85_yako_p カプ入り乱れの雑多です。昔の話は解釈違いも記念にあげてます。作品全部に捏造があると思ってください。 ☆quiet follow Yell with Emoji Tap the Emoji to send POIPOI 434
ALL タケ漣 鋭百 カプなし 天峰秀 大河タケル 100本チャレンジ モブ 牙崎漣 花園百々人 想雨 カイレ クロファン C.FIRST 眉見鋭心 天道輝 ミハレナ ダニレナ 既刊 伊瀬谷四季 蒼井享介 蒼井悠介 W 若里春名 華村翔真 Altessimo 神楽麗 都築圭 古論クリス 葛之葉雨彦 レジェンダーズ 北村想楽 百鋭 秀百 薫輝 THE虎牙道 タケ漣ワンドロ web再録 誕生日 くろそら 途中 秀鋭 卒業 ケタザザ 短歌 プロデューサー 円城寺道流 叶納望海 御田真練 超常事変 渡辺みのり 癒残 堅真 ウォリアサ R18 街角探偵 わからん 九十九一希 四季漣 親友 輝薫 書きかけ 黒紅 道漣 DoS幻覚 ドラスタ 桜庭薫 BoH 春隼 サイバネ 山下次郎 寸劇 左右わからん しのかみしの 東雲壮一郎 ハイジョ レナート ミハイル S.E.M じろてる 旬四季 北冬 東雲荘一郎 秋山隼人 悠信 神谷幸広 アスラン そらつくそら 四季隼 140SS 黒野玄武 冬美旬 冬春 ゲーム部 ジュピター 卯月巻緒 四季秋四季 85_yako_pDONE鋭百アンソロジーに参加するために『花言葉・何をしても可愛らしい』をお題に書きました。主催者様から掲載の許可を得たのでアップします。(2024/7/23)勝者不在「僕ってカッコいいかも」 ソファーで伸びている百々人が隣に座る俺に聞こえるような音量で呟いた。視線こそこちらを捉えてはいないが、何も写していないスクリーンを見つめている春の紫陽花のような瞳は俺の言葉を待っている。 「そうだな。端正な顔立ちだと思う」 「それでね、すごく可愛い」 視線は相変わらず絡まないが、眺める横顔は『カッコよく』て『可愛い』。百々人がそれを認識しているのならなによりだ。 「ああ。顔立ちはもとより、雰囲気が柔らかくて愛嬌がある」 「なにそれ」 百々人がゆっくりと俺を見る。うっすらとした笑みを浮かべた顔は『キレイ』だった。その顔を歪めることなく薄桃色の唇が開かれた。 「じゃあ僕が醜くなっても好き?」 2361 85_yako_pDONEかなり捏造多めなタケ漣です。自分の知らない一面をなかなか信じたくないタケルの話。猫が死んでます。タケ漣とするか迷いましたが、タケ漣でしょう。(2024/10/12)野良猫の憂鬱 予感がした。それだけの単純であやふやな理由で俺はわざわざ上着を羽織って夜に踏み出した。目的地なんてあるはずもないのに、足は路地裏に向かっていた。 歩けば歩くほど無意味に思える時間に「明日は朝から雨が降りそうだから、アイツを家に入れてやらないと」と理由をくっつければ、それはあっさりと馴染んでくれた。そうだ、俺はアイツを探しているんだ。訳のわからない予感なんかじゃなくて、でも愛とか同情でもなくて、この意味がわからない焦燥はアイツのためだ。 明日が雨予報だってのは嘘じゃないけど、今夜は晴れていて月が綺麗だった。だからアイツがいたら一目でわかるはずだし、パッと探していなかったら今日は捕まらない。だから、と自分の中で線を引いてから路地裏を見ると、いつもチャンプが日向ぼっこをしているドラム缶の上にアイツがいた。片足をだらんと垂らして、片方の足はかかとをドラム缶のふちに乗せている。そうやって、何かを抱き抱えるように瞳を閉じている。 4310 85_yako_pDONE鋭百ワンスアウィーク第94回『鍵』シアタールームの二人です。あと一歩で鍵を取り逃す鋭百。(2024/8/25)暗がりに栞を挟んで あ、という声が重なった。真っ暗になった空間で、百々人と鋭心はお互いを探すように手を彷徨わせた。こつりと手が触れて、二人は肩を撫で下ろす。 先程までミステリ映画を映していたスクリーンは何の光も得ることはなく、緊迫したBGMを流していたスピーカーは完全に沈黙していた。シアタールームの照明はもともと消していたが、一応スイッチを入れても電気が点くことはない。 「この辺り全部がダメみたい。雷のせいかな?」 スマホを見ながら百々人が言う。そうか、と呟いた鋭心は百々人と同じように困惑しつつも苦く笑うしかない。どうやらこの付近一帯が停電しているようだ。 「すごいタイミングで停電したね」 「ああ、映画のようなタイミングだな……」 2194 85_yako_pDONEヘキだけで書いたタケ漣です。タケルくんが非常に失礼です。憐憫萌え。(2024/8/20)所有「オマエ、プール行ったことないだろ」 チビがそう言ってオレ様を見た。真っ青な瞳の奥に憐れみに似たものを感じて嫌になった。蝉も鳴けないような陽射しの下で、言葉がカゲロウに揺らめいている。 チビがオレ様を憐れむことはないと言い切れるが、チビは自分の当たり前をオレ様が知らないと、どうしようもないほどに苦しそうな顔をする。チビは憐んではいないんだろうが、オレ様がその視線に名前をつけるとしたら『憐れみ』という言葉が一番しっくりくるんだからどうしようもない。 そういう、チビ自身が気がついていない妙な癖にオレ様は気がついている。 プールに行ったことがないなんて、これっぽっちも口にした覚えはない。ただ少し前に学校で撮影があったときに、コイツの前で学校には行ったことがないとは口にした。その時からなんだか小骨が刺さったような顔をしていたから、きっとプールってのは学校に行ったことがない人間には縁がないところなんだろう。 2581 85_yako_pDONEデキてるカイレ(タケ漣)のいちゃつきです。レッカが小悪魔で終始優位。タイトルの半分はまえだちゃんが考えました(2024/8/18)おめかしハニー 紐付けというのはなかなかどうして馬鹿にできない。条件反射とも言えるそれはうまく仕組めればこれほど面白いものはないと、レッカという男は思っている。 ただでさえ人を食ったような男なのだから、他人が自分の思い通りに動いたり困惑したりすることに罪悪感などはなく、愉快だという気持ちしかないのだろう。 パブロフの犬、だなんて言葉があるくらいだから、目の前の人間が犬のように自分の行動に従う様はさぞかし彼を満足させるに違いない。そして彼が興味を持っている人間は数少ないのだから、その少数が餌食になることは想像に難くなかった。 わかりやすく、御し易い。そして何よりレッカのお気に入りであるという条件を全て満たすのは彼のバディであるカイだった。何も全てのおいて可愛らしい彼を振り回し、管理まがいのことをしたいわけじゃない。毒は一滴だけ垂らすから望み通りに回るのだと、聡明なレッカはわかっている。 2334 85_yako_pDONEクロファン(タケ漣)です。ファングがスラム育ちで文字が読めないという捏造があります。(2024/8/16)フロム、ダーリン ファングには週に一度、手紙が届く。 ハートのシールが貼られたそれは俗に言うラブレターで、差出人はクローだ。便箋にはクローの気持ちが綴られているのだが、封筒が開封されることはない。 「なんだその手紙は」 「知ってて聞くな。クローからのラブレターだよ」 「読んでやればいいのに」 セブンの口調は揶揄というよりは苦言を呈するものだった。その苦笑いの意味をファングはわかっている。 「わかってんだろ。オレは読み書きなんざできねぇんだよ」 彼が育ったスラム街では文字の読み書き以上に大切なことなどいくらでもあったから、読み書きができないこと自体はファングにとってなんの負目でも問題でもない。 そんなファングの事情を理解した上でラブレターを渡してくる少年のことをファングは好ましく思っている。手紙を受け取っても理解することのできない男のために、人を殺すための指先で愛を綴る。その行為はファングにとって、どうしようもなく愚かで愛おしいものだった。 1606 85_yako_pDONEカイレ(タケ漣)です。レッカの安心毛布の話。嘔吐あり。(2024/8/16)鉄屑まみれのシャングリラ 部屋は鉄屑とオイルの匂いに満ちていた。 その部屋の主はきらきらとした銀の髪を闇に沈めて深々と眠っていた。猫のように、あるいは胎児のように体を丸め、はちみつ色の双眸を目蓋の下に隠している。その周囲には鉄屑や解体されたガジェット、そして工具が散乱している。子供が玩具箱をひっくり返して、その全てを自分の手の届く範囲に散らかしてそのまま眠ってしまったようだった。 部屋の主人はレッカという、アンドロイドに育てられた人間だった。彼の世界には埃とオイルと鉄屑が満ちていた。もっとも人生の大半はこの組織に所属してからのものだから単純な時間にしたらその割合は多くないが、幼少期の記憶というのは在り方を左右するほど大きく離れ難い。だから彼にとって、安眠を呼び込むのはいつだって冷たく鋭利な金属とべたべたとした油の匂いだった。 2303 85_yako_pDONE夏の夜とタケルと漣と死体です。タケ漣です。雰囲気です。(2024/8/12)サマー・ナイト・ダンス 深夜、だったと思う。時計を見る前に電話に出たから正確な時間はわからないが、頭がぼんやりとして仕方がなかった。 「ぁい……」 「チビ」 その声に飛び起きてスマホを落としてしまった。急いで拾い上げた画面にはアイツの名前があって、脳が一気に覚醒する。アイツが電話してくるだなんてよっぽどの……いや、初めてのことだった。しかもこんな夜中に、だ。 何があったのかと身構えてしまうのは当然で、心臓がバクバクいっている。これでたんなる気まぐれだったら文句のひとつやふたつ言う権利はあるだろう。 俺はコイツの言葉を待った。コイツがなかなか喋らないから、ずいぶん長いこと黙ってたと思う。 「……おい、用がないなら」 「死んでる」 4644 85_yako_pDONE鋭百ワンスアウィーク第91回『冷たい』信愛度があがったゆえにかわいいワガママを言う百々人くんです。(2024/8/4)キャンディハウスで待ちぼうけ「えーしんくんは冷たいって言われたことある?」 百々人の問いは唐突だった。事務所の、小さな会議室。秀とプロデューサーはまだ来ない。 「……ないな。意外か?」 お互いにしたいことをしている空間でいきなり投げられた問いだが、不愉快ではなかったし邪険にするものでもない。ただ事実だけを伝えればよかったのに、なぜか余計な言葉をつけて返してしまう。百々人が、少しだけにこりとした。 「全然。……あのね、僕はあるよ」 「百々人が?」 「意外なことにね」 カチ、と一度だけ時計の針が動く音が聞こえた。ずっと鳴っていた音が気になったのはその一瞬だけで、あとはここに百々人がいるだけだ。こんなに人当たりが良くて温和な人間がそんなことを言われるとは信じられないが、俺は百々人の全てを知っているわけではない。不理解を理解している。ただ、うまく納得ができない。 1363 85_yako_pDONEタイミングが悪かったタケ漣のギャグです。このあと両思いになる。100本チャレンジその56(2024/6/26)本当に関係ない 三日後のクリスマス、俺はアイツに告白する。 好きだと気がついたのはいつからだろう。いきなり現れて俺をチビと呼び追い回し、アイドルになってからも当たり前にそばにいて、それが日常になって。 多分明確な境界などはなく、陽が自然と高く昇るようにいつの間にか好きになっていったんだと思う。気がついてしまったらどうしようもなかった。隠し通すことも考えたが、自分自身の気持ちに区切りをつけないとうまく呼吸ができないんだ。 クリスマスに告白するのは良くないだろうか。もしかしたらせっかくのクリスマスに嫌な気持ちにさせるかもしれない……いや、断られてもアイツの記憶に残れるという薄暗い打算があったのかも。単純にきっかけが欲しかっただけかもしれないし、俺が意外とロマンチストだって可能性もある。 640 85_yako_pDONEデキてるタケ漣とタケ漣を理解してる道流の宅飲みです。初恋トークします。捏造です。(2024/6/26)初恋トークで盛り上がろうぜ タケルが酒を飲めるようになって数ヶ月が経った。タケルと漣と自分の三人で酒が飲める日を待ち侘びていたが、三年は経過してみればあっという間だったように思う。 タケルはいろんな種類の酒が飲めるから居酒屋で飲むのが嫌いではなかったが、漣は明らかに宅飲みを好んでいたから、三人で飲むときは自分の家が多い。家に酒の種類は多くないが、つまみは自分で言うのもなんだがうまいと思う。今日も自分がつまみを作り、タケルと漣が持ってきた酒で宅飲みをした。 二人は愛し合って付き合っているのだから自分抜きで飲んでもいいと思うが、こうして来てくれるのは素直に嬉しい。こうやって飲んで、いろいろなことを話して、二人が同じ家に帰るのを見送る。たまに二人を家に泊める。昔と変わらない──いや、それ以上に深くなった関係は変わらずに心地よかった。 1662 85_yako_pDONEタケルが変な動物園に迷い込む話です。Pが喋ります。タケルから漣への感情があるけどカプじゃないです。いつものSF(少し不思議)です。(2024/6/17)人間みたいね 動物園には馴染みがない。 だからこうして動物園の入口にいるだけでもなんだか不思議な気分になる。月面着陸ってほどじゃないけど、俺ってこんなところにいるんだな、みたいな。 存在を知っていて、イメージは掴んでいて、現実感はない。記憶にないだけかもしれないが、行ったことがないんだから仕方がない。正直、自分が動物園に行くって発想が全くなかったんだから、どうしようもない。 だから知り合いが動物園にいるのを見て、たったそれだけの当たり前の光景に驚いてしまった。夕方のバラエティに出演したHigh×Jokerはいろんな動物を見て、その動物にちなんだクイズに答えていく。ずっと楽しそうにしていた隼人さんは檻の中のライオンを見たときだけ、「檻がなかったらすごく怖いんだろうな」って言っていた。「かわいい」とも、「かわいそう」とも言わなかった。 8324 85_yako_pDONE鋭心先輩とケーキの話です。SF(少し不思議)です。クラファがめちゃくちゃ仲良し。なんかもう鋭心先輩好きすぎて何書いても胡乱なんですけど与太話だと思って読んでください。(2024/5/23)祝福 味覚がなくなった。ポップコーンの味がしない。 大事件といえば大事件だが、シアタールームのスクリーンにはずっと観たかった映画が流れ始めてしまっている。口の中でモサモサとした食感だけを主張しているポップコーンのことはしばらく忘れて映画を観て、この異常事態については後で考えようだなんて悠長なことを思っていた。 観終わった頃にはポップコーンのことは頭の片隅にポツンとある程度で、カラカラの喉を潤すために飲み干したコーラが甘いことに安心してその日は眠りについた。 そこで、変な夢を見た。 どこまでも広くどこまでも白い空間で、向こう側に手が届かないほど細長いテーブルに腰掛けている。クロスは潔癖なまでに白く、生活を否定しているようだ。 13056 85_yako_pDONE牙崎漣と厄介モブです。人が死んでいる可能性がありますが、死んでいないかもしれません。100本チャレンジその55(2024/5/17)起因 ある日のことだ。天道輝には人の頭上に数字が見えるようになった。 ほとんどの人間に貼り付いた数字はゼロだが、ごく稀に数字の進んだ人間がいる。何故そのような違いが出るのかはわからなかったが、そのうちに輝はあることに気がついた。 ニュースで見かけた殺人犯の数字は、決まってゼロ以外の数なのだ。 もしやこの数字は殺した人間の数なのではないか。 と、ふと考えたがそんなはずはないと自身で結論付ける。彼にはそれは間違いだと言える根拠があった。 なぜなら、牙崎漣の頭上にある数字が『3』だからだ。 漣は態度こそ悪いが根は善良であると言い切れる。そんな彼に『3』という数字がついている以上、この数が殺人の回数であるわけがない。 843 85_yako_pPASTダニレナ(タケ漣派生)のギャグエロです。経験のないレナートがえっちなお姉さんを目指す話。(ダニーはそこそこ経験があります)フォロワーが書いた嘘表紙の中身を書きました。だいぶ昔に書いた話です。全体的にノリで読んでください。 15154 85_yako_pPAST四季とタケルと漣が旅行する話です。かなり前の既刊です。SF(少し不思議)です。牙崎くんは冬眠する一 失敗した。重くなる体を引き摺りながら思う。想定外だった。まだ、猶予はあったはずなのに。 まるで逃げだすみたいだ。屈辱にも近い感情が冷え切った胃の底を焦がしていく。だが、これが逃走だとしても足を止めるわけにはいかない。逃げ込める場所の心当たりは苛立つほどに少なくて、そのなかの一つである寮へと体を引き摺っていく。 アイドルになるまでは、どこか誰にも見つからない冷たいところに身を隠せばよかったのに。大勢に見られるのは困る。だけど、今は誰にも見つからないところには行けない。 ようやく寮に辿り着けば灯りはとうに落ちていて、誰もいないラウンジはひんやりとしていた。時間が時間だ。当然だ。体温が奪われていく感覚は少しだけマシになったが、このままではきっと眠ってしまう。 35426 85_yako_pPAST昔出したタケ漣同人誌です。かなり昔のものです。半分猫の連です。イチャイチャしてます。解釈とか無視して猫の連を愛でたい気持ちで書いた素直な話です。Love Me Moreこの本の漣はネコチャンなので甘えたです。 普段の解釈を無視してただ猫になった漣を愛でたい気持ちだけで書きました。 全体的にイチャイチャしてます。 --------------- 1 オレ様は猫である。名前は牙崎漣。 厳密には人間なんだが、全部が全部人間かと言われるとそれは違う。まぁ猫と呼ぶには人間すぎるんだけど。 そもそもオレ様は人間だと猫だのって枠には収まらないからどっちだろうが関係ない。最強大天才は最強大天才だ。半分だけ猫になれるってだけだ。 一応、これは秘密ってことになってる。最強大天才に隠し事なんてのはいらないが、親父が「このことは心から信頼できる人間以外には言うんじゃない」とか言うもんだから、まぁそのくらいなら聞いてやってもいいかと思ってるだけだ。別に言いたい相手もいないし、言いたいとも思わない。秘密ってか、『言ってないこと』とか『言う必要のないこと』ってのが正しいだろう。 39969 85_yako_pDOODLE双子のSFです。100本チャレンジその54(2014/4/22)双子に関するショートショート 朝起きたら三つ子になっていた。一人増えただけって言っちゃえばそれまでなんだけど、18年間双子をやってきた身としては非常に困る。 増えた一人は落ち着いているけれど非常に居心地が悪そうだ。とりあえずは俺たちの家にいてもらっているけれど、食器も机もベッドも二つしかない。ならばせめて名前くらいはと『介』で終わる名前をいくつか考えてみたけれど、彼は『まぁ、一過性のものだから』と言い受け取ろうとしない。 彼について聞けば、双子の片割れを失ってからというもの……というよりは彼は失われた側、つまりは死者らしく、ふいに姿形が変わり双子のもとに現れてしまうようだ。 「悪霊みたいなものなんだ。紛れ込んで双子の片っ方に成り代わっちゃう、みたいな」 524 85_yako_pDOODLEドーナツを巡るショートショートです。100本チャレンジその53(2024/4/21)ドーナツを巡るショートショート 映画を見たが内容をさっぱり覚えていない。オレの120分と学割パワーの1000円がムダになったのを嘆きつつ、映画の前に買っておいたドーナツを食べるために事務所に寄った。 「おはようございまーす。お、鋭心じゃん」 「若里か。仕事の用事か?」 「いや、映画見た帰りに寄っただけ」 鋭心も食べるか? とドーナツの箱を開けたら一つだけ妙なドーナツがある。なんだかファンタジーな光景が穴の部分にハマっていて、それはゆっくりと変化していた。 「なんだこれ」 「……っ! 若里! それをしまってくれ!」 鋭心が悲鳴みたいな声を出すからオレはビックリしつつドーナツを箱にしまう。なんだったんだと言う前に鋭心が言った。 「……あれは今公開されている映画のシーンだ。CMで見た」 583 85_yako_pDOODLE華村翔真さんのショートショートです。血糊。100本チャレンジその52(2024/4/19)華村翔真のショートショート キリオちゃんには「ちょうちょさん」だなんて呼ばれてるけど、こんなに蝶々に縁があるとは思わなんだ。アタシが蝶になるわけじゃないが、触れたものが蝶々になっちまう。 まぁ服が蝶々になって飛んでかなかったのは救いだけど、血糊が端から蝶々になっちまうから撮影がロクに進みやしない。 ワガハイがちょうちょさんと呼ぶのが原因でにゃんすか? とボーヤが真剣に悩んじまったからそんなことないよと宥めつつ、とりあえず興奮気味のカメラマンに全然関係ない写真を撮られていたらキリオちゃんが意を決したように呼びかけてきた。 「しょーまクン……」 「……あら、案外照れちまうねぇ」 なんだか照れくさくてもどかしいったらありゃしない。それに、この理論でいったら血糊が全部アタシになりやしないかい? 九郎ちゃんも一緒に三人で笑いあっていたらスタッフが謝りに来た。どうやら問題は血糊の方にあったらしく、新しい血糊に変えたら蝶々現象はぴたりと止んだ。ボーヤ、目に見えてホッとしてたよ。 524 85_yako_pDOODLEAltessimoのショートショートです。夢の話。100本チャレンジその51(2024/4/19)都築さんと麗さんのショートショート麗さんが驚くほど小さくなっていたからうっかり食べてしまったんだ。悪いことをしたなぁ、と言うよりはもう会えなくなってしまうことを悲しんだけれど、麗さんを食べるとこんな音がするのかと、嬉しいような、恐ろしいような、なんだか不思議な気分になった。 っていう夢を見たんだよ、と麗さんに伝えたら麗さんは神妙な顔をしながら少しだけ笑う。 「それはおかしいですね」 「そうだね、おかしな夢を見てしまったよ」 「いえ、そうではなくて」 都築さんらしい、と麗さんは言った。 「せっかく私を食べたのに、覚えているのが音だけだなんて」 言われてみれば味を覚えていないなぁ。でも、せっかくってどういう意味だろう。 でもなんだか麗さんは楽しそうだし、麗さんが楽しいならそれでいいかな。 330 85_yako_pDONE数年後同棲鋭百。三題噺『小説・クラフト・冷蔵庫』 100本チャレンジその50(2024/4/4)クラフトコーラの香る夜 クラフトコーラを作ってみたい。 熱心にねだったのは僕だけど、初めにクラフトコーラに興味を持ったのはえーしんくんだ。 きっかけはえーしんくんが読んでいた小説にクラフトコーラが出てきたからで、僕はえーしんくんが映画がきっかけじゃなくて小説から興味を持つこともあるんだなぁってなんだか感心したことを覚えてる。ちなみにえーしんくんが映画をきっかけにいろんなものが気になってしまうことはたくさんあって、それはきっとしゅーくんが言っていた『聖地巡礼』みたいなものだろう。 僕たちは通販でクラフトコーラのキットを買った。スパイスを追加してもおいしいらしいから、少しオシャレな店に買い物に行って唯一知っているスパイスであるシナモンを買い足した。一緒にずっしりと重たい砂糖を買って、これを半分近くも使うのかと驚いたりしたっけ。 1231 85_yako_pDONEタケルと秀が話す話。三題噺(郵便、歌、カレンダー)100本チャレンジその49(2024/3/31)落とし物、拾ってあげましょ「そういえば秀さんは前に配達員の仕事をしてたよな」 「そうですね。だから届けるってコンセプトの仕事なら経験あります」 タケルと秀はプロデューサーから渡された書類を見ながら他愛のない話をしていた。THE虎牙道とC.FIRSTは次の仕事で郵便局をPRをするので、他のメンバーよりも早めについた二人は書類を先に受け取って目を通していたところだった。 「えっと、ここに土日があるから……この日に郵便ポストに入れれば、この日には届くな」 秀の指がカレンダーをなぞる。タケルが一言「遠いな」と呟いた。 「手紙って思ったよりゆっくり届くんだな」 「そうですね。今はわざわざ手紙を書かなくてもLINKがありますから、LINKと比べちゃうとなおさら」 1133 85_yako_pDONEできてるタケ漣。COD連動ストーリー前の話です。タケルが漣の気持ちをひとつも知らないのが好きです。(2024/3/25)食物連想ゲーム 人は誰かを忘れる時、まずはその声を忘れる。 こんな嘘か本当かもわからない話を聞いたのはドラマの撮影現場だった。円城寺さんが出演したドラマを見学しに行った時に、なんとなく見覚えのある男優がそう言っていた。 もちろんこんなのはセリフでしかないし本当かどうかもわからない。それでもその言葉は脳にこびりついて鈍色に揺れている。なんだか試されているみたいで気分が悪かった。 妹と弟の声はまだ覚えている。大丈夫、と何度目になるかもわからない納得を自分自身に与えながらぼんやりとテレビを見ている。ひとりだったらきっと「大丈夫、」って口に出していたかもしれないけど、いまは隣にコイツが転がっているから意識して口を閉じていた。 1859 85_yako_pDONE神話生物の花園くんとクラスメイトです。クラスメイト目線。100本チャレンジその48(2024/3/17)神話生物花園くん。神話生物花園くん その1。 花園は神話生物だ。神話生物って俺はよくわかってなんだけど、なんか触手やらを出し入れできるらしい。 らしいっていうのは花園が自主的にそういうことをしないから予想でしかないということだ。神話生物なのは隠してないのに、そういう仕草は表に出さない。人付き合いが上手いっていうのはこういうことだろうか。 じゃあなんで自主的にしない人外行動を俺やクラスメイトが知っているかといえば、居眠りしてる花園が無意識に出しているからだ。触手を。 俺の席は花園の真後ろなんだけど、しょっちゅう居眠りしている花園の首元から、目がびっしりとついた触手と目があったりする。でも花園はプリントとかは手で持つし、高いところにあるものを取る時には脚立を使うし床に落ちたものは手で拾う。横着をしない神話生物だった。 1427 85_yako_pDONE北村のSF(少し不思議)です。ノリで読んでください。(2024/3/17)雨なのに喫茶店とか入れない 今日はなんだか良くない日だ。厄日とまではいかないけど、きっと寝る前にため息を吐いてしまうような、そういう日。具体的に言うと今日はどんよりと曇っていたし、何度も人にぶつかる日だった。ぶつかるっていうのは物理的に。 そりゃ人にぶつかるってことは僕だって相手を避けられなかったってことなんだけど、僕はぶつかった相手には頭を少し下げる程度のことはする。それなのにぶつかった相手は例外なく僕を無視して歩いていくから今日はあんまり良くない日だ。アイドルとして顔が売れているはずだなんて驕るつもりはないが、あんな透明人間を相手にするように無視することもないだろうに。 「おはようございますー。あれー? 雨彦さんしかいないんですかー?」 1871 85_yako_pDONEミメイさんのこちら(https://twitter.com/mimei_m_m/status/1751960314382569666?t=OBws6ozuoK7iAiCCW_dRog&s=19)にオチを進呈した責任をとりました(?)タイトルはミメイさんに決めてもらいました。わちゃわちゃクラファです。映画に詳しい鋭心先輩。(2024/1/29)君は『殺しの番号』を知ってるか 眉見鋭心は困っていた。今にきっとガッカリするであろう後輩が如何にダメージを受けないで済むか、その方法を模索していた。 事の発端はC.FIRSTに舞い込んできた仕事にあった。SFを元にした海外産RPGゲームの日本語版発売を記念して、その実況の仕事をすることになったのだ。 秀の提案で、最初の操作は鋭心がすることになった。ゲームが得意なのは秀だが、バラエティ的に操作が覚束無いであろう鋭心のほうが撮れ高が高いと踏んだのだ。 予想に反して鋭心のプレイはスムーズで、彼らは所々でグラフィックの美しさや内容に感心しながらゲームを進めていく。そろそろ操作を百々人に代わろうか、というタイミングで鋭心がぽつりと呟いた。 1617 85_yako_pDONEC.FIRSTのSF(少し不思議)です。三題噺『黄色、ブラシ、道路標識』100本チャレンジその47(2024/1/22)飛び出し注意。 黄色い看板に鹿のシルエットが描かれていた。鹿に注意ってことかなぁ、って呟いたら、ぴぃちゃんがそういう道路標識だと教えてくれる。それが一昨日の、仕事帰りの話。 で、今持っているのは魔法のブラシだ。事務所で暇を持て余している僕はそれをぼやっと見つめる。ブラシには黄色のペンキがべったりとついているけれど、ぽたぽたと垂れる気配はない。 このブラシは、曰く、何か一つの標識を描くことができるらしい。そして、その標識は不思議な力で描かれたことを強制的に実現させると、さっき道端で筆を押し付けてきた金色の髪をした少年が言っていた。 彼は「赤色だったら通行止めとか、強力なものが描けたんだけど……ごめんね」と言っていた。確かに赤色のペンキの方が使い勝手が良さそうだ。一人きりに、一人ぼっちになってしまいたい時、とか。 1000 85_yako_pDONE三題噺。お題「毒、美術室、フォロー」モブ女子高生と百々人的なやつです。恋愛感情とかはないです。(2023/1/15)パープルムカデ 美術室には毒がある。 これは昔から伝わる七不思議とかじゃなくて、ここ数年で発生した物騒な噂話だ。毒っていうのは喩えてもなんでもなくて、口にしたら死んでしまう毒が美術室にあるらしい。 誰かを殺したいという願望から生まれたのか、死んでしまいたいという願望から生まれたのかはわからないが、いま私がふらりと美術室に忍び込んで毒を探している理由は後者だ。私はなんとなく、意味もなく、漠然と死にたかった。 もっとも死に対しての感情が強いわけではない。痛いのも辛いのも嫌だし、自殺のための計画を練る気もなければ遺書すら書くのもめんどくさくて、ただ扉が開いていて誰もいない美術室を見て、あの噂通りに毒があったら死んでみようか、くらいの気持ちだ。そこになければないですね、くらいの感じ。 1707 85_yako_pDONE三題噺お題。『猫、御守り、また明日』タケルと漣とチャ王の話です。(2024/1/14)観測、約束、ねがいごと。 チャンプのお気に入りの寝床は路地裏のドラム缶の上にある。円城寺さんがくれた座布団の上、チャンプがさっきまで寝ていた場所に見覚えのある御守りがあった。 これは俺がアイツにやった御守りだ。御守りなんてどこにでもあるものだけど、わかる。そもそもアイツが置いたんじゃなきゃこんなところに御守りがあるわけがない。 この前の仕事で買ってきた汚れが目立ちそうな白いお守りにはチャンプの毛がくっついていた。御守りをあげたのは円城寺さんとプロデューサーとアイツの3人だけだ。隼人さん達にも買おうと思ったけれど、そうなると四季さんにあげないのはなんだか違うし、四季さんにあげたならHigh×Jokerの全員に必要な気がしてくるし、High×Jokerのみんなに買うなら同年代の人みんなにもあげたい。俺の大切な人は増えたけれど、だからこそどこかで優劣にも似た線引きは必要で、俺には持ちきれないほどの御守りを買う気はなかった。それなのにアイツの分の御守りは買ってるのが自分のことなのによくわからない。あんな、御守りなんていらなそうなやつなのに。 2567 85_yako_pDONE百々人と牙崎の話です。百々人視点。『ハンカチ』『地球儀』『ランドセル』という3つのお題をもらって書きました。(2024/1/5)ラムネに溺れるアンノウン 今日は高校生の子がたくさん集まって勉強会をしていたから賑やかだった。最初はみんながそれぞれ宿題や問題集を解いていたんだけど、気がついたら自然と教える人と教えられる人に分かれて和気藹々と勉強をしてる。こういう雰囲気が僕はすごく好きだった。 しゅーくんも、えーしんくんも、僕も、教える側だ。C.FIRSTはすごいね、って。前だったら素直に受け取れなかった言葉も今は嬉しい。そりゃ黒野くんがそばに居ると何も思わないわけじゃない。それでも感情を全部トータルしたら僕は楽しく笑っていた。 えーしんくんは伊瀬谷くんにスパルタでいくと宣言してたんだけど、貴重な三年生だということで蒼井さんたちに引っ張られていった。黒野くんも高校二年生の範囲は完璧じゃないから、しゅーくんと一緒に伊瀬谷くんと紅井くんを見てた。あとはわからなくなった人が挙手したら誰かが見てあげる、みたいな。 10824 85_yako_pDONEつきあってる想雨がじゃれてます。『タイムマシン・コーヒー・寒さ』というお題で書きました。100本チャレンジその46(2023/12/31)コタツで寝るな コーヒーが冷めてしまった。 僕としてはそれくらい長い時間を雨彦さんと一緒にゆっくり過ごせたことが嬉しいけれど、真冬の夜がもたらす寒さは僕らの体温を容赦なく奪う。いや、部屋もコタツもあったかいからポカポカしているんだけど、きっとこの冷たくなったコーヒーを飲んだらからだの芯が冷えてしまうだろう。 コーヒーを温めましょうかー? と言いたかったがあいにく電子レンジが故障している。それを雨彦さんに伝えて謝れば、雨彦さんは「お前さんは悪く無いさ」と言って、少し悩む素振りを見せたあとにポケットから銀色の懐中時計を取り出した。 「それはー?」 「このあいだ手に入れたんだ」 「きれいだねー。でも、これがどうかしたんですかー?」 1626 85_yako_pDONEゲームの世界に迷い込んだ秀くんがハッピーエンドを目指すお話です。流血描写、殺人描写あり。唐突に始まって終わりますしバッドエンドです。(2023/2/19)エンディング:6 生ぬるい感覚が引き戻す現実感を冷めた脳が消し去っていく。手から滴り落ちる真っ赤なペンキは妙に血生臭くて、ぽたぽたと落ちて床に水玉みたいな模様を作る。鋭心先輩の絶え絶えと言った呼吸に合わせるように、彼から流れる血液がそれを俺の足ごと飲み込もうと灯火のように血溜まりを広げていった。 鋭心先輩はまだ現状が理解できていないように呆然と俺の名前を呟いているが、それ自体はもう見たことのあるものだから特に感慨はない。この場所、このタイミングで、俺は鋭心先輩を殺したことがある。鋭心先輩の言葉よりも俺が気にしていたのは今までとは違う行動を──百々人先輩に気が付かれずに鋭心先輩を殺したときに何が起きるか、それだけだ。 4184 85_yako_pDONE二年後のタケルと漣が映画を観に行く話です。(2023/12/14)憧憬 半月の夜だった。夜道で一度だけ空を見たから知っている。普段通りの日常に半月がくっついて、今から俺はコイツとレイトショーを観に行く。そういう、少しだけ特別な夜だった。日付がもうじきに変わるころだった。 ビルの正面入り口は閉まってるから裏口のようなところを通ってエレベーターに乗る。現在地を示す階数を増やしていくエレベーターの中で、もしも途中で降りたらどうなるのかって考えた。そりゃ真っ暗なフロアが広がってるだけなんだろうけど、非日常へと繋がっていそうでなんだか少しだけ惹かれる。そんなことを考えていたらあっという間に映画館がある階までついた。 夜道では誰にも会わなかったのに映画館には人がいる。他人っていうのはどこから来るんだろう。顔も名前も知らない人が、期待がもたらす静かな活気の中にいた。 4368 85_yako_pDONE事後のタケ漣です。100本チャレンジその45(2023/12/9)水の音、手繰る心音 だだだだだ、っていう水の音を聞いている。 水音をなにかに喩えようとしてすぐにやめた。俺は言葉も物事も知らなければ洒落た言い回しも知らないし、これは何に喩えるでもない、たんなる水の音だから。 横に座ったコイツは俺の肩に頭を預けて目を閉じるでもなくぼんやりとしている。俺たちの接触っていうのはさっきまで散々お互いを引っ掻きまわしていた性的なやりとり以外には存在しないと思っていたのに、コイツは当たり前に俺の体温を奪って、俺に体温を移して、熱を行ったり来たりさせていた。 ずーっと水の音がしてる。風呂に湯を張る音がしてる。べたべたになったコイツが珍しく「シャワーはヤダ」って言ったから、何に喩えるでもない水の音を聞いている。 1354 85_yako_pDONEお題『電球、流れ星、隣』で書きました。SF(少し不思議)な百々人くんです。仲良くなりたいという感情はある三人。(2023/11/10)ガラスの欠片が落ちる夜「僕が電球を壊すと夜に流れ星がひとつ降る」 唐突に百々人が言った。俺と百々人と秀は事務所が契約している貸し倉庫で今度撮影するオフショットのネタになりそうなものを探している最中だった。 「試してみる?」 百々人は『こんなものを見つけたので思い出しました』とでも言うように、倉庫に眠っていたであろう金属製のバットを片手に首を傾げてみせる。 「流れ星。願いが叶うかもよ」 甘くざらついた、いつも通りの百々人の声だ。俺はその言葉に、自分の願いなど叶える必要はないのだと告げるかを少しだけ迷う。きっと言うべきではない。そう結論づけて、ではなんと返そうかと考える俺を横目に秀が口を開く。 「倉庫の電球を壊したら怒られますよ」 1837 85_yako_pDONE鋭百。フォロワーの呟き【https://twitter.com/mimei_m_m/status/1704582817630601459?t=L28ZT_VSmiY5zkdFNtJ5hg&s=19】に触発されて書きました。(2023/11/09)砂漠の砂はダイヤにならない『特技・人に愛されること』 特技、と問われて一瞬だけ手が止まった。大体のことは問題なくこなせるから何を書いても嘘にはならないが、それでは『アイドル、眉見鋭心』のプロフィールには相応しくないだろう。きっと華やかなほうがいい。珍しいもののほうが会話が広がる。少し考えて、その空欄に『水上オートバイの操縦』と書いた。嘘を吐くことがなくてよかった。水上オートバイは正しく、うまくこなせることだったから。 残りの空欄も埋めて、なんともまぁ話題に事欠かない特技や趣味だと思う。俺は嘘を美徳とは思わないが、芸能人の両親を持つ人間として夢を見せることの必要さも知っている。嘘について俺が思うことは『必要ならば』というところだろうか。進んで吐きたいものではないが、そこに俺の主義主張や好みが入ることはない。 2920 85_yako_pDONE百々人くんと鋭心先輩。マユミくんと仲良くなりたい百々人くんです。カプではないと思うけど、そう見えたらごめん。(2023/11/7)ジョーカーはいらない マユミくんがたったひとりで事務所のテーブルにトランプを並べて難しい顔をしていた。どう見ても新品のカードは作りが安っぽくて、丁寧に置かれた箱には100円ショップのピンク色をしたシールがべったりと貼られている。 卓上のトランプを動かさずに手元のトランプとスマホを交互に見るマユミくん。占いでもしてるのかなって思って、そのうなじに声をかけた。 「おはよ。マユミくん、何してるの?」 「え、ああ。百々人か。おはよう」 はぐらかすつもりなのか、そんな気はないのか。返ってきたのは答えではなく挨拶ひとつだ。 聞かれたくないことならさっさとトランプを片付けて明日のレッスンの話でもしたらいい。それなのに動く気配のないマユミくんに、あと一度と決めて問いかける。 2962 85_yako_pDONE秀百。なんか去年くらいに書いたやつが出てきたので清書しました。解釈が古いけどせっかくなのでアップします。(2023/10/26)逃避行、或いはランデブー「ずさんだなぁ」 アマミネくんの言葉は独り言だとすぐにわかった。恋人が出演するドラマを恋人の横で見ておきながら、独り言とはいい度胸じゃないか。 「ヘタクソ。ですよね?」 今度は僕の瞳を見て心臓が止まりそうになる言葉を吐く。うっすらとした笑いを見ながら、目が合うってことは僕もアマミネくんを見ていたんだな、って他人事みたいに考えた。 普段だったらナイフみたいに僕を傷つけるだろう言葉も意味を理解していたらさほど怖くはない。僕はなにも返さず、悠長にテレビに視線を移す。箱の中には捨てられた子犬と呼ぶにはあまりにも生々しい、みすぼらしい女の子と僕がいた。 女の子と僕が手を繋いで夜の街を彷徨っている。二人は冷え切って、お腹を空かせて、今にも泣き出しそうな顔をして歩く。あの時は寒かったなぁ。そんなことを考えている僕の生ぬるい手にアマミネくんの手が重なった。 1605 85_yako_pDONE数年後同棲的なタケ漣が食べ歩きして過去を振り返る話です。秋はカツオもうまい。 円城寺さんの家で秋刀魚を食わせてもらった。 俺もアイツも自炊はしないから旬のものってあんまり親しみがないけど、円城寺さんは季節に応じたものを食べるし俺たちにも振る舞ってくれる。旬のものは栄養もあっておいしいって言ってたし、食べると寿命が伸びるとも言っていた。 俺たちは秋刀魚をごちそうになって家に帰る。数年前だったらバラバラだった帰り道も、行き先が一緒になった今では並んで歩く道になった。あの家をアイツはただ寝床にしているだけだと言うが、俺はあそこが二人の家だと思っていて、簡単に言えば俺はアイツと同棲しているつもりだった。 あやふやなのは好きじゃないから俺はちゃんと好きって言ったんだ。好きって言ったし、俺と暮らそうって言った。そうしたらアイツがつまらなそうに「好きにしろ」って言ったから、俺は好きにしてるし当たり前みたいにアイツも勝手にしてる。停滞というより、ぬるま湯というより、なんだか毛布にくるまってるみたいな安心感があって──そりゃもう少し進みたいけれど、まだいいかなぁなんて思ってる。 14580 85_yako_pDONE2023年タケ漣WEBオンリーのネップリ企画(テーマは食欲の秋!)で書いた、タケ漣のSF(少し不思議)です。人を食ったような男の話ですが、グロでもカニバでもないです。犬も食わない。 秋といえば食欲の秋だ。でも、食欲の秋だからってなんでもかんでも食べていいってわけじゃないだろう。まして、人を食べるだなんて。 人を食ったような性格、という言葉はアイツにピッタリだけど、まさか本当に人を食うとは思わないじゃないか。しかも、俺が食われるとは夢にも思っていなかった。 人生で、何かに食われることがあるなんて考えたこともなかった。アイツは意味がわかんないやつだけど、ここまで意味がわからないやつだとは。 俺が食われたとは言っても、それは捕食みたいな猟奇的なことではなくて……なんていか、隠すって感じなのかなってぼんやり思う。食われた自覚はあるけれど、俺は無傷で意識もはっきりある。 なんというか、和風のホラーゲームで見たような、神隠しと似ている感じがする。あれは帰り道のことだったか。アイツが大きく口を開けた瞬間、一瞬だけ意識が暗転して気がついたら俺は知らない場所にいた。よくわかんないけど、ぱくりと丸呑みにされたって──食われたって感覚がある。 2439 85_yako_pDONEタケ漣のラブコメです。傲慢なタケルくん。(2023/9/28)落ちた アイツが池に落ちた。冗談みたいな落ち方だった。 池の周り、っていうランニングコースを選んだのは俺だけど、コイツが勝手に落ちただけで──まぁ俺に責任はないが人の心はあるので、助けなければと池を覗き込む。 すると突然池が光り出した。結構眩しかったけど今は早朝というのもあって、それを見ていたのは俺だけだ。 光が収まると、そこには女の人がいた。きれいな人なんだろうけど、なんとなく印象に残らない。そんな顔をしている。 水の中から現れた女は、水の中から現れた女が言いだしそうなことを言う。 「あなたが落としたのは、あなたのことが好きでたまらない牙崎漣ですか? それとも、あなたのことを好きでも嫌いでもない牙崎漣ですか?」 1799 85_yako_pDONE鋭百のラブコメ。ロマンチック片思い百々人くんだけど、このあとすぐカップルになります。100本チャレンジその44(2023/09/18)取扱注意 芸術は爆発だ! 美しいものは須く爆発なんだろう。 ならばこの世でもっとも美しいとされる『愛』とはなんだ? その答えも同じく『爆発』だったものだから、僕は途方に暮れている。 小説家が夢想した果実のように、僕が齧ったリンゴは30分以上放置すると爆弾に変わる。いや、リンゴである必要はないのかもしれない。ようは僕が愛しい人のことを考えながら口にした果実は放置すると爆弾になってしまうのだ。 発見したのは終わりかけた春の夜だった。マユミくんにもらったリンゴを面倒だからとそのまま齧っていたら、マユミくんが電話をくれたんだ。浮かれた僕はリンゴをテーブルに置きっぱなしにしてベランダに移動して、楽しくおしゃべりなんかして。そんなこんなをしていたら、爆発音が突如僕の耳を裂く。びっくりして急いでリビングに向かったら、そこには半壊したテーブルがあったというわけ。 1498 85_yako_pDONE鋭心先輩が本を出す話。仲良しクラファ。100本チャレンジその43(2023/9/18)例えば笑うと幼く見えたり マユミくんが本を出すことになった。なんでも、雑誌で連載していたコラムをまとめて出版するらしい。 そのコラムは僕も読んだことがある。マユミくんの好きな映画を中心として、マユミくんの好きなものが理路整然としたマユミくんらしい言葉で語られるとても好ましいものだった。アマミネくんと一緒に読んで、マユミくんってこういうのが好きなんだね、って話をしたりもしたっけ。 さぞかし素敵なものができるに違いないと他人事として楽しみにしていた僕は、マユミくんのお願いで一瞬にして当事者となってしまった。マユミくんは僕に著者近影を描いてくれるないかと頼んできたのだ。 なんで、僕に? その問いを受けたマユミくんは毅然とした男らしいカッコ良さでずいぶんと可愛らしい答えを返してきた。曰く、 1001 85_yako_pDONE鋭百ワンスアウィーク第52回「後ろ」肉体関係だけがある鋭百です。(2023/9/10)フライデーナイト・プール 喉が渇いていた。ぬくもりはあったがそれは肌の触れている部分が熱を持っているだけにすぎず、わずかな接触すら解いて起こしたからだは当たり前のように冷えていく。せめて下着くらいは身につけるべきだろうかとも思うが、どうせ風呂にはいるだろうと怠惰な部分が囁いてきてよくない。肉体に依存する欲を満たしたあとは、気怠い。 この行為はスポーツのようなものだと情緒のない取り決めに従うようにベッドサイドに用意された水を煽れば少しだけ思考がクリアになった気がした。電気をつければ目の奥がチカチカと痛い。抱き合うと、俺たちは夜の生き物になってしまうんだろう。 情事を終えたばかりで性の匂いが色濃く残る夜を虚しく思うのは間違っているのにからっぽが抜けきらない。続けるたびに不毛になって、かといって終えられる気がしない。愚行とはこのようなことを言うだろうに、共犯者がいるだけでこれほど身動きが取れなくなるとは驚いた。 5247 85_yako_pDONE数年後同棲鋭百。すれ違いながらイチャイチャしてます。(2023/8/31)夜食の作法 夜更かしをしすぎたな、と思い視線を向けた時計の針は24時を越えていた。 最近増えすぎた映画のパンフレットを整理しようと積んでいたものや棚に並べていたものを広げた結果、まんまとふたりして読み耽ってしまったのだ。パンフレットは規則ではなく、読んだものと読んでいないものがそれぞれ山になっている。典型的な、片付けの失敗例だろう。 時計を見つめた目を手元のパンフレットに移し、パンフレットをそっと退ける。そうすると俺の膝にからだを預けてパンフレットを読んでいる百々人の、柔らかい色の髪に埋もれたつむじが見えた。先ほどの俺もきっとこれくらい夢中だったに違いない。百々人は俺の視線に気がつくことなく、ゆっくりとページを捲っている。 2946 85_yako_pDONE想雨と心霊現象です。想楽くんの片思い。(2023/8/10)お呼びでない 人を好きになった。 初恋だなんて言わないけれど『これが最後の恋ならば』だなんて青春じみたことを思ってしまう程度には、僕は雨彦さんに惚れている。 好きになったきっかけなんて覚えてないけど、いまの僕が雨彦さんのどういうところを好んでいるのかはわかっているつもりだ。 どこが好きかと聞かれたら答えるけれど、雨彦さんは何も聞いてくれない。片手の指で足りるほどだけど、何度も告白してるのに。 好きなんですー、と伝えると「ありがとうな」だなんて返してくる、ひどい男。そんな男が珍しく、僕に質問を返してきた。 「北村は、俺のどういうところが好きなんだ?」 自分の気持ちは言わないくせに僕の気持ちの深くまでを求めてくるなんて、本当にひどい男だ。それでも僕はこの恋が進展することを願って、自分の気持ちをどう口にするべきか考える。 1697 85_yako_pDONE無自覚な鋭心先輩とそんな先輩が少し好きになりかけてる百々人くんの鋭百。相合い傘する二人です。(2023/8/9)雨とカラクリ 人の顔色を伺うのは得意なほうだと思う。きっとマユミくんだってそうだ。 ただ、目の前で緋色の髪を揺らしながらレッスンしているこの人と僕のそれは何かが決定的に違っているような気がしてる。なんとなく、本質が違う気がするんだ。 僕が顔色を伺うのは半ば無意識で、それが処世術なのか癖なのかは正直自分でもわからない。マユミくんはどうだろうって考えた時、それは愛にも正しさにも、機械のようなオートマチックな反応にも見える。出会ったばかりの僕にとってマユミくんは期待を飲み込んで自分以外の誰かが望むものを吐き出すカラクリのように思えていたけれど、時間と言葉を交わすうちにわからなくなっていった。 誰かの望む言葉を探してしまう。それがマユミくんと僕の共通点なんだろう。いや、そう思っていたいだけかもしれない。僕はマユミくんと僕に似ているところを見つけると、とても白けてしまうくせにちょっと嬉しい。こんなに正しい人間とやりとりをしているくせに矛盾が生まれていくのはなんだか馬鹿馬鹿しかった。 2178 12345