サンダーバード・ヒルズ「……あ、」
骨が折れたにしては、随分と可愛らしい。
硬いものが折れたような、パキリという乾いた音。
ヴェルゴは始めその音が何なのか、まったくもって見当もつかなかった。
殆ど反射神経だけで、振り抜かれたサーベルを避けたヴェルゴは、胸ポケットから零れ落ちた破片に思わず小さな声を上げる。
激戦の甲板。その板張りの床に散らばったのは、万年筆の破片達。
デスクのペン立てに入れている筈だったのに、安物のボールペンと間違えて、胸ポケットに挿してきてしまったようだ。
『任務に励め。おれの為にな』
僅かに力んだ手のひらの下で、木の床が割れる。
目の前に迫るサーベルを掴むと、その手のひらの方に刃物が負けた。
握り折られたサーベルの主に、恐怖の色が浮かんだ瞬間。既に、その竹竿は男の顔面を叩き割っていた。
26008