眠りの魔法 光のない目でパソコンの画面を見ながらキーボードを叩く琥珀。ここ連日の没討伐やらで、原稿がほとんど進めれてなかったのだ。編集者は理解があって、最初提示した締め切りより伸ばせると提案してくれたが、その日にちだと向こうが大変なのを分かっていた琥珀は、何とかして原稿を終わらせようと原稿を進めたのが数時間前、終わりが見えない。
こうして原稿が大変な時は遼貴が琥珀の家に来てお菓子を作ってくれる、現に先ほど来てくれて片手でもつまめるように、と小さめのカップケーキを作ってくれた。どんな対応をしたか覚えてなかったが、琥珀の顔色を見た遼貴の顔が引きつっていたような気がする。
「あ、あまり無理しないでくださいね」
そう言って帰った遼貴を見送ったのは何となく覚えている。なぜ記憶があやふやなのか、徹夜してるからだ。寝不足で頭痛を引き起こしてる頭をなんとか我慢し、力の無い手でカップケーキをつかんで食べる。優しい甘さが体に染みる、そう言えば昨日から何か食べた記憶もない。水分も取ったか、と考える。
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