85_yako_p カプ入り乱れの雑多です。昔の話は解釈違いも記念にあげてます。作品全部に捏造があると思ってください。 ☆quiet follow Yell with Emoji Tap the Emoji to send POIPOI 434
ALL タケ漣 鋭百 カプなし 天峰秀 大河タケル 100本チャレンジ モブ 牙崎漣 花園百々人 想雨 カイレ クロファン C.FIRST 眉見鋭心 天道輝 ミハレナ ダニレナ 既刊 伊瀬谷四季 蒼井享介 蒼井悠介 W 若里春名 華村翔真 Altessimo 神楽麗 都築圭 古論クリス 葛之葉雨彦 レジェンダーズ 北村想楽 百鋭 秀百 薫輝 THE虎牙道 タケ漣ワンドロ web再録 誕生日 くろそら 途中 秀鋭 卒業 ケタザザ 短歌 プロデューサー 円城寺道流 叶納望海 御田真練 超常事変 渡辺みのり 癒残 堅真 ウォリアサ R18 街角探偵 わからん 九十九一希 四季漣 親友 輝薫 書きかけ 黒紅 道漣 DoS幻覚 ドラスタ 桜庭薫 BoH 春隼 サイバネ 山下次郎 寸劇 左右わからん しのかみしの 東雲壮一郎 ハイジョ レナート ミハイル S.E.M じろてる 旬四季 北冬 東雲荘一郎 秋山隼人 悠信 神谷幸広 アスラン そらつくそら 四季隼 140SS 黒野玄武 冬美旬 冬春 ゲーム部 ジュピター 卯月巻緒 四季秋四季 85_yako_pDONEパン祭とじろちゃん(2021/02/23)山下春のパン祭 確かに発端はおじさんだよ。 プロデューサーちゃんに何気なく、シールを集めてるって言ったのはおじさん。 なんでかって、るいやはざまさんや、最近はいろんな人がくるから、もう少しお皿が欲しいの、って言ったのもおじさん。 だけど、こんなことになるなんて、いや、こんなことをしてくれるなんて思わないじゃない。 嬉しいんだよ。嬉しいけど、照れちゃうと言うかなんというか。恐縮って言葉が一番近いのかな。 事務所の一角。立てかけられた小さなホワイトボード。そこにマグネットで留められたクリアファイル。そしてボードに書かれた文字。 『パン祭りのシール、集めています』 視線をやれば、そこにはクリアファイルをビッチリと埋めるシール達。ああ、ヤマシタ春のパン祭り。 637 85_yako_pDONE虎牙道とコタツ(2019/02/12)もうコタツから出たくない ついに我が家もコタツを出した。タケルも漣も気に入ったんだろう。漣はうちにくると真っ先にコタツに入るし、タケルも何も手伝うことはないとわかるとコタツに吸い込まれていって漣と小競り合いをしている。 自分もコタツが好きだ。こうやって、一度入ると出るのが億劫になるほどに。それこそ、トイレに行くのもめんどうだ。 「タケル……代わりにトイレに行ってきてくれないか?」 そう投げかければ、漣が醒めた目で見てくる。何を言ってるんだ、と目が訴えている。 だが、タケルはわりとノリがいいのだ。 「仕方ないな。他でもない、円城寺さんの頼みだ」 そう言って本当にトイレに向かうタケル。チラ、と盗み見ると、完全に混乱した様子の漣がうろたえている。 369 85_yako_pDONEおいしい飲み物を飲むタケルと漣(2019/02/10)名前はなくて、あったかい ホットチョコレートを飲む話 レンジで温めた牛乳にチョコレートを一欠片。華奢なスプーンは持っていないから、カレーを掬うための大きなスプーンでくるくるとマグカップの中身をかき回す。 ボクサーをしていた時は、この指がこんなに柔らかな動きをするなんて、思ってなかったわけではないが、意識したことは一度もなかった。ハンドクリームを塗るようになった手は、ようやくアップで撮られても胸を張っていられるようになった。 マグカップの中、熱い牛乳がチョコレートを溶かしていく。湯気に甘い香りが混じって、それから少しして華やかな馴染みのない香りがする。これが、最近のお気に入り。チョコレートに包まれていたラム酒の香り。 6655 85_yako_pDONE弱るタケルと励ます漣。カプなし。(2020/10/31)それは影に似ている。 プロデューサーはいつも新幹線に乗るとアイスクリームを食べる。必ず食べるもんだから、相当好きなんだろう。 自分だけじゃない。俺と円城寺さんにはバニラ味、アイツにはチョコ味のアイスクリームをいつだって手渡してくれる。実を言うと、たまにはチョコ味が食べたい日もあるんだけど、それでも俺は黙って薄い真珠色をしたアイスクリームを受け取っている。プロデューサーにはこういうところがあった。なんて言葉で表せばいいのかがわからない、決して賢くはないところが。 新幹線はあまり揺れないから、気がつくととんでもなく遠くに運ばれていたりする。いまだって相当な距離を走ってきた。北へ、北へ、北へ。外だってきっと寒い。それでも新幹線の車内は暖かいから、俺はアイスクリームを買った。プロデューサーもいない、アイツもいない、円城寺さんもいない車内で、チョコ味のアイスクリームをひとつだけ買った。 10671 85_yako_pDONEクリスさんを理解するために書いたら別人感です。(2019/04/30)名前のない魚 古論クリスは歩いていた。通行人の視線にも気が付かずに。 彼、いわゆる美男子は歩を止める。彼の視点は、道端の露天商に注がれていた。 彼は、仲間である青年のことを思い浮かべていた。青年の名は、想楽という。 想楽は実に様々な雑貨を持っている。きっと雑貨が好きなのだろう、とクリスは考えていた。もし、この店に何かいいものがあればお土産にするのもいいかもしれない。きれいな、置物などどうだろうか。意にかなう商品はあるだろうか。すこしだけ浮き立つ心を隠すこともなく、彼は店主と思わしき男性に告げる。 「何か、面白いものはありますか? 飾れる、美しいものがよいのですが」 通行人がそうするように、店主もまた彼に振り返る。目が合うと店主は、すきっ歯を見せて笑ってみせた。 5050 85_yako_pDONEミハイルとテキーラ。Dos設定前に書いたので矛盾してます。ミハイルとダニーが後輩です。(2020/06/28)ミハイルとテキーラと長い夜 柔らかく、それでいて横暴なノックの音。主がわかるほど、おれはイグニスのメンバーには詳しくない。 寝るにも、何かをするにも中途半端な時間だった。寝たふりを決め込んでもよかったが、扉を開けたのは気まぐれだ。どうしたって警戒心が滲む程度に覗いた隙間から、美しい銀の髪が見える。 「……レナートか」 「ああ、今は暇か?」 レナートが部屋を訪ねてくることに不思議はない。おれはそれなりの信頼を勝ち取っているから、仕事の相談をされることだってあるのだ。ただ、それにしてはレナートの持ち物がおかしい。レナートが持っていたのは氷をたっぷり湛えたアイスペールとライムを塩。そしてショットグラスがふたつ、テキーラの瓶が二本。 3652 85_yako_pDONE魔法使い伊瀬谷四季と牙崎漣。四季が誰かに恋をする描写あり。(2019/03/04)いつか必ず 伊瀬谷四季には魔法が使える。 伊瀬谷四季は魔法使いだ。だから、伊瀬谷四季は魔法が使える。当然だ。だって、彼は魔法使いなのだから。 伊瀬谷四季はこのことを隠したりしない。ただ、そんな荒唐無稽なことを聞いてくる人間は当然いなかった。 伊瀬谷四季は大好きな先輩たちにはこのことを話していた。もちろん、真に受けた人間はいなかった。 変化は唐突で、幸福は光だ。まっすぐに、だけど、当たり前に。 その日、伊瀬谷四季の魔法とはまったく関係なく、大河タケルに奇跡が起きた。彼は、今日という日は昨日までの積み重ねで、唐突な変化を予期していたわけではなかった。彼は訪れるであろう幸福を信じていたけれど、それは確信のない明日だった。 3148 85_yako_pDONEタケルと漣。ギリギリカプなし(危うい)(2019/7/25)銀幕越しのジュリエット 朝起きたら、アイツが死んでいた。 アイツが世にも珍しい病に蝕まれたと知ったのはその日の夕方だった。その病は大げさに言えば死因そのものであったけど、アイツはそれを聞いてつまらなそうに「ふーん」と言っただけだった。 アイツは生き返った。いや、それは適切ではない。アイツは別に死んでいなかった。俗に言う、仮死状態というものらしい。俺にはイメージがわかなかったけれど、九十九さんが何かの物語のようだと言っていて、それはアイツの限りなく色をなくした心音に相応しい気がしていた。その病には、物語のヒロインの名前がついていた。 アイツは死んで、生き返る。スイッチは睡眠だ。眠るたびに仮死状態に陥るなんて、厄介な病だと思う。 3887 85_yako_pDONEタケルと漣。花火とふたり。(2019/08/07)夜空に硝煙 毎年、遠くに聞いていた。小さな破裂音と、空を照らす光の花。 呼び覚まされた記憶はいつも柔らかく輝いていて、そうじゃない思い出を持っているやつがいるってこと、考えたこともなかったんだ。 「納涼花火大会のレポっスか! 楽しみっス!」 「のーりょーはなび大会?」 プロデューサーの言葉に返された、期待に満ちた声とふわふわとした声。円城寺さんがイマイチわかっていない様子のアイツに『納涼』の説明をするのを、俺は黙って聞いていた。 納涼。意味を知っているつもりだったが自信はなかった。それでもあながち間違っていなかったことに内心ホッとする。ところがアイツはまだ疑問があるようで、仕事に関わることだからだろうか、いつもよりは素直に円城寺さんに問いかける。 6305 85_yako_pDONEじろちゃんとS.E.Mと虎牙道(2019/11/19)遺影でイエーイ 教師をやってた時はわりと生徒とは打ち解けていたほうだ、と思う。でも同僚や先輩、上司達とはなあなあな付き合いだった事実から鑑みるに、俺はそんなに社交的なほうじゃないんじゃないのかもしれない。少なくとも、極めて身近にいる全世界の人間とコミュニケーションを取るために生まれてきたような人間と比べたら、全然ダメ。 それでも学校って空間なら学生がいて教師がいて教頭がいて校長がいて、それぞれに求められる役割があった。その立場に見合った振る舞いをすれば、まあコミュニケーションに支障はなかったわけだけど、俺はアイドルになって日も浅いので、アイドルとはどのように同僚と打ち解け合うのかがよくわかっていないのだ。 多種多様な前職が集まった事務所だ。前職に関しては自分も特異なほうだと思うが、元格闘家が集まったユニットというのも結構珍しいんじゃなかろうか。いや、スポーツ選手からタレントになってる人って多いのかな。ちょっとよくわからないけど、目の前の三人はタレントって感じじゃないんだよねぇ。 6824 85_yako_pDONE漣とモブじいさん。タケルと道流もいる。(2020/05/29)ゆりかごのうた「漣、ちょっと話せるかな」 呼び止めた男性に対し、漣は「下僕、」とだけ言った。それはただ『そこにいる人間』を認識しただけで、返事ではない。代わりに反応してみせたのは共にレッスンをしていた道流の方だ。席を外すべきかと問うべく、道流は口を開く。 「師匠、自分たちは」 「ああ、気にしないで」 プロデューサーは漣の了承もなしにそう言った。いてもよいと言うよりは、いていてほしいのだろう。自由気ままな漣にはそばで見ていてくれる人が必要だとプロデューサーは常々思っていたが、現実問題として自分だけではそれは叶わないとわかっている。その役目を少しだけ、道流に期待しているのだ。 「そろそろ梅雨だから、いい加減ね。寮に部屋を用意したから」 10580 85_yako_pDONEタケルと道流と人じゃない牙崎漣。(2020/11/08)家のない、旅人だった君へ。 事務所の動画配信チャンネルには俺も参加している。そこでいつものメンバーとゲーム配信をしていたら、『実家のような安心感』というコメントをもらったことがある。きっと賑やかな家なんだろう。 実家、というか。施設は子供が多いから、俺の実家と呼べる場所も騒がしい。でもアイドルになって、実家のような場所がもうひとつできた。円城寺さんの家だ。 円城寺さんの家は絵本の中に出てくる暖かな家の温度がする。俺には馴染みがないはずなのに、すっと入ってくるというか。縁がないと思っていたはずなのに、いざ巡り合うとずっとそこにいたかのような。 「さぁ、ゆっくりくつろいでくれ」 円城寺さんはいつもこう言う。俺たちが初めて家にきた日から、ずっと。 4692 85_yako_pDONE大河タケルと約束 85_yako_pDONE「THE虎牙道のみなさんです」 85_yako_pDONE漣と道流と賞味期限 85_yako_pDONE旬と四季。サンタいるもん。 85_yako_pDONEタケルと苗字。 85_yako_pDONEPちゃんと漣 85_yako_pDONEタケルと四季(と漣) 85_yako_pDONEPちゃんと道流と漣 85_yako_pDONEタケルとじろちゃん 85_yako_pDONE虎牙道とハンバーグ 85_yako_pDONEゲーム部と漣 85_yako_pDONE旬とモブと合唱コンクール 85_yako_pDONE巻緒と春名 85_yako_pDONE隼人と漣。 85_yako_pDONE雨彦と漣。 85_yako_pDONEタケルと漣。ギリギリカプではない。 85_yako_pDONEタケルと漣。 85_yako_pDONE冬のタケルと漣。 85_yako_pDONEタケルと漣。 85_yako_pDONEタケルと漣。 85_yako_pDONE漣と月 85_yako_pDONE四季と漣 85_yako_pDONEタケルと漣。グロ。(2018/07/29)愛しの果実タケルの目がおかしくなった。いや、おかしくなったのは目ではなく脳かもしれない。 タケルの目には時折、食べ物が人のパーツに見える。 誰にも言ったことはなかったから、その秘密はタケルだけが知っていた。今日も人の指にしか見えないメンマを食べた。 その人体のパーツがはたして誰のものなのか。それを認識したのは、よくゲームをやる仲間とゲーム合宿の名目で訪れたロッジでの出来事だった。夏の夜だ、隼人がスイカを持ってきてスイカ割りをしようと笑った。 タケルには、スイカはどう見ても牙崎漣の頭部にしか見えなかった。 スイカ割りの名目で割られた漣の頭部は、派手に脳漿を散らして手のひらサイズまで砕かれた。みんな、うまそうにアイツの頭部にかじりついてる。滴る血が腕に伝えばそれを舐めとっている。みんなが楽しそうだった。自分だけが異常なのはわかっていた。 1651 85_yako_pDONE虎牙道とハイジョ(2018/05/09)口角の上げ方について「いせやー?」「「「しきー!」」」 賑やかな声が聞こえる。今は合同レッスンの休憩中、聞こえた声はトレーニングルームの端っこのほう。ふと目線をやれば、そこには楽しそうに写真を撮るHigh×Jokerの姿があった。 どうやら四季さんを中心にああだこうだとスマートフォンの画面に集まっているようだ。何気なく見てたら隼人さんと目があった。 「……何、してるんだ?」 「自撮り!インスタにあげようと思って」 タケル達は撮らないの?と隼人さんが問いかけてくる。俺たちは、と否定する前に円城寺さんが楽しそうに言う。 「THE虎牙道もたまにはそういうの、したほうがいいかもな。ファンサってやつ」 そうっすよ!と四季さんが楽しそうに同意する。さっき、名前を呼ばれていた人。 1461 85_yako_pDONE虎牙道(2019/07/23)魔法のお弁当「らーめん屋。オマエ、『タコサンウインナー』って知ってっか?」 「おお、知ってるぞ」 「それ作りやがれ! 『タコサンウインナー』は弁当に入ってるんだろ? 明日事務所で食うから、弁当用意しろ!」 「わかったわかった。しかしお前さん、タコサンウインナーが食べたいなんて可愛いところがあるじゃないか」 「はぁ? なんで『タコサンウインナー』が食いたいとかわいくなるんだよ。意味わかんねえ」 「そうか? そうだな。漣に失礼だったか」 「わかりゃいいんだよ。しかし、らーめん屋に作れるなんてな」 「いや、まぁ手先は器用なほうだしなあ」 「で、結局タコがウインナーになるのか? ウインナーがタコになるのか?」 「……んん?」 「ま、明日になればわかるか。あとは唐揚げが食いてえ。いれろ」 645 85_yako_pDONEドラスタ。翼の出番少ないけどドラスタ。(2019/01/19)ジャムを煮る いつも通りに事務所の扉を開けると、今日は何かが違っていた。 見える景色に大きな変化はない。ただ、人だかりができている。そして、空間いっぱいに甘ったるい蜜の香りが漂っていた。 「あ! 薫っちー!」 扉の開く音に振り向いた四季が僕の名前を呼ぶ。それにつられて何人かがこちらを見た。そこには見知った脳天気な赤毛の男も見える。 そして、振り向いた人間は皆、その手にりんごを持っていた。 ふわり、視界に赤い果実を認めたことで、より一層蜜の匂いが強くなった気がする。 四季が近づいてくる。両手いっぱいにりんごを抱えている。 「はい! これ、薫っちにもあげるっす!」 そう言って差し出された果実を反射で受け取った。手のひらにずしりと重さを感じる暇もなく、二個、三個と続けて渡されそうになるそれを、片手を上げて制す。 5382 85_yako_pDONE東雲さんと漣。(2018/11/15)最近のお気に入り ふわり、と。 徐々に漂ってくる香りの正体は、小麦粉と砂糖と卵と、たっぷりのバターが焼ける匂いだ。だけど、漣はこの香りの正体を知らない。 それでも、だんだんと様々な屋根の下で眠るようになった漣は、最近、特にこの匂いが気に入っていた。慣れ親しんだ、らーめん屋と呼ぶ人の家の、生命の匂いのような朝食の喧噪とはまた違う、華やかで穏やかな匂い。 この匂いが漂うと、漣の眠りは少し浅くなって、ぼやりとする。この甘い匂いにふかふかの布団はぴったりだ。寝返りをうち、布団をぎゅう、と握りしめる。甘い匂いに包まれて、ふわふわと眠りの浅瀬をたゆたう。 「焼けましたよ。さぁ、起きてください」 そう告げる声も、とびきり甘い。甘やかされるのは悪くない。漣はぼんやりとそう思いながら、大仰に目を開く。 411 85_yako_pDONEタケルと隼人とアイスクリーム(2018/11/13)セブンティーンとアイスクリームもう厚手の上着がないと寒い季節だ。帽子、眼鏡、マスク。いかにも変装をしていますといった風貌で俺たちは歩く。枯れ葉をさくさくと踏みしめて、目当てのゲームセンターにたどり着く。 隼人さんがよくやっている音楽ゲームの新作が入ったらしい。俺もひさしぶりにシューティングゲームがしたかった。最近、忙しくてゲームセンターにくるタイミングがなかったから。 隼人さんの目的は音楽ゲームで、俺の目的はシューティングだ。それでもゲームセンターの入口で別れるようなことはせず、隼人さんは俺がシューティングゲームをしてるときに横で楽しそうに話してくれたし、俺は隼人さんにくっついて新作だというゲームの曲を聞いていた。 そうやって、しばらくゲームセンターにいた。2人で対戦もしたけど、やっぱり音楽ゲームやシューティングゲームはどうやったって得意なほうが勝つ。1対1の勝敗の決着はエアホッケーでつけた。俺だってアイツほどではないけど勝負事は好きだし、隼人さんだって熱くなっていた。 2224 85_yako_pDONE四季と漣。最初と最後が決まってるお題のやつ。(2018頃だと思う)永久の夏、不変の君へ夏が始まる。 そう楽しそうに四季が言う。「夏休み」になるらしい。 漣にとってそれは馴染みのない言葉だった。夏が始まると言う言葉も、ナツヤスミという単語も。 夏というのは、と言うよりも季節というものは、常に傍らに寄り添いうつろうもので、はい、今日から夏ですよ、だとかそう言うものではないだろうと漣は思う。でも、四季は今日からが夏なのだと言う。 いろいろなところに誘われた。海、プール、サマーセール、カラオケ。どれもわざわざ暑い中、行くようなところではないと漣は思った。そう告げると四季は言う。「夏が終わっちゃうっすよ」 夏の終わりが四季にとって明確に存在することも漣を戸惑わせた。何故、この日から夏が始まりますよ、ここで夏は終わりますよ、と言えるのか。そんなものは、じわりと感じる気温や八百屋の軒先に並ぶ果物の品揃えでなんとなく感じるものだろう。 688 85_yako_pDONE神谷と都築さん。(2019/4/20)星を数えて その日、事務所は賑わっていた。原因は俺たちだ。 東雲の作る菓子は華やかで、好きだ。その色とりどりの宝石たちが、応接室のテーブルに並べられていた。 ピスタチオの緑。ラズベリーの紅。チョコレートの茶。レモンの黄。バニラの白。ごまの黒。数えるならば片手では足りなくなってしまう。思いつく限りの色を、東雲は洋菓子に閉じ込めてみせた。 そんな数々のマカロンを前に、都合のついた事務所のみんなが楽しそうに話している。 「んだこれ」 「マカロンって言ってな、洋菓子の一種だ」 「ヨウガシ……? まぁ、食えるもんなら、全部オレ様のモンだなぁ!」 「人の話を聞いてなかったのか? これは一人一個だ」 「ああ? なんでチビに指図されなきゃなんねーんだ」 5957 85_yako_pDONEタケルと漣。カプ未満だが感情がデカい。(2019/03/30)溢れる、 この感情が理解できたら、何かが変わるのだろうか。 *** テレビ画面の右上。攻撃力、防御力、すばやさ。パラメータの横、冒険を共にする少女の真っ赤に染まったハートマーク。 「よっしゃー! 親愛度マックスになった!」 「これでようやく絆の必殺技が使えるな」 そう言って笑う恭二さんと隼人さん。早速モーションを見ようと兜さんがコントローラーを握る。それをぼんやりと見ながら思う。 こうやって、気持ちが目に見えたらいいのに。 「ん? どうしたんじゃ? タケル」 「……ん、ああ。なんでもない」 絆を結んだ少女との必殺技が、テレビ画面の中でキラキラとした星を散らしていた。 こんなふうに、わかりやすく感情が見えればいいのに。 12447 85_yako_pDONE漣の誕生日に書いたやつ。(2019/05/14)ポケットにはひとつだけ。 普段は入らない雑貨屋に寄った。無意識だったけれど、もしかしたら近づいてきたアイツの誕生日が関係しているのかもしれない。 店内のめまぐるしさは、慣れない。圧、とでも言うのだろうか。俺の背より高くに詰まれた商品はそれぞれが主張しあっていて、譲らないぞとでも言うように色彩を撒き散らしている。BGMは騒がしくて、なんだか不思議な、正体のわからない匂いがする。 忙しい場所だな、と思う。雑貨屋で働いてたという、年上の後輩を思い出す。この喧噪の中で働いていたということか。純粋に、すごいと思った。 賑やかさの渦の中、ここにアイツが欲しがるものはないのかもしれないと、そう思った矢先にそれを見つけた。 灰色の手触りのよいまんまる。ボタンが二つと三角の皮。口と鼻こそないが、それは猫の形を模したがま口だった。 2887 85_yako_pDONEアスランと道流と虎牙ちゃん。(2020/02/11)虎牙ちゃんの学習 違うんだ。ふたりとも、違うんだ。口にできない心の声が自らの脳を埋めてしまい、アスランの話が半分くらい入ってこない。 話半分、だなんてアスランに失礼だとわかっている。それでも背後に感じる視線に意識が割かれてしまう。ちら、と盗み見た視線の主であるタケルと漣。遠慮がちなそれと不躾なそれは、同じように期待を滲ませている。 「それならば氷魔の吐息を防ぐ加護を………………ミチル?」 「あ、ああ。すまんアスラン。ええと、生地の話だったな」 がた、と背後で音。タケルが漣を咎める小さな声が耳を掠めた。ああ、きっと『生地』の意味が勘違いされている。ふたりとも、生地ってのはサタンに着せるケープの生地なんだ。決してたいやきとかお好み焼きとかの、そういう生地じゃない。 987 85_yako_pDONEみのりさんと神谷。(2018/07/20)花に笑顔紅茶をカップに注ぐ手が綺麗だと思った。それだけが強い印象として残っている。 残念なことに、仕事で一緒になったことはなかった。だから、一緒に仕事をしたことがある人たちと比べたら、俺と幸広の間には少し距離があったかもしれない。それでも事務所で顔をあわせれば挨拶ついでに益体もない話をする程度には関係は良好だったし、そんな距離感が続くと思っていた。みのりさん、と俺を呼ぶ彼の声は好きだった。 *** だから、輝にダーツバーに誘われたとき、そのメンツに幸広がいたのには驚いた。だって、他に呼んだのは俺と次郎だと言うから、てっきりそんなに若い子は呼ばないと思っていた。雨彦あたりが呼ばれるとばかり思っていた。 幸広と話ができる。唐突に与えられた機会は嬉しいものだった。世界中を旅してきたという彼の話はきっと素敵なものだろう、そう思った。夜を待つ間、一度だけ彼が紅茶を注ぐ指先を思い出していた。 2638 85_yako_pDONEモブが漣を見て「きれいだなー」って思う話です。恋愛感情はないです。(2021/06/01)映画なんていらない「映画なんていらない」 僕には映画が必要だ。 僕は世界に必要とされてないけれど、世界には僕の必要なものがある。 *** 世界には不必要なものがある。あってもいいけどなくてもいいみたいな、そんな存在。 僕の人生はきっとそれだ。たまにそういう考えに指先までが支配されて身動きが取れないとき、そういうときに僕は映画館に来る。 ひとつの人生がエンターテイメントとして消費されていく様子を眺めながら、誰もいない映画館で細々と息を吐く。こうやって消費した人生は作り物に過ぎないけれど、その事実に僕は安堵する。必要とされない人生と娯楽として消費される人生、このふたつはどちらがマシだというんだろう。 きっとこの映画館も世界にとって不必要なものだ。だって僕以外の客はいないし、僕だってここがなければ他所に行く。それでもこの寂れた映画館に僕は通う。制服を着て、学校に行くだなんて馬鹿げた嘘をついて。 11371 85_yako_pDONE虎牙道とカレー(2018/09/12)日本印度化計画タケルはメモを片手に歩いていた。その横で、メモを覗き込むようにして漣も歩く。彼らの距離の近さは今更だ。兄弟のように並んで2人は歩く。 「にんじん、じゃがいも、たまねぎ、牛肉……小間切れ」 メモを覗き込んでくる漣に聞かせるように、タケルがその内容を読み上げる。 その内容について2人はしばらく考えたあと、期待の滲む声で確認しあう。 「これは……」 「カレーだろ。カレー」 「だよな。カレーだ」 今日は道流の家で夕飯だ。2人はその夕飯の買い出しだった。 「にんじん、じゃがいも、たまねぎ……よし」 野菜売り場でメモに書かれた野菜をカゴに入れ、肉売り場へ。 「……チキンカレーもうまそうだな」 「牛肉って書いてあるだろ」 「でも、小間切れって食いごたえなくねえか?」 906 1234