あの日のお礼「え、えっと……」
部屋の隅で本を何冊か取り出しては、これでもない、あれでもない、これは渡したい、など本を選んでは床に置いたり迷ったりとしている様子が見られた。
何故ここまで迷っているのか、この前リヒトはサクリに助けてもらったことがあり、そのお礼を兼ねて琥珀から相手は本を読むということを聞いて、本を渡すことになったのだ。
本を読むこと自体は知っていた、琥珀の部屋に入った時、部屋に置かれている本棚から本を取って読んでいるサクリの姿を見たことがあるからだ。どうせ本を渡すのだ、琥珀の部屋に置かれてなさそうな本を渡そうと、今、こうして本を選んでいるのだ。
「うぅ……あんまり渡すの迷惑かな……」
最初は二冊だけ、と考えていたのだが本を選んでいるうちにみるみる本の数は増え、いつの間にか十冊になっていた。
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