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    ゆりお

    @yurio800

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    ゆりお

    Valentine中学時代の二人。架空の女の子が出てきます。
    まおりつ/あんスタ「そういえば、今日ってバレンタインだったな!」
     上擦ったわざとらしい声だった。凛月は隣を歩く真緒をじろりと睨みつけた。
     目を泳がせる真緒の手には、綺麗にラッピングされたピンク色の包みがあった。先程、校門を出るところで女子に声をかけられ、ろくに話す間も無く押しつけられたものだった。彼女はすぐに踵を返し、近くにいた数人の女子たちと共に、キャアキャア声を上げながら小走りで立ち去った。
     中身は言わずとも知れた。彼の言う通り、今日はバレンタインなのだから。
     学ランの上に濃紺のピーコートを着て、キャメルのマフラーを巻いた真緒は頬を赤く染め、少し浮かれていることを自覚していた。今日のことを忘れていたわけではなかった。むしろ思春期の少年らしく、浮ついていたというのが正しい。けれどもこういう日に限って、ひとつ上の幼馴染は朝からしっかりと登校し、休み時間のたびに真緒の教室に来ては隣に座ってべったりと身体を寄せた。真緒に向ける甘く媚びた瞳も、いざ他人に視線を移すと冷たい硝子玉に成り下がる。凛月は同性の真緒から見ても美しい容姿をしていたが、そういった奇行から周りに遠巻きにされていた。
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