物書きkgmさん ① 空港に訪れる人は皆、上を向いている。電光掲示板を眺めている人、アナウンスに耳を傾けている人、まだ見ぬ景色に胸を高鳴らせている人、帰路の穏やかさに心を落ち着けている人。その双眸はいつでも、星がまたたくようにきらりと輝いている。
そんな人々が少し足早に、時折ゆっくりと歩くのを見つめながら、アナウンスが鳴り響く通行路に面したテラス席で温かなコーヒーへと口をつけているとある男が一人いた。目の前で広げている薄目のノートパソコンには幾つか文面が羅列しており、足元にはボストンバッグが置かれている。膨らんだ鞄の中は今から行くのだろう旅へ向けられた期待や希望が満ち満ちているようだった。男の、アーモンドカラーにまばたく瞳のように。
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