求めているときなんかにも、あの瞼に残った美しいジークさんの姿に似合うなにかについて考えている。
     鍛冶で作るならゴールドの細工品とか、貴石を使ってみるのもいいかもしれない。武器や防具を作るときの応用で考えてみる。良い装備は洗練された見た目の美しさも必要だ、というのがお 1753

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    DONE事後の土ガマ赤裸の肌を覆う

     ふと、目覚めれば朝であるらしい。既に開け放たれた縁側から白い陽光と風が座敷へと入り込んでいる。我が糸を張り巡らし網の巣へ、何んの遠慮も知らず入り込んで来る様が、あれによう似ておる……などと栓もないこと、陽の光にまでそんなことを考える阿呆らしさ、まだ己は寝惚けているらしい。つらつらとめどなくしようもなく考え、最後に一体誰がそこを開け放ったのか、という疑問へと至った。
     至ったが、すぐに答えを思い出した。あれの他には居らぬではないか。
     天井ばかりを見つめた頭をふと傾けて姿を探す。縁側から差し込む陽に長い影が差し挟まれている。
     起き上がろうか。億劫だ。まだどうにも気怠い朝。横に寝返りを打ってどうにか少し上体を起こし、立てた片肘に頭を乗せた。
    「あんたがそうだらしねぇのは、珍しい」
    「うむ」
     我ながら寝惚けた返事だ。しかし此れも大した話はしておらぬのだから、別に構いはせぬであろう。
     吾輩に背を向け、庭を眺めていた大ガマが、首を傾け振り返る。真っ白の陽に当たって白く輝く頬が透けて見える程だ。瞳は、笑っている。しかしすぼめた唇からは、薄っすらと白い煙を吐いている。
    「借 1056

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    DONEお昼寝直前いちゃいちゃデググラあくびにいたずら

     ちょうど手頃な木陰に腰掛けたキミが、瞼をぱしぱしと瞬かせ始めた。今日もいい天気だし、さっき昼飯をたらふく食ったばかりだし、午前の採掘もいい具合に一区切りついたわけだし、それも仕方がないな。と思って見ていると、案の定口をポカンと開きかける。
     一度、開いて深呼吸。しかし中途半端に開けて閉じる。それを何回か繰り返す。相変わらず両目も瞬いている。一生懸命眠気を堪えているってところだ。
    「デグダス」
    「ほわ、ぁぁぁぁ……」
     返事をしようと口を開いたのがまずかったのか、ついに大きなあくびになった。
     ずっと我慢していたぶん、ずいぶん長いあくびだ。開きっぱなしのキミの口を見ていると、思わず手が出た。
    「んああぁぁ……んが?」
    「ふっふっふ。眠そうだな」
    「んあ。あえおんいいえ、うえ」
    「あっはっはっは! なんだって?」
    「ん、あ、ん、う!」
    「くすぐったいな、これ」
     あくびのまま大きく開いた口で、返事ができずにキミはムムムとうなりながら首をかしげた。視線がゆっくり下を向いて、自分の口に突っ込まれたおれの人差し指をまじまじと見る。
     噛まないように触れないように、キミは口を 705