あしたにはさよなら クローがナンバー持ちになるそうだ。アイツとしては念願が叶うということなのだが、オレは複雑な気分でもある。実のところ、アイツの願いはオレと一緒にいることであって、ナンバー持ちというのは手段だからだ。
まあ、ナンバー持ちには条件がある。誰もがみんな通る道だ。単純に、目を弄る。それだけ。
弄られた目は赤くなって、みんなで仲良くお揃いって寸法だ。これを『家族』の証と言うから笑わせる。まっとうな家族があるやつはこんな仕事してねえよ。寄せ集めのガラクタでもう意味なんてなくなる単語に縋っているのは滑稽を通り越して哀れだ。まあ、ここにマトモなやつはいねえから、オレが憐れむ男は一人しかいない。
で、クローも目を弄くられてオレとおそろいになるわけだが、それはナンバー持ちになる最終試験と言ってもいいだろう。オレも経験したくだらねえ試験──目を弄られると、数日は世界が真っ赤に見えるって言うくだらねえ現象だ。ここで発狂なんてしようものなら人生単位の落第だが、ここまで残るやつで気の触れたやつは見たことがない。だって、どうせもう狂ってるんだ。いまさら狂いようもない。
3154